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「最終ホール、パーなら30台!」からの大崩れ…いったい何が? どうすれば防げた? チャンスに強くなるメンタルテクニック

ゴルフにプレッシャーはつきものだが、ベストスコアが目前の最終ホールで大崩れしてしまったという経験は誰しもあるのではないだろうか。今回は実話をもとに、そのとき何が起きていたのかを脳とココロのスペシャリストが検証。チャンスを逃さない思考法を明らかにする!

TEXT/Masato Ideshima PHOTO/Takanori Miki ILLUST/Hideki Kamekawa

久瑠あさ美(右)

トップアスリートや経営者、ビジネスパーソン向けに、個人メンタルトレーニングを行う傍ら、リーダー研修や講演会など、活躍は多岐にわたる。http://ffmental.net

枝川義邦(左)

脳神経科学者。早稲田大学理工学術院教授。『「脳が若い人」と「脳が老ける人」の習慣』など著書も多数

パーで上がれば30台!
しかし結果は…

今回の主役/ボギ男さん

58歳、平均スコア90。身長183cm、体重82kgで中年にしてはナイスバディ。ゴルフの信条は「飛ばしてなんぼ」

結果的にボギ男さんは30台どころか45回も打ってしまったわけだが、今回の状況ではどうすることが正解だったのだろうか。まずはココロの問題について久瑠あさ美さんに聞いた。

「大前提として理解しておかなければならないのは、そもそもゴルフ場はスコアを妨げる要素がたくさん仕掛けられているものだということです。池やバンカーなどの設計者が意図的に配置したものから、風や気温などの自然条件もその要素の一部です。ですので、想定外のミスでパニックに陥って、何をすべきかがわからなくなりスコアを崩してしまうのはある意味当然のことです。そうなってしまう原因はココロの視点が感情レベルにまで引き下がってしまったということにあります。ココロの視点が低いと、目の前で起こったことに右往左往することになり、やがて感情の渦にのみ込まれてしまいます。必要なのはココロの視点を高めることで、コースやそこを回っている自分を“俯瞰する”という感覚です」

枝川義邦先生は俯瞰で見る状態のことを脳の分野ではメタ認知という言い方をすると言う。

「メタ認知とはひとつ上の位置から見ていることを表現しています。普通の目線で見えるものは自分より前にあるものですが、上から見ることで物事を客観的に見られるようになります。今回のボギ男さんにしても、俯瞰して見ることでその人自身も登場人物の一人にできるので客観的な目線が生まれるわけです」

客観的に見られると感情に左右されなくなり、例えば怒っているという感情を理解できるようになると枝川先生は言う。

では、目線を高くするために久瑠さんは、アスリートやクライアントにどのようなアドバイスをしているのだろうか。

「ゴルフに関して言えば、ある程度の技術力があることが前提ではありますが、ひとつの方法として数字の呪縛から解放されることが重要です。ゴルフに限らず会社経営でも同じですが、とかく数字にとらわれるのがゴルフというスポーツです。今回も30台という数字が常に頭の中を支配していたはずですが、その時点でゴルフコースやそこを回る自分と向き合えなくなってしまっているのです。それでは結果に縛られるだけになるのではないでしょうか。ココロの視点を引き上げることで、結果(数字)ではなく、過程(コースやそこを回る自分)にフォーカスできるようになります」

久瑠さんはアマチュアこそ結果にとらわれることなく、過程にフォーカスすること、ココロの視点を高める意義があると言う。

そこで枝川先生が、自分自身を客観的に見られるようになるためのヒントを教えてくれた。

「先ほど、久瑠さんがゴルフコースとは、そもそも意地悪に作られているとおっしゃっていましたが、今回のケースでも闘う相手がコースという観点を持つべきでした。ボギ男さんにとって、闘う相手として考えられるのは、ベストスコアを出したい自分と同伴競技者、そしてコースということになります。バンカーでのミスでキレた場面は、おそらく自分との闘いに負けてしまったからだと推測されます。ここでミスをしたのはコースのせいだと思うことができれば、ミスを引きずらなかったのではないでしょうか」

自分のタイプを知って
“地上戦ゴルファー”から脱しよう

久瑠さんはココロの視点を高めるにも、まずは自分がどういうタイプかを把握することが大切だと言う。

「ボギ男さんのように目標に対して口に出したがる人と、言いたくない人がいます。これはどちらが良い悪いではなくタイプがあるということで、だからこそ自分自身を知ることが大切になるわけです。それを知ったうえでココロの視点を高めると、空中のさらに上の天上から俯瞰的に自分のゴルフを見られるようになるはずです」

