【ゴルフ野性塾】Vol.1768「ゴルフ合宿が個々の力量を上げる」
古閑美保、上田桃子など数多くの名選手を輩出してきた坂田塾・塾長の坂田信弘が、読者の悩みに独自の視点から答える。
時代が変って
人の考えも
変ったのか、人の考えが変って時代が変ったのかは人それぞれの考え様と思うが、時代も人の考えも変って来たのは確かだと思う。
老いし人の考えは然して変らぬ様だが、若き人の変化への認識と対応と順応は強くなっている様な気はする。
老いし人よりも3倍も5倍も、事によっては10倍もの強さだと思う。
ゴルフ界もそうだ。
私は兵庫県西宮市御茶家所町に本部を置く大手前大学ゴルフ部の総監督であり、長男雅樹が監督を務めてくれているが、その雅樹は言った。
「親父、時代は変って来たな。理論は然して変らないと思うが、指導方法は確実に変って来ているよ。基本理論は日本の理論の方が優れているし、理論の長寿も保持しているが、指導方法はアメリカが先に行ってるな。それも遥かにだ。アメリカの優れたところは器材の開発力だ。お金の掛け方が違う。人材にも日本の100倍掛けているんじゃないのかな。アメリカは失敗を強く怖れる国じゃないと思う。そこが日本とは違うネ」
「そうなんだ」
「日本は遅れたよ。ゴルフも竹槍と精神力で戦う時代じゃなくなったな。今のままじゃアメリカには勝てないと思う。発想の起点の違いだな。それって親父の役目だろう。あと10年、頑張ってくれよ」
「若い時の10年は短くもあるし長くもあるが、75歳過ぎての10年は長い。75歳過ぎれば分ると思うが、一日が長いんだ。10年は無理だが、3年であれば頑張り様もある。まずはアメリカを知り、ヨーロッパを知り、アジアを知ればいい。それで世界を知る事になる」
「今年のマスターズ行くかい? この3年、行ってないだろ?」
「オーガスタは遠いな。西海岸であれば行けると思うが」
「西にメジャーの開催コースは少ない。やっぱりアメリカ中央から東海岸だネ、メジャー開催出来るコースの7割は」
「それでも西海岸であれば行けると思う。一度の乗り継ぎの多さが結構な疲れを生むからな」
「じゃあ、西海岸のメジャーあれば行ってくれよ。行かなきゃ手も足も出ない状況なんだから」
「俺の指導力は要らない。見識を必要としているだけか」
「そうだ。他に親父が時代の先に行けるものは何もない」
「結構、厳しい指摘だな。焦っているのか?」
「ああ。焦りはあるネ。今年の大手前大学ゴルフ部、男子のレベルは上るけど、女子は現状維持だ。現状維持では大阪学院と近大、そして東北福祉大学と日大に勝つ事は無理だ。この4校は昨年も強かったのに今年のレベル、確実に上っているよ」
「昨年以上の合宿が要るか。大手前は合宿で個々の力量、上げて来たゴルフ部だからな」
「個々の力あればチーム力も上る。個々の力ないとチーム力は上らない。それって親父が坂田塾で教えて来た事だ。個々の力アップには合宿が必要だよ」
「金が要る。後援会に頼むか」
「頼んで貰いたい。急ぐよ。個人戦も団体戦も試合始まるのは4月だ。男は油断しなきゃ大丈夫。悩み生じているのは女子だ。個々の力不足だ」
1月20日、雅樹は神戸に行きました。
2月20日までの内20日間、大手前大学ゴルフ部員と神戸塾塾生への指導。やる気にはなっている。
女子のキャプテンは奈良育英から来た神社佐也加(かんじゃさやか)。束ねる力を強く持つ女の子である。
神社が4年生になっているのには驚いた。時、過ぎるは早い。
あとは個々の力量。
20日間で何が生れるのか、期待している。
今日1月26日木曜日。
私は朝の8時35分から本稿の執筆に入り、女房殿は毛布を洗い始めた様子。
東芝の12キロ洗える洗濯機は女房の友達になっている。
しかし、雅樹が29日間いないと女房も暇になると思う。
今は私にとばっちりが来ない事、願うだけ。
毎日、着る物を変えられたんじゃ落ち着かない。
窓の外は冬の空。
現在時、午前10時25分。
体調良好です。
昨日の昼も夜も今朝も寒かった。なれど雪模様じゃない。
このまま過ぎてくれればと願う。
四国か、東京へ通え。離婚はするな。
定年を迎えたら、故郷の四国でのんびり暮らしたいと考えています。一人娘も結婚していて、いまは妻と二人暮らしです。妻にそのことを話したら、猛烈に反対されました。妻は東京の出身で、実家の両親も嫁いだ娘も電車で30分くらいのところに住んでいます。いずれ四国に戻って、一人暮らしになった母の面倒を見たいという私の気持ちは、これまで妻に何度も話してきましたが、いざその時期が近づいてきたら、完全に拒否です。塾長、熟年離婚も辞さない構えの妻を説得する手はありますか。(東京都・匿名希望・59歳・ゴルフ歴15年)
無理だ。
女房殿と娘さんの生活環境、今が最善であろう。
そして貴兄の思い通りに貴兄の実家のある四国へ引っ越すとなれば反対起きるは当り前。
となれば熟年離婚は現実的な選択となり、最善でも東京と四国の別居生活になると思う。
私に貴兄の女房殿の考え方を変える知恵はありません。
無理です。
どれ程の愛ある生活過して来たとて、若い頃の愛と今の愛は同じじゃない。
愛は季節と同じで変り行くものと思う。
そして夫婦間の生活、いつ迄も同じじゃない。
夫婦といえど、人それぞれの生き様はあると考える。
貴兄の女房殿に離婚を踏み止まる愛はないと推察する。
結婚生活がいつ迄も幸せであるは稀なる事。
妥協、慣れ、打算が老いる程に混じる夫婦間の生活だ。
貴兄は自分の母の面倒を看たいと願う。
故郷でのんびり過したいとも願う。
悪い話じゃない。
だが女房殿は東京の人、女房殿の両親も健在。
そしていずれは面倒看なきゃならない親と子の関係であろう。
それぞれが親の面倒看る立場にある訳だ。
娘夫婦も東京に住んでいる状況、女房殿が貴兄について行く可能性は少ないと思う。
道理や義務、これ迄の生活への感謝の気持ちで女房殿の考え方、変る事はないと推察する。
これ以上の私の考えと想いを述べる事は出来ない。
責任の取れない話だ。
いずれが妥協するか、納得出来る妥協であるのか、難しくはないが厄介事にならなければと願うだけです。
私であれば貴兄が東京から四国へ通うか、逆に四国から東京へ通うか、それとも長期の別居生活に入るかの三つの選択肢を考える。
離婚は選択肢の中には入れない。
私は勇気持たぬ人間である。
故に三つの選択肢しか思い付かなかった。
風邪引かれぬ様、御自愛あれ。
坂田信弘
昭和22年熊本生まれ。京大中退。50年プロ合格
週刊ゴルフダイジェスト2023年2月14日号より