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【岡本綾子 ゴルフの、ほんとう】Vol.793「トラブルでも、グリーンに届かないという選択はしたくないですね」

米国人以外で初めて米女子ツアーの賞金女王となった日本女子ゴルフのレジェンド・岡本綾子が、読者からの質問に対して自身の経験をもとに答えていく。

TEXT/M.Matsumoto

前回のお話はこちら


林から無理をして大叩きする人がいます。私もよく曲がるのでトラブルはよくあって慣れているせいかそこまで焦りません(笑)。トラブルに巻き込まれた時、まずはどう判断すべきでしょうか?(匿名希望・44歳・HC1)


今回は、トラブルの際の心得についてお話しいたしますね。

たとえば、こんなトラブルの場面を想定してみることにしましょう。

左ドッグレッグのとあるパー4。

ティーショットを引っかけて林の中へ打ち込んでしまいました。

第2打地点へ行ってみると、グリーン方向の上空にほんの少しだけ空間があり、ピンまでおよそ170ヤード。

この時にどう考えるか。

隙間を通せばグリーンに乗せることはできなくもないが、まずは目の前の木を避けて低い球で少しでも距離を稼ぎつつ脱出し、第3打で上手く寄せられればパーセーブにつながる可能性を狙う。

いや、ここは上空の空間を通してグリーンを果敢に狙う。

はたまた、真横のフェアウェイに出して、大叩きしないことに徹する。

トラブルに陥った際の選択肢は、おおよそですが3つくらいになると思います。

ピンチからでも逆転のバーディを狙う道か、上手くいけばパーを拾うこともできる賢い対応策か、あるいは今以上の窮地にハマらないで最悪の結果から逃げる堅実な方法か。

選ぶのはゴルファー自身ですが、その本人が自分の持っている技術のレベルをどれだけ正確に把握していて自信を持っているか。


それによってプレーヤーの判断は変わってきます。

ほんとうはギャンブルしてみたいけれど、今、自分の置かれている状況でその選択が正しいと言えるのか。

経験豊富なゴルファーは、そうやって冷静な判断を下すわけです。

低い球で木と木の隙間を狙い距離を稼ぐショットもゴルファーによってはギャンブルだと思うかもしれませんが、そのショットを打つ自信のある本人は、そうは思っていない。

その選択には、当然プレーヤー個々の性格も関与してきます。

ちなみにわたしの場合、成功率が五分五分なら迷うことなくグリーンを狙うかな。

7:3で失敗すると思ったら、木の下か木の左右からフェアウェイのできるだけ先へ打つ。

イチかバチかだったら素直に横に出すだけを選ぶ、そんな感じかしら。

わたしとしては、グリーンに届かないという選択はしたくないという気持ちが強いですね、正直言うと。

経験を積んだ者は無謀な博打は打たないとよく言われますが、それはアマチュアとプロとでは、思考のスケールが違っているからだと思います。

毎週トーナメントに出て勝負をしているプロゴルファーにしてみれば、博打を打たざるを得ない場面に遭遇することは比較的あります。

そうしたギリギリのシーンを何度となく経験してきているからこそ決断に躊躇がないのだと思うのです。

もちろん、自分の技術への信頼度が判断材料になっているわけですが。

目の前にあるボールのライ、打っていく方向とターゲットまでの空間にある障害物や着地してからの地形によるボールの行方の可能性。

それに、意図したショットがどの程度自分で実現できるのかという確率と結果としてミスした際の許容範囲など、プレーヤーの頭の中にはありとあらゆる予測と計算が交じり合います。

トラブルに関係なく常にこの判断と結果の連続がゴルフという競技なのです。

ですから、トラブルに巻き込まれたらどうすべきかは自分が一番わかっていることなので、自分自身で判断して決断しないといけないことなのです。

でも一番いいのは、ボールが林まで曲がらないための練習を積むことですかね(笑)。

「挑戦しない限り失敗はないですが、成功も絶対あり得ませんからね」(PHOTO by AYAKO OKAMOTO)

週刊ゴルフダイジェスト2023年12月12日号より

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