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グリーンの“速さ”を計測する「スティンプメーター」ってどんな器械? どうやって測っている?【明日使えるゴルフ用語】

普段当たり前のように使っているゴルフ用語だが、その成り立ちや意味を問われたときに、正しく返せるだろうか? ここではラウンド中の会話やゴルフ仲間とのやりとりで使える、ゴルフ用語にまつわるうんちくを紹介する。


スティンプメーター【Stimpmeter】


ゴルフ場に行くと、スタート室の前などに、「本日のグリーン=10フィート」というような掲示がされていることが多い。

これは「グリーンの速さ」、すなわちボールがグリーン面を転がるスピードを表す指標で、数字が多ければ多いほど「速い」グリーン、つまりパターで打ったボールがよく転がるということを示している。

でも、なぜ「速さ」を表すのに、時速(km/h)や秒速(m/s)ではなく「フィート」(1フィート=30.48cm)という長さの単位をが用いられているのか、不思議に思った人もいるだろう。

実はこれ、グリーンの速さを測る器械と関係がある。

グリーンの速さは、「スティンプメーター」と呼ばれる機器を用いて計測される。

スティンプメーターは、樋(とい)のようにV字にへこんだ形をした金属製のレールで、長さは3フィート(91.44cm=1ヤード)。レール幅はちょうどボールがその間を転がるようにできており、一方の端にはボールをセットするための穴が設けられている。

使い方は、まずグリーンの平らな部分にスティンプメーターを置き、穴にボールをセットする。ボールのセットされている側をゆっくり持ち上げていき、持ち手が一定の高さに達すると、ボールが転がり出すという仕組みだ。

スティンプメーターを転がり出たボールは、グリーン上を転がり、やがて止まる。このときの転がった距離を、グリーンの速さの指標としているわけだ。

スティンプメーターの長さがちょうど3フィートであることから、距離を計測する際にも、物差しとしてスティンプメーターを使うことができる(1インチ刻みで目盛りが刻まれている)。仮に転がった距離がスティンプメーター3本分であれば9フィート、スティンプメーター3本分+半分であれば10.5フィートというわけだ。

スティンプメーターを使って3回転がしたら、今度は反対側からも3回転がし、それらの平均をとってグリーンスピードが決まる。

スティンプメーターの角度が約20度を超えるとボールが転がり出る。令和の時代とは思えない非常にアナログな計測機器だ

“速いグリーン”はなぜ難しい?

通常営業のゴルフ場では、8~9フィートのところが多く、10フィートを超えると“速い”と感じるはずだ。日本のプロの試合では、11~12フィートに設定されることが多く、「ガラスのグリーン」と呼ばれるマスターズでは14フィートに及ぶことも。通常営業のゴルフ場の倍近くも転がる計算になる。

グリーンスピードが遅ければ、強く打ってもそこまで転がらないので、ラインをあまり気にせず強気で打っていくことができるが、ガラスのように速いグリーンでは、強く打てないため、どうしても傾斜の影響を受けやすくなる。そのため、たとえ1メートル以内の短いパットであっても気が抜けない。弱く打てば微妙な傾斜で曲がってしまうし、かといって強めに打って、もしカップを外れたら、どこまでも転がっていってしまう。

トーナメント中継を見ていると、なぜあんなに短いパットで慎重になっているのだろう、と不思議に思うかもしれないが、いざそうした速いグリーンを経験してみると、その理由が痛いほど分かるはずだ。通常営業のゴルフ場でも、あえてツアー並みの高速グリーンをウリにしているコースもあるので、機会があればぜひ一度体験してみてもらいたい。

ちなみに、スティンプメーターを発明したのは、アメリカ人のエディ・スティンプソン(Eddie Stimpson)という人物で、「スティンプ」の名はそこから来ている。一般ゴルファーには必要のない道具ともいえる、家のカーペットが何フィートの速さか知りたい人は、手に入れてみてもいいだろう。USGA公式のものは5万円弱で買うことができる。5万円あったらパターを買ったほうがいいかもしれないが、一応ご参考まで。

一度速いグリーンで回ってみると、飛ばしだけでなく、グリーン上のプロの技術がいかに高いかが痛感できる