【岡本綾子 ゴルフの、ほんとう】Vol.761「体調によって、歩測の歩幅に変化があること心得ていますか?」
米国人以外で初めて米女子ツアーの賞金女王となった日本女子ゴルフのレジェンド・岡本綾子が、読者からの質問に対して自身の経験をもとに答えていく。
TEXT/M.Matsumoto
目標までの距離は、できる限り自分の足で歩測するように心がけています。そのため、普段街なかを歩く時も、同じ歩幅で歩くよう気を付けたり。岡本さんは特に注意している点などありますか。(匿名希望・49歳・HC2)
今では当たり前の歩測ですが、わたしが初めてゴルフに出合った当時、国内では一般的なものではありませんでした。
ホールの距離の情報は、ティーイングエリアにある表示板、ホール左右の樹木や杭で示された150ヤードと100ヤードの残り距離、もしくは地表にあるスプリンクラーのふたに表示されているものなどでした。あとはキャディさんに聞くかプレーヤー本人の目測が頼りというのが実情でした。
その後、70年代半ばから80年代にかけて、歩測する様子を見かけるようになりました。
アメリカではすでに見慣れた光景になっていた歩測を、日本に導入したのは、日本女子プロゴルフ協会前会長の樋口久子さんだったといわれています。
樋口さんは日本人選手の世界挑戦の道を開いてくれた大先輩であると同時に、ゴルフ先進国の当時の最新事情をもたらすことに貢献されたわけです。
それからゴルフ界も大きく様変わりし、距離の測定に関しては、JLPGAは昨年から計測器の使用を認めていますし、開催コースごとに発行されるプロ仕様のヤーデージブックも当たり前のように流通しています。
わたしが若いころ、練習日のラウンドをする場合は、メモ用紙を用意してプレーしながら自分で目標物などを決めて気になる距離を歩測してチェックしていました。
その数字をもとに自前のヤーデージブックを手作りしていましたが、距離を測って書き込むほうに時間がかかったことを記憶しています。
最初のころは、スティックの先に付いている車輪の回転数で距離をカウントするロード距離計を使う人が多かったかな。
今でも大会運営やテレビのスタッフがグリーンで使ったりしていますね。
そういえば、わたしがアメリカでプレーし始めた80年代前半、ヤーデージブックを作っている人たちは、コース内で釣り竿でキャスティングして距離を測ったりしていました。
狙いを付けたポイントまでラインを延ばすのですが、そのラインには節目ごとに長さの印が付けてあり頭いいなぁ~って思って見ていた記憶があります。
歩測の基本は自分なりの1歩の歩幅ですから、いつも一定に保たなければ正確な距離測定はできません。
1歩がたまたまちょうど1ヤードの人は楽だろうけど、そんな人は珍しいはず。
歩幅は「身長×0.45」と言われているらしいですけど、あなたはどうですか? 10ヤードを12歩で歩くとしたら1歩はおよそ0.8ヤード。
いずれにしても、自分の体格に合わせた基準を作りそれをもとに距離測定をすることになります。
ただし、自分では一定を保っているつもりでも、初日と最終日、あるいは最初と終盤とでは疲労度によって、歩幅に違いが出てくることも頭の隅に置いておくほうがいいですね。
足運びが小股になってくると、数字は大きくなって距離は不正確に延びてしまうことになります。
わたしの場合は、40歳を過ぎた頃からかな、疲れてくると11歩で歩けたはずの10ヤードに12歩かかってしまっていたこともありました。
だから反対に10ヤードを歩いて何歩かかるかで、自分の体調や疲労具合をチェックすることもできたわけです。
距離で思い出すのは、サービスのつもりかゴルフ場のなかには、甘い距離表示をするコースがありましたよね。
お客さんが「こんなに飛んだのか」と思ってくれればうれしい、ということなのでしょうかね(笑)。
いまはそのようなコースはなくなったと思いますけど。
ともあれ、正確な距離を把握することがスコアメイクの第一歩。
ただし、地形による高低差や風の影響によって、実際に打つ距離はさらに検討を要します。
そう考えると、レーザー測定器やGPS距離計が導入されても、必ずしも判断ミスがなくなるとは限らない。
そこがゴルフの深みなのでしょうね。
「人の感性は想像を超える」(PHOTO by AYAKO OKAMOTO)
週刊ゴルフダイジェスト2023年4月18日号より
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