【ゴルフはつづくよどこまでも】Vol.155「トップを3センチ変えるのにプロでも3カ月かかります」
高松志門の一番弟子として、感性を重んじるゴルフで長く活躍を続ける奥田靖己。今週もゴルフの奥深い世界へと足を踏み入れていく。
PHOTO/Tsukasa Kobayashi
ここ3年くらい自分のゴルフの調子がずっと悪い状態が続いていたのが、このところちょっとよくなってきとるんです。
きっかけは、3カ月ほど前に師匠(高松志門)にスウィングの映像を見てもらったこと。もう即答で「やっぱり、ちょっと盛り上がりよんなぁ。トップの位置が盛り上がっている限りは打てんやろな」と言われました。まあ、それは自分でも自覚はあったんですよ。
やっぱり飛距離を伸ばしたいからちょっとトップを大きくして叩きにいってたんから始まって、次第に振れなくなるくらいに調子が悪なっていった。それはわかっていたんですが、改めて師匠に指摘をされて、「やっぱりか」いう感じでした。
それで3カ月前からトップの大きさを元に戻すことに取り組んだのですが、スウィングを直すいうんは、まあ大変です。
握りこぶし1個くらい大きくなっていたトップが、今は指1、2本ぶんくらいまでに戻ってきましたけど、その1点を戻すのにプロゴルファーが3カ月かかっとる。それでチビッとしか変わらへん、長さで言うたらたった3センチですわ。
僕らは月に20ラウンドくらいしますから、直し始めてもう50ラウンド以上はやっていますけど、練習も含めて日夜一心でプロゴルファーがそんだけやっても、浮いた5センチのトップが未だに戻らない。それほどスウィングをいじるんは時間がかかります。
それに一瞬よくなっても、根本は変わらへんからすぐ元に戻るし、それが原因のミスショットも出ます。だからトップの位置やったらココやということを信じ切って、それをいかにやり通せるかということしかないわけですが、ゴルフは、やっぱり強く打ちたい、飛ばしたい、いうのが本能的に先にくるので、スウィングを小さくするんは難しい。
結局最後は、自分の年齢とかと折り合いをつけて飛距離が落ちることを受け入れられるかという頭のなかも大事になるわけで、そらもう電気ショックで脳みそを変えるくらいの意識の変化をせなあかんのです。
まあプロもアマも一緒ですけど、ひとつのスウィングを身に付けたり改造することは、簡単にできるもんじゃないいうことです。
「飛ばしたい欲求があるから、スウィングを小さくするんはホンマ難しいです」
奥田靖己
おくだせいき。1960年、大阪生まれ。93年日本オープンなど6勝。シニアで2勝。ゴルフの侘び寂び、温故知新を追求する
週刊ゴルフダイジェスト2023年11月28日号より