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【PGAツアーエキスプレス】Vol.18 トム・キム。「努力は怠らない。そして結果に対しては寛容に」

ゴルフの最先端、PGAツアーの旬なネタをお届けする「PGAツアーエキスプレス」。第18回は、若くして注目を集め、アジアのネクストスターと目されている、トム・キムについて。

PHOTO/Tadashi Anezaki、Hiroyuki Okazawa

トム・キム 2002年生まれ、韓国出身。18歳でプロ転向し、21年には韓国ツアーの賞金王に輝いた。20歳でのPGAツアー制覇は、ジョーダン・スピースに次ぐ年少記録

次世代のスター候補がアジアから出現

昨シーズンの年間王者は、ローリー・マキロイ。33歳になり成熟さが増した彼は、勢いがすごかった若い頃とは、またひと味違ったゴルフで世界ナンバー1の座についた。「この状態に戻すまで、約1年間、一生懸命ゴルフに取り組んできた」と、マキロイ。2023‐24年シーズンも、ザ・JCカップで優勝を果たし、幸先のいいスタートを切っている。

マキロイと同じように、若くしてPGAツアーで注目を集めている選手がいる。それは、韓国のトム・キムだ。ZOZOチャンピオンシップにも出場した、弱冠20歳の超新星である。

トム・キムは8月に行われたウィンダム選手権で、最終日に「61」という驚異的なスコアを出しツアー初優勝を飾った。それはまさに“衝撃的”で、誰もが驚いた。

その後、プレジデンツカップでも存在感を示し、さらにはZOZOチャンピオンシップの前週に行われた、シュライナーズチルドレンズオープンでも優勝。もはや疑いようのない実力があることを証明してみせた。トム・キムは、この数カ月間で、目の肥えたPGAツアーファンを納得させるだけのパフォーマンスを見せたのだ。PGAツアーわずか18試合で2勝を挙げたわけだが、本人は意外と冷静に物事を見ている。

「ここ(PGAツアー)でプレーするのは、本当に大変なことだと思っています。それだけでも大変なのに、まして優勝なんて……すごいことだと思いますね」(キム)

キムのプレーを見ていると、ゴルフは実に簡単なものだと思えてしまう。数字を見るとなおさらそう思うのだが、優勝したシュライナーズチルドレンズオープンでは、4日間ボギーフリーのみならず、パーオン率は87.5パーセント。これは、過去の優勝者の誰よりもいい数字だった。キムの強さは、自身をよく理解し、客観的に見られるところにもある。

「人生で、自分が望むもの全てを手に入れることはできません。それはゴルフも同じ。もちろん、全試合で優勝したいし、それを狙っている。でもそうならないこともわかっています。だからこそ、自分のやるべきことを一生懸命やっていくことが大事。ツアーで2勝できたことは、本当に恵まれたことだと思っています。僕が心がけているのは、決して努力を怠らないこと。そして、その結果に対して寛容でいようということです」

アジア人として初めてマスターズを制覇した松山英樹に、最大のライバルが出現した。

PGAツアー最年少優勝はスピース

トム・キムは20歳1カ月18日という史上2番目に若さで優勝。ちなみに最年少記録は13年の「ジョンディアクラシック」で優勝したジョーダン・スピースの19歳11カ月17日

月刊ゴルフダイジェスト2023年1月号より