【ゴルフはつづくよどこまでも】Vol.141「飛ばしのキモは“道具の使い方”」
高松志門の一番弟子として、感性を重んじるゴルフで長く活躍を続ける奥田靖己。今週もゴルフの奥深い世界へと足を踏み入れていく。
PHOTO/Takanori Miki
ゴルファーなら誰もが、もっと飛距離がほしいと思ったことは一度や二度ならずあるはず。まあ、遠くにボールを飛ばすことがゴルフの醍醐味でもあるので、そう思うんは当然のことです。だから皆さん、どうすれば飛ぶかということを知りたがります。
よく言われるんが体重が多いほうが飛ぶいうことですが、そら、ボクシングでもヘビー級のほうが軽量級の選手よりもパンチ力はあるわけで、そういう物理の法則からすれば体重(質量)が重いほうが飛距離は出ると言えるでしょう。
僕らでも、太ってきたなあ感じたときはやっぱりボール飛んでるし、痩せると距離がちょっと落ちるいうた経験はありますしね。
だから体格がイイと飛びやすいという傾向は確かにあるにしても、お相撲さんのような体格の人が案外飛ばんとか、一方で体が細くてヒョロッとした人で、ものすごい飛ぶいう事例もあるわけで、そうなると必ずしも体形・体格が飛ばしの決め手だとまでは言えませんわね。
僕が飛ばしにとって一番影響力があると思っておるんは、道具の使い方です。つまりどれだけ道具を上手く使うかで、そのために「捻転差」とか「タメ」といった打ち方の技術があったり、「ゆるゆる」といった体の使い方があるいうことです。
今のクラブの使い方の最先端の理論の一つに、クラブの重心を感じてクラブを「引いて引く」いうのがあります。要するに重心の管理をしてクラブの挙動を安定させてエネルギーを効率よく作り出すいうことなんですけど。
実は、うちの師匠(高松志門)なんかは、かれこれ35年以上前、僕が研修生になりたての頃に、この「引いて引く」理論と同じ原理みたいなもんをよく口にしておりました。
アイアンヘッドの重心とグリップエンドをつなぐ仮想ラインの一点を指さして、「ヘッドの重心位置がここやろ、この辺までわかったらゴルフは何とかなんねんな」と言うて。ずっと前に、感覚派でもそんなこと思うておるわけです。でもそこは感覚派やから、言葉や理論で表現せんと「何とかなんねんな」で終わっとるんですわ。
「『引いて引く』は35年前に師匠が口にしておったんですわ」
奥田靖己
おくだせいき。1960年、大阪生まれ。93年日本オープンなど6勝。シニアで2勝。ゴルフの侘び寂び、温故知新を追求する
週刊ゴルフダイジェスト2023年8月15日号より