そこで久瑠さんが行っているのが“生き様診断テスト”だ。

「どのタイプの人も成功できるし、どのタイプの人も上手くいかないときがあります。それに対して自分が現実をどう受け止めているのかを考えたときに、自分にとって居心地の良いものを選択できるようになるのがベストです」

ボギ男さんにとっては今回の出来事を繰り返さないためにも自分をまず知るということが必要になる。枝川先生は、そのためにできるだけ具体的な理想を持つことだと話す。

「今の自分を客観視できるようになると、物の見方自体が変わるはずです。自分を客観視できず、理想もあやふやだと同じことを繰り返してしまう可能性があり、自分にとってのコンフォートゾーンから抜けられず、また同じ失敗をすることになります。何か上手くいかないことと対面したときに、その状況をスタートとして目標にどう近づけていくかが大事で、いかに柔軟に対応できるかだと思います。仕事では、思い通りいかないことをどうにかすることを英語で“マネージする”と言いますが、これはゴルフにおいても必要なことなのではないでしょうか」

確かにゴルフにも“マネジメント”というワードがある。久瑠さんは自分のタイプを知ることができれば、セルフマネジメントが当たり前のようにできると言う。

「成功している人は諦めるのではなく“明らめる”ことをします。明らかにするという行為は、自分に必要な課題がわかるということ。それと向き合うことが人生であり、ゴルフで言えばコースを攻略して良いスコアを出すことなんだと思います」

STEP 1
あなたはどのタイプ? 久瑠式『生き様診断テスト』

在りたい自分を手にするためのテスト。それぞれのタイプの良し悪しではなく、まだ見ぬ自分の内側を知り、潜在能力を引き出すことが目的。テストで測るのは自身の無意識レベルの「他者や自分に対する在り方」に関して。「王様」「ストイック」「ストレスフリー」「受け身」の4つのメンタルタイプで自分がどのタイプかをチェックしよう。

座標の中央付近に位置するのが「ニュートラルタイプ」。2つのタイプの境界線付近に位置するのが「王様になりきらないストイックタイプ」「王様になりきらないストレスフリータイプ」「ストイックになりきらない受け身タイプ」「ストレスフリーになりきらない受け身タイプ」となり、状況に応じて立ち回る

STEP 2
自分を知ることで俯瞰して攻略できるようになる

生き様診断テストを通じ、自分がどのタイプに当てはまるかを把握できれば、次第に自分を客観的に見ることができるようになる。すると空中戦、天上戦へと視点が高まり、最終的には自分のメンタルタイプをも自在に切り替えることが可能。理想的な自分を作り上げることができる。

【天上戦ゴルファー】
目の前で起こることに対して、情動、感情、思考を排除することができて、潜在的な能力を自ずと発揮することができる。ゴルフ場全体を俯瞰し、理想を現実にするために、空中よりもさらに上の自己超越のマインドポジションが必要になる

【空中戦ゴルファー】
ゴルフコースを上から見ることで、そこでプレーしている自分を、もう一人の自分という心の視点で見ることができる。想像力のあるショットが打てる可能性が高まる一方、マインド次第ではマインドポジションが下がる危険性もあり、完璧とはいえない

【地上戦ゴルファー】
平坦な場所にある池やバンカーなど地上にあるものは形状を確認することはできない。それらと地上の目線で闘っているうちは、あらゆるトラブルがつきまとってくる

「視点を引き上げる」トレーニング

アマチュアこそ現実の実力にとらわれることなく天上で戦うことを目指す必要があるというのは2人の共通意見。自分を俯瞰的に見ることこそがゴルフには求められる。

(1)コースに挑む
鷹の目や蟻の目という表現があるように、自分の目線とは違った視点で物事を見ることで、普段は見えなかったものも見えてくるもの。ゴルフではついつい3次元で物事を見がちだが、視点を上げて3次元でコースを見ると、気づかなかった攻略ルートが見えてくる。

(2)自分の様子を実況する
必ず訪れる緊張する場面。そのときに冷静に対処できる人は自分のことを、高い視点から眺めている。そこからテレビ実況をするかのような感覚を身につけると、プレッシャーに負けることはないし、自身が持っている能力を発揮することができる

久瑠あさ美のメンタルテクニック
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著者・久瑠あさ美さんからのメッセージ