【岡本綾子 ゴルフの、ほんとう】Vol.749「気持ちは分かりますがオフの過剰なトレーニングはあまりオススメしないですね」
米国人以外で初めて米女子ツアーの賞金女王となった日本女子ゴルフのレジェンド・岡本綾子が、読者からの質問に対して自身の経験をもとに答えていく。
TEXT/M.Matsumoto
コロナ感染が再拡大の勢いを見せ、年末年始もふさぎがちな今、プロたちはどんなオフを過ごしているのでしょうか。また、岡本さんが気を使っていたこの時期の注意点はどんなことだったでしょうか。(今井涼介・35歳・HC8)
12月の上旬には年内の試合が終わり、翌年3月に行われる開幕戦までのオフを迎える。プレーヤーたちは2カ月余りにわたる期間を、それぞれ自分の立場に応じて計画的に過ごします。
海外の試合に挑戦するプレーヤーもいれば、気の合った仲間と国内外でキャンプや合宿を張るケースも少なくありません。
このオフの時間をどう使うかという選択肢は、飛躍的に広がっているといえます。
シード権を得た選手と、そうでない選手では過ごし方にやはり違いはあります。
反省から課題を絞った選手は、その克服を目指してトレーニングや練習法のメニューを組み、開幕に合わせて調整するというのが一般的なオフの過ごし方でしょう。
出場権が約束されているので、落ち着いて準備期間を迎えることができます。
しかし、シードを失った選手はそうはいきませんし、リランキング次第で後半戦の保証はないという選手も含め、「3月の開幕戦に間に合えばいい」と悠長に構えてはいられません。
シーズン中は毎週のように試合が続くので、課題を抱えていたとしてもフォームの矯正や、スウィング改造といった抜本的な修正には手を付けられません。
まとまった時間をかけて取り組むには、やはりオフ期間を利用するしかない。
そして、プレーヤーたちの多くが目標に掲げるのが、飛距離アップやそれに伴う筋力アップということになります。
確かに、飛距離は最大のアドバンテージになります。
オフの間にウェイトトレーニングで強化して、開幕には別人のような飛距離になって臨みたい……。
ですが、たった1~2カ月の筋トレで何十ヤードもキャリーが伸びたりすることは正直ありません。
それどころか、筋力をつけようと無理やり鍛えることで体重が変化したり、上下半身のバランスが崩れたり、さまざまな理由でスウィング軌道がズレてしまい、ショットが不安定になるケースが後を絶ちません。
目の前の結果を得ようとして、かえって調子を崩してしまうプレーヤーが多いのが現実です。
試合のない寒い時期に、マシンを使った筋力アップを図り、飛距離を伸ばそうという狙いは痛いほどわかります。
ですが、こうした方法で大きな筋肉を増強すると、それまでの体格、体重、柔軟性などに変化を来すことが多い。
その結果、同じスウィングをしているつもりでもフェースの入射角やタイミングが微妙に変化してボールの回転数や弾道に影響が出て、コントロールが利かなくなることがあります。
これでは、飛距離アップを実現できたとしても、ゴルフの組み立てを一からやり直さなければならなくなることさえあります。
また、短いオフに最大の効果を上げたいと、オーバーワークして体調そのものを崩してしまうケースもあります。
課題の克服も大事ですが、オフにやるべきことの最初のポイントは、長いシーズンを通して酷使してきた体のオーバーホールなのです。
まずは十分にリラックスして休むことです。
ここ数年、女子プロツアーのトップ争いはデビュー間もない若い世代が主役を演じてきています。
競争は厳しくなり、今年もまたさらなる新星の登場が期待され、それぞれ抱える課題に取り組み、自分を向上させたいと燃えているはずです。
しかし思わぬ落とし穴にはまってしまわないか、ちょっと心配。
怖いもの知らずの若さがあるだけに「オフの間のオーバーワーク」や「鍛え過ぎによるバランス不調」といった弊害も起こしやすいからです。
もちろん、彼女たちは信頼のおけるトレーナーの指示を仰いで、計画的にトレーニングしているとは思います。
でも、昔から練習法やトレーニング理論は進化してきているのに、上手く行かなかったり失敗する例は正直あります。
トレーナーに任せっきりにしないで、自分で考えて適切な練習を重ね、有意義なオフを過ごすことができるか。
その成果を見比べることができる開幕戦が、いまから楽しみになってきました。
「ゴルフスウィングは“リズム&テンポ+バランス”が大事ですから!」
PHOTO by AYAKO OKAMOTO
週刊ゴルフダイジェスト2023年1月24日号より
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