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最近よく聞く「慣性モーメント」ってそもそも何?なぜ重要? 数値が大きい=やさしいとは限らない【明日使えるゴルフ用語】

普段当たり前のように使っているゴルフ用語だが、その成り立ちや意味を問われたときに、正しく返せるだろうか? ここではラウンド中の会話やゴルフ仲間とのやりとりで使える、ゴルフ用語にまつわるうんちくを紹介する。


慣性モーメント【Moment of Inertia】


ゴルフクラブのカタログを見ていると「慣性モーメント」という言葉をよく目にする。慣性モーメントは「Moment of Inertia」の頭文字をとってMOIと表記されることもある。

ゴルファーにとっては馴染み深い言葉だが、カタログやギアの紹介記事で何の説明もなく当たり前のように使われていると、ビギナーにはなんのことやらわからない。

慣性モーメントとは、ごくごく簡単に言うと、物体の「回転のしにくさ」を表す数値。数値が大きければ大きいほど、その物体は回転させるのが難しい、ということになる。

基本的に大きいものほど回転させるのに大きな力が要り、小さいものほど回転させるのは容易だ。ゴルフクラブにおいて「慣性モーメントが大きい」という場合は、ドライバーのヘッドに関して言う場合が多い。

シャフトのことはさておいて、ヘッド単体で考えると、ヘッドは重心を中心に回転する。回転の方向にもいろいろあるが、ゴルフで重要な慣性モーメントは、アドレスした状態で真俯瞰から見たときの回転を指す。

ヘッドの慣性モーメントが高ければ高いほど、ヘッドは重心を中心に回転しにくい。ということは、ボールをとらえる位置が芯からズレても、ヘッドの挙動がブレにくいということ。つまりどこに当たっても真っすぐ飛ぶ=曲がらないヘッド、という理屈が成り立つわけだ。

ただし、ヘッドが回転しにくいということは、一度開いたヘッドが元に戻りづらいということでもある。一般的に、ヘッドはバックスウィングで開く方向に回転し、ダウンスウィングで閉じる方向に回転して、インパクトできれいに真っすぐ(スクエアに)当たると、ボールは真っすぐ飛ぶ。

しかしバックスウィングでフェースが大きく開きすぎるクセのある人は、慣性モーメントの大きなドライバーの場合、ダウンスウィングでヘッドの向きを戻し切ることができず、開いたままインパクトを迎えてしまう。基本的には「やさしい」とされる慣性モーメントの大きなドライバーだが、なぜか右へばかり行く、という人はこれが原因の可能性が高い。

また慣性モーメントが大きい物体は、回すのは難しいが、ひとたび回り始めると、その回転を止めるのが難しくなる。つまり、トップからヘッドを返してくる強さが大きかったり、返すタイミングが早すぎたりすると、ヘッドが左に回転する動きを制御することが難しくなり、左へのミスも出てしまう。曲がらないはずのヘッドが、右へ、左へとかえって大きなミスを招く要因にもなるわけだ。

なので、ヘッドの開閉を大きく使うタイプのスウィングには、慣性モーメントの大きなドライバーは不向きと言える。バックスウィングでフェースを開かず(いわゆるシャットフェース)、フェースの開閉を積極的に使わずに打つタイプは、今どきの大慣性モーメントのヘッドを上手く使いこなすことができるだろう。

慣性モーメントが大きいことが一概に万人にとってやさしいとは限らない。自分のスウィングタイプに合ったクラブを選ぶこと、またはクラブに合わせてスウィングを見直していくことが重要になってくる。