【ゴルフはつづくよどこまでも】Vol.154「入ってくれたら儲けもん」
高松志門の一番弟子として、感性を重んじるゴルフで長く活躍を続ける奥田靖己。今週もゴルフの奥深い世界へと足を踏み入れていく。
PHOTO/Norimoto Asada
2000年の初頭に日本のツアーで活躍したハワイ出身のグレゴリー・マイヤーはパッティングの上手い選手です。
それであるとき、「マイヤー、パター入るね」とあおり気味に言うたら、「トキドキ、ハイルネ」「マグレトイウカナ、ナントイウカナ」と、日本的な謙遜で返してきたんには笑いました。でも、パットの上手い人はこういう考え方をする人はけっこう居てます。
以前、パットがめちゃ入る選手に「どんな気持ちで打ってんの」と聞いたことがあるんですが、そしたら「入らんでいいから、近くにいけばいいよ、と思って打ったら入るんです。入ってくれたら儲けもんやけど、別にスコーンと入らなくてもいいと思って打ってます」と言う。もちろん、“まぐれ”で入っているわけではないですけどね。
よくポジティブシンキングとかいうて、「絶対に入れてやる」と思って打たないと入らない、とか言いますけれど、そんな上手いこといかんもんです。もちろんプロは皆、「入れてやる」思って打ってますよ。でも傾斜にかかるラインが多いプロの試合では、「入れてやる」の裏で「3回かかったら嫌や」いう気持ちがどうしても働く。それで打てなくなるんです。
カップの向こうがちょっと下っていると、行き過ぎて3パットが頭によぎる。するとなかなかポジティブシンキングで強めには打てません。
「入らんでもいいけど、入ってくれたら儲けもの」いう気持ちで打つのと似た感覚が、下りラインでカップの手前でボールを止めてやろうというときの打ち方です。それが勢い余ってコロンとカップに転げ落ちると儲けもんいうことですわ。ストロークで距離感を出すより、実はこういう打ち方のほうがタッチは出やすい思います。
練習するときも、下りはカップの手前で止める、上りの場合はカップをちょっとでも越えたらいいと思って打つ。そのときにイメージで、コンと打つか、コロンと打つかコロコロコロと打つか。カップへのボールの入り方を変えてやるんです。
フックやスライスラインは、強めに打つ、ミドルタッチで打つ、弱めに打つことでラインを出していく。そういう練習をしていると感覚もよくなる思います。
「コンか、コロンか、コロコロコロか。イメージも大事です」
奥田靖己
おくだせいき。1960年、大阪生まれ。93年日本オープンなど6勝。シニアで2勝。ゴルフの侘び寂び、温故知新を追求する
週刊ゴルフダイジェスト2023年11月21日号より