【キミこそ王子だ】Vol.62 蝉川泰果「4スタンスと出合って才能が開花」
雑巾王子こと武市悦宏プロが、全国の有望なジュニアゴルファーのもとを訪れ、大人ゴルファーにも役に立つゴルフのヒントを探る当連載。今回の王子候補は、兵庫県出身、兵庫教育大学附属中学3年の蝉川泰果くん。武市が感じた凄さとは?
今回の王子候補
蝉川 泰果くん
せみかわ・たいが ●主な戦歴/2015日本ジュニアゴルフ選手権 12歳~14歳の部 2位タイ ●ベストスコア/64(ライオンズCC) ●練習/3時間360球 ●トレーニング/ダンベルでカールなど10×5セット
「蝉川くんは名前が泰果(たいが)ってことは……」
「そうです。父がタイガー・ウッズにあやかってつけました。ボクが生まれたとき大活躍していたので」
「ゴルフは何歳で始めたの?」
「1歳半です(笑)。といってもプラスチックのクラブですけど」
それから15年。現在、兵庫教育大学附属中学に通う3年生は、父親の願い通り、わき目もふらずゴルフ道を歩んできた。2015年には「日本ジュニアゴルフ選手権」で2位タイに入るほど成長した。
「顔小さいね~」
武市が惚れ惚れしながらいう。2001年生まれの現代人ということもあるが、下半身がガッシリしているので、余計にそう感じるのだ。話を聞くと、やはり走り込みやダンベルで筋トレを行っているそうだ。
飛距離も中学3年生にしては出るほうだ。そんな彼にスウィングのキモを教えてもらうと……
「4スタンス(※)で、自分に合った動きを研究しています」
「へぇ~。蝉川くんはね……たぶんB1でしょ!」
「正解です! パッと見ただけでわかるんですか?」
「自称スウィング研究オタクだから、いろいろ勉強してるのよ」
蝉川くんが4スタンス理論を取り入れたのは青木翔コーチから始動を受け始めた3年前から。それまで、いろいろな指導を受けてきたが、「頭では理解できるけど、自分にはやりにくい」と感じる動きが多々あったそうだ。しかし、4スタンスと出合い、人にはそれぞれ合う動き方と合わない動き方があることを学習。以降は、徹底的に自分のタイプに合わせたスウィングを目指すことで、体にも負担がなく、効率よく上達することができたという。
蝉川くんのタイプは「B1」。足を振ん張り、その場で回転する、いわゆる1軸タイプだ。
「普段どんな練習をしてるの?」
「打席を仕切るパーテーションを左足の外側に置き、軸がブレないようにスウィングしています」
武市も試してみると……
「昔からある練習法だけど、B1タイプの人には合っているかもね。頭でイメージするより、モノがあると、よりその場で回転しやすいもんね」
どんな練習法も「本当に効果あるの?」と半信半疑でやるよりも、「自分には合っている」と信じてやったほうが成果は上がると武市はいう。
「蝉川くんは、自分がB1と知ったことで、いろいろなことがクリアになったんだろうね。B1は足の踏ん張りが必要だから、トレーニングするにしても、あれこれやるのではなく、下半身と体幹を中心に鍛えている。だから、捻じる力が“でら”強く、飛ぶわけ。スウィング理論とトレーニング方法を合致させるって重要だよね」
「ありがとうございます」
「そうそう、B1って本を後ろから読むんだよね」
「そうなんですよ!」
スウィングとは別に謎の特徴を持つB1タイプの蝉川くん。春からは高校生となり、一層の活躍が期待される。
※4スタンス理論……廣戸聡一氏が提唱する、人の動作特性は4つのタイプに分けられるという理論。A1、A2、B1、B2の4つのタイプがあり、それぞれのタイプによって理想的なスウィングは異なる。
週刊ゴルフダイジェスト2016年3月15日号より