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【林家正蔵の曇りのち晴れ】Vol.287「今年のゴルフは……の巻」

新年、明けましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願いいたします。さて、かれこれ20年以上続くこの連載をご愛読くださっている皆様は、今年はどのようなお正月を過ごされたのでしょうか? 毎年のことですが、寄席芸人である私にとっては、ありがたいことに初笑いの高座の日々……。ゴルフができる日を待ち望んでいたわけですが、そんな私の元にも、お誘いが届きました

ILLUST/アオシマチュウジ

前回のお話はこちら

ゴルフ欲に心焦がれるお正月

お正月は、寄席芸人にとっては、かき入れ時で、初笑いの高座を次から次へとこなしてゆく。元日には、九州は、博多のニューイヤー寄席を皮切りに、都内3軒の寄席を掛け持ちしてと、バタバタと駆け巡る。

今年は雪も降らず、日差しがポカポカと暖かい。まさに絶好のゴルフ日和である。いいなぁー。ゴルフがしたいなぁー。でも働かなくちゃなぁー。

帰国ラッシュの空港の様子がニュースで流れる。真っ黒に日焼けしたファミリーが「今年は3年ぶりのハワイで、ものすごく楽しんできました」と、にこにこインタビューに答える姿が映し出された。その傍に置かれたカートには、ゴルフバッグが載せてあった。

いいなぁー。ハワイでゴルフ。もう30年ぐらい前に一度だけ、オアフ島のコースを回ったことがあるのを思い出した。その頃はまだまだ景気も良かったので、TV局の偉いプロデューサーさんが募る一声で、予算も下りて、ゆるーい内容のロケ番組ができた。食レポしたり、水族館に行ったりと、7日間のスケジュール。

しかし、仕事はたったの3日間で、あとはゴルフ、ゴルフ、ゴルフ。番組のプロデューサーは昭和のテレビ局の人だから、羽振りも良く、芸能人を引き連れては、やりたい放題であった。

今そんなことをしたら、即、文春砲のエジキでありましょう。

ゴルフの後は、マッサージ。その後は、レストランで美食三昧、そしてカラオケ、翌朝はゴルフと、夢のような日々。あぁ、それも遠い思い出となりました。


芸人仲間の自慢話から高鳴る思い

正月、上野の楽屋で、着物に着替えていたら、芸人仲間が真っ黒に日焼けしてごきげんに楽屋入りしてきた。

「おや、随分日焼けしてるね」と尋ねると、「ゴルフですよ」とニヤリ。「いいなぁー。お正月ゴルフは、普段より高いんでしょ、プレー代も」と聞くと、ニヤケた顔をさらにふにゃふにゃにして、「私は一銭も払ってないんですよ。すべてスポンサーのご招待で。前日に温泉にゆっくりつかって、旨い鍋食って、翌日にゴルフをやって戻ってきました」と言う。

この不景気に、芸人を連れてゴルフに行く余裕のある方がいるのかと感心した。

「千葉、それとも茨城とか」と尋ねると、「イヤイヤ、別府温泉まで」

なんだとぉー。「じゃあ、鍋ってもしかして」と言うと、「勿論、フグだよフグ。いやー随分頂きました。当分、フグはもういいや」なんてほざいている。

まだまだ打ち上げ、宴会、外食をコロナ感染予防のために控えているので、ここ何年もフグを食べていない私にとっては、腹が立つのなんの。しかも聞いちゃいないのに、「てっさ、唐揚げ、焼きフグ、ちり、その間にフグの白子の焼き物までついてきた」と教えてくれた。

「いいなぁー」と言うと、「締めのフグ雑炊にトリュフのスライスをたっぷりかけると、いい味変になるのを知ってました?」とこれ見よがしに美食自慢。

この野郎と思うのだが、ごちそうをさっ引いてもゴルフに行きたい思いが募る。

新年初のゴルフコンペは還暦の集い

そんな私の元に、友人からゴルフのお誘いがあった。

「還暦ゴルフコンペのお誘い」

つまり、60歳になった者だけでゴルフをするのが、この会の趣旨。こいつは、おもしろい。職業も商売も違う60歳を迎えた人たちだけが集うのである。心当たりの友人をお誘いくださいとのメッセージもあったので、さっそく私の知り合いにも声を掛ける。フタをあけたら、80人近い大コンペとなりました。

当日来るは来るは、60歳のおじさん・おばさんが、わんさか、わんさか。平日のコンペにもかかわらず、なぜこんなに集うのかなと思ったら、早くも現役をリタイアしている方も多く、あとは管理職やら自営業で、時間は作りやすいのだ。

会話は、年齢にふさわしく、腰が痛いやらひざが痛いやら、やれ糖尿だ、高血圧だと病気の話。あとは年金をいつからもらうかとか、孫の自慢。年齢をひしひしと実感する。

うすうすいるだろうなと予感していたが、ウェアが赤ずくめの参加者が8人いた。キャップ、セーター、靴下、シューズに至るまで、まるで赤唐辛子の化け物である。それでも楽しく、久しぶりに心が晴れた。優勝者は還暦コンペらしく、スコアが60・60の120ぴったりで回ってきた人という決まりだ。ベスグロは39・40だった。立派なものである。そして肝心の優勝者だが、イン・アウトをきっかり60で回った方が、なんと13人もいた。賞品は急遽、後日発送となりましたが。

さすがに私、49・49の98。なんだか大叩きにもかかわらず、楽しさいっぱい。さて今年は何とか80台で回れるように練習しよう、と心に決めた新年であった。

還暦の ゴルフは楽しく 赤一色

月刊ゴルフダイジェスト2023年3月号より