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【ゴルフイップス解体新書】#1 練習のしすぎは逆効果!? イップスは“技術”の問題ではなかった

忌まわしい「イップス」の原因と対処法について、メンタルコーチの石井亘氏が徹底解説する「ゴルフイップス解体新書」。イップスになるのは「技術が足りないからだ」などとよく言われるが、本当にそうなのだろうか。実はイップスの根源は「脳の誤作動」にあった。

パットで手が動かない、アプローチでミスを連発する、テークバックが上がらない……楽しかったはずのゴルフに、突如として暗雲が立ち込める忌まわしき病「イップス」。

プロや競技アマなど、ゴルフを真剣に突き詰めている人ほどイップスに陥りやすいと言われるが、一般アマチュアでも、大なり小なりイップスは存在するという。

「メンタルトレーニング石井塾」を主宰し、イップスをさまざまな角度から研究する石井亘氏に、イップスの正体から克服への道のりまで、徹底的に話を聞いてみることにした。

  *  *  *

GD 石井先生には、以前漫画「オーイ! とんぼ」にイップスを患うキャラクターを登場させるにあたって、イップスの基礎知識や克服法についてご教示いただいた経緯があります。

石井 私自身も毎回楽しみに読んでいた漫画なので、協力できて光栄でした。

GD 今回、改めて「イップス」という厄介な敵について、深く掘り下げていきたいと思います。

石井 はい。私もイップスに悩むゴルファーのお役に立ちたいと日々考えております。ちなみにイップスのご経験はおありですか?

GD 実は昨年からひどいシャンク病に悩まされていて、もしかしてイップスなのかも……と思い患いました。でもあるとき、これはイップスなどではなく、ただ技術が伴っていないからだ! と思い至り、ラウンドには行かずひたすら練習に打ち込むことに。ところがいっこうにシャンク病は改善せず……。

石井 シャンクはただのミスショットですが、シャンク病は一種のイップスともいえますね。よくイップスは技術が足りないからだとおっしゃる方もいますが、初心者ならともかく、ある程度長くゴルフをやっていて、そこそこのスコアで回れる人の場合は、技術の問題ではありません。だって、練習場では普通に打てるわけでしょう?

GD ……そうですね。

石井 ということは、「ボールを打つ動き」自体はできているわけです。それが、コース上で、何らかの条件が重なったときに、突如として動きに異変が生じる。つまりこれは技術の問題ではなく、「脳の誤作動」なのです。

漫画「オーイ! とんぼ」軽井沢ゴルフレディス編に登場した朝菜ゆうなは、ツアー17勝の実績を持ちながらも、アプローチイップスを患い長らく優勝から遠ざかっているという設定だった(「オーイ! とんぼ」38巻・第346話より)

GD 脳の誤作動?

石井 はい。そもそも練習というのは、ある動きをスムーズかつ調和的に実行できるように脳に学習させることです。しかし学習された動きが、意に反して全く違う動きとして実行されてしまうことがある。脳の誤作動によって本来の動きができなくなってしまう状態こそが、イップスと呼ばれる症状の正体なんです。

GD それは練習によって克服できるものではないのでしょうか?

石井 練習の質や内容次第です。ただ、自分1人で症状をどうにかしようとやみくもに練習するのは、むしろ逆効果。症状を悪化させてしまう可能性すらあります。

GD ええっ!? そうなんですか?

石井 専門的には「過剰学習」と言われますが、あることを“不必要に”やりすぎることで、もともと調和的に働いていた脳に不具合が生じて、できることができなくなったり、おかしな動きをするようになったりするのです。

GD み、耳が痛い……。では、いったいどうすれば?

石井 まずはイップスの原因=脳の誤作動にはどんなパターンがあるかを知ること。イップスの原因には、大きく3つのタイプがあると私は考えています。

GD 教えて下さい!

石井 では次回、3つのタイプについてお話しします。

TOP | >> #2 イップスの原因は3つ!

石井 亘

いしい・わたる。ゴルフ好きのメンタルコーチ。「本来の力を発揮させる!」を信条に、20年にわたり、プロやテスト受験生、アスリート、音楽家、医師、経営者、中高生など1000人近くを指導。「メンタルトレーニング石井塾」主宰