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【陳さんとまわろう!】Vol.233「ランニングアプローチがやっぱり一番安全な寄せ方なんです」

日本ゴルフ界のレジェンド、陳清波さんが自身のゴルフ観を語る当連載。今回のお話は、グリーン周りから寄せるときの注意点について。

TEXT/Ken Tsukada ILLUST/Takashi Matsumoto PHOTO/Tadashi Anezaki THANKS/河口湖CC、久我山ゴルフ

前回のお話はこちら

昔はグリーン周りでパターを使う選手は少なかった

――最近、男子の試合も女子の試合も、グリーン周りからパターを使って寄せる選手が増えているように見えます。そこで、その際の注意点があれば陳さん、教えてください。

陳さん そうだねえ。でもパターを使うなら、とくに私が教えなくても自分でできるんじゃないのかな。いつも通りの打ち方で打てばいいだけだもの。なんて、突き放すようなこと言っちゃいけないね(笑)。注意点を挙げるとすれば、それはボール周りの状況をしっかりつかむということですよ。ひとつは砂なの。バンカーの近くには砂が飛び散っているでしょ。これが怖いんだ。芝の中に入り込んでいると見えないしね。それで不用意に打つと砂に蹴られて方向が変えられたり、スピードが落ちてショートしたりすることがあるわけよ。砂がなければカップに入っていたものが入らなかったら、そこで1打損するんですから、砂は要注意だよ。

――肝に銘じます。


陳さん  それからもうひとつはカラーの上を転がすときに注意しなくちゃいけないことですがね、このカラーにはよく見ればわかりますけど、順目の場合もあれば逆目、横目もあるわけ。するとそこでボールの回転が変わるんだ。カップインを狙って打ったやつがそのせいで入らなかったら、パターを使った戦略は間違っていたことになるじゃない。だから……。

――だからパターは使わないほうがいい、ということなんですね。

陳さん アハハ……、そういうこと。昔はグリーン周りからパターを使うプロはいなかったよ。カラーからでも少なかった。というのは先輩プロから言われちゃうからね。「なんだお前、そんなシロウトの真似して」って。「お前」だよ(笑)。怖かったんだ、昔のプロは。

――じゃあグリーン周りからはアイアンを使って寄せる。

陳さん そう。ランニングアプローチがいちばん安全で確実。私がよくやったのは、ピッチングウェッジからロングアイアンまでを使って、同じ場所から打って同じピンそばに寄せる練習なんだね。この練習はホント、よくやりました。ランニングアプローチなら砂も関係ないし、芝目も関係ないからね。そこをキャリーで飛び越して、その先に落として転がせばいいわけよ。

――ウェッジでボールを上げて寄せるんじゃなく転がして寄せる。

陳さん そうです。グリーン周りからウェッジを使うのはものすごく難しいんだよ。ボールが高く上がる分距離が出ませんから、どうしてもバックスウィングを大きくとらなくちゃいけないわけね。しかし距離が近いのに大きくとると不安になるんだ。それで途中で手加減するもんだから手打ちになって、ダフリやトップを打つんでしょ。そういうことが多いから、ランニングアプローチを勧めるの。ロフトの立ったクラブを使えばテークバックが小さくて済むんだ。これだけでミスすることが少なくなるし、それにボールは転がしたほうが距離感を合わせやすいでしょ。グリーン周りから何でもかんでもパターを使っていると、ワンパターンになって様々な状況に対応できないんだ。しかし日頃からアイアンで寄せることをやっていれば、技が生まれるの。その技が大事な場面でワンストローク縮めてくれるんだよ。

陳清波

ちん・せいは。1931年生まれ。台湾出身。マスターズ6回連続出場など60年代に世界で日本で大活躍。「陳清波のモダンゴルフ」で多くのファンを生み出し、日本のゴルフ界をリードしてきた

月刊ゴルフダイジェスト2023年2月号より