【名物ホールでいつかバーディ】Vol.24 いったいどこを狙えばいいの? フェアウェイ中央の木々が行く手を阻む 「熊谷GC」10番パー4
かつてチョイス誌の編集長も務めたゴルフコースのスペシャリストが日本全国の名物ホールをレポート。今回紹介するのは、埼玉県にある熊谷ゴルフクラブの10番ホール。
【名物ホールFile 24】
熊谷ゴルフクラブ
10番ホール
432Y Par4
大きく育った木々を見て思う
「ここは本当に河川敷なのか?」
昭和36年開場のコースは、荒川の河川敷に造られた。河川敷コースでは、川面を眺めながらのプレーになることが多いが、熊谷GCは土手から川まで最大幅が約700メートルもあり、しかも多くの木が茂り河川敷という雰囲気は皆無だ。加えて、コース管理は行き届いていて、ティーイングエリアは広く、フェアウェイやグリーンの整備はお見事。通常のコースと比べてもなんら遜色のない仕上がりで素晴らしかった。
設計は、戦前に東京帝国大学で建築を学んだ間野貞吉。昭和7年に論文「ゴルフ場の施設」により工学博士号を授与されている。間野が設計した他の主なコースは、戸塚CC東Cや札幌国際CC島松C、新沼津CCなどがあり、いずれのコースも高い評価を得ている。
10番ホールは432ヤードのパー4。ティーイングエリアに立つとまず目に入ってくるのは、ほぼフェアウェイ中央に植えられている松の群生だ。しかもそれが3カ所もあり、程よい間隔を空けてほぼ直線に連なっている。思わず「どこを狙うのですか?」と、一緒にプレーをした当時の支配人さんに聞いてしまった。
「松を避けてフェアウェイを狙う」が正解だった。
通常、フェアウェイの右、もしくは左の樹木は上空にハザードを形成するという目的で意図的に植えられるものだが、それにしても大胆といえる。この10番ホールの造形にはただただ驚いた。
名門林間コースの佇まい
雰囲気漂う2番ホールは543ヤードのパー5。緑濃く大きく育った樹木により、とても河川敷コースとは思えない
熊谷ゴルフクラブ
埼玉県熊谷市石原1431
18H・6826Y(バミューダ)、6576Y(ベント)・P72
コース設計/間野貞吉
文/吉川丈雄
特別編集委員。1970年代からアジア、欧州、北米などのコースを取材。チョイス誌編集長も務めたコースのスペシャリスト。現在、チョイス誌ベスト100選考委員、日本ゴルフコース設計者協会名誉協力会員としても活動
月刊ゴルフダイジェスト2023年4月号より