【10本で握る】桜美式テンフィンガーグリップ。時松隆光が真っすぐ飛ばせる秘密がここにある!
2018年シーズン、春先の関西オープンで1勝し、その後も日本オープン5位タイなどコンスタントに上位に進出する25歳、若手実力派として躍進中の時松隆光。特徴は何といっても10本の指で握る‟テンフィンガーグリップ”。「誰もが疑わずにやっている『左の親指をグリップの上に乗せて、その上に右手を乗せるグリップ』握り方よりも、『左右10本の指で握るテンフィンガーグリップ』のほうが、実はスウィングをはるかに簡単にさせる握り方なのです」と説明する篠塚武久先生。時松がゴルフを始めた時からの先生で、今も指導を続ける師匠だ。『10本で握る』ゴルフについて、師弟に聞いた。
テンフィンガーは、体にやさしいグリップ!
テンフィンガーグリップは、従来のスウィングと違って、誰もが簡単にできる握り方です、と言う篠塚先生。時松は子供の頃から、この握り方だ。
時松 それ、変わってるねと、アマ時代からずっと言われてきました。それは、僕のテンフィンガーグリップ。しかも、両手とも親指をグリップに沿わせません。
篠塚 そもそも、初めてクラブを握る子どもは、皆テンフィンガー。それを大人が無理矢理変えてしまうから、のちのち様々な矛盾に苦しむんです。テンフィンガーは人間本来の動作のための自然なグリップ。自然だから、簡単で、ケガをせず、そして何より、狙いやすくて曲がらないんです。
時松 僕は、飛ばすよりも方向性を大切にするタイプ。曲がらないことが大事です。
ゴルフで大切なのは、ただ飛ばすだけでなく、曲げずに狙ったところに飛ばす競技。時松は、一番大切な方向性を大切にしている。
ドライバーもアイアンも、曲がらないから攻められる
桜美式テンフィンガーは親指を伸ばさない!
時松のグリップ
従来のグリップ
時松 一度だけ練習場で、先輩プロから“俺の握りでどうだ”と言われて打つと、とんでもなく右に曲がった。僕には無理でした。
── 幼少期に心臓病でスポーツができなくなり、ゴルフくらいならと医師に許され、篠塚に習い始めたのが、時松のはじまりだ。
篠塚 そんな子どもに、不自然で難しいグリップでゴルフの楽しみを軽減させたくない。自分がしっくりくる握り方でいい、それが上手くなる早道だと。今もジュニアにそう指導しています。私自身も過去にインターロッキングで苦しみ抜きました。だからこそ、自然で楽で曲がらない、未来あるグリップを広めたい。
【篠塚ノート】右手のひらでクラブを支える
グリップを複雑にすると体の動きも複雑になる
── まず、テンフィンガーの利点について聞かせてください。
篠塚 たとえば、刀でも鍬でも、テンフィンガーで握るでしょう。人間が両手で棒状の道具を扱う場合、「親指をグリップに沿わせる」とか「両手を一体にする」と考えもしない。クラブも同じで、10本どの指の働きも殺すことなく自然体で握れば、右手がどうとか左手がどうとか、グリップに悩みがなくなる。簡単であることは重要な利点です。
時松 確かに、小さな頃からグリップで悩んだことはありません。でも、僕のグリップを真似して打った人は、みなさん最初は引っかけてしまいます(笑)。右手が効きすぎるみたいです。
── テンフィンガーでフックさせないためには?
篠塚 せっかくテンフィンガーに変えても、従来のイメージのままインパクトで右手を返すから球がつかまりすぎる。指を重ね合わせて両手を一体化させた従来のグリップは、自ら不安定な状態を作り出しています。バックスウィングでクラブがうねったり、腕がねじられたりし、インパクトでそれを戻す動作が必要になり、右手を返すのです。
時松 右手を返す意識は、僕にはないですね。それどころか、インパクトもない感じですかね。
── 時松プロには、インパクトがない?
篠塚 時松プロには、球に対して当てにいくような雰囲気がないし、実際、アイアンではターフもあまり取れない。アイアンは打ち込まなければと思っている人は多い。点でとらえようとすると余計な動きが入ったりし、軌道や打点がバラつきます。
ねじらないから、軌道も打点もバラつかない
篠塚 人間にとって自然なテンフィンガーだと、うねりも、ねじりもしないムリのないスウィングになり、同じ軌道で安定して振れます。だから、彼のアイアンは曲がらないんです。
篠塚 体の動きを中心に手が振られるのでなく、グリップを中心に振り、それに体の動きが従うと考えれば軌道が安定します。「自分が太陽、グリップが地球、ヘッドが月」と考え、自転する地球が公転するイメージ。月は地球についてきます。
【篠塚ノート】横グリップが道を走るとヘッドも道を走るイメージ
スウィングに無理がないから再現性が高い
架空の「横グリップ」。これがあれば真っすぐ長いインパクトゾーンに
── テンフィンガーでは、バックスウィングでうねらず、ねじらず、インパクトでも右手を返さなくていいと。
篠塚 そう、ただ自然と、グリップを真っすぐ引いて真っすぐ出せばいいだけです。とはいえ、オーバーラッピングやインターロッキングなどで長年スウィングしてきたゴルファーがテンフィンガーに変えると、真っすぐ引いて真っすぐ出すという自然な動きがイメージしにくい。そこで、テンフィンガーの両手の間に、「横グリップ」を1本プラスしてみてください。
水色の棒が横グリップ。「架空の横グリップを真っすぐに動かせば…」
「フェース面も自ずと真っすぐ動く」紫のライン
篠塚 左右の手の間に棒を挟んで、その棒とクラブを交差させます(上の写真参照)。棒は地面と平行に。これで構えたとき、クラブが縦としたら、挟んだ棒が「横グリップ」になります。その「横グリップ」の内側の先端が、常に自分を指したまま、ねじらずにハーフスウィングしてみる。真っすぐ引いて真っすぐ出す動きが、目と体で理解できます。
横グリップでねじれないスウィング
── 真っすぐ引いて真っすぐ出せるようになると?
篠塚 両手一体型のグリップだと、インパクトで球を「点」で叩こうとします。そのタイミングが少し狂えば、方向性は定まりません。しかし、テンフィンガーによる、真っすぐ引いて真っすぐ出すスウィングだと、力まず、長いインパクトゾーンの「道」で球をとらえられます。
【篠塚ノート】横グリップが道を走るとヘッドも道を走るイメージ
── 「点」より「道」。確かに確率が高まりそうな気がします。
篠塚 しかも、先ほどの「横グリップ」は、実はヘッドの先端と同じ方向を向いています。「横グリップ」が道を走れば、その遥か下に位置するヘッドもまた、同じ道を通過しています。
【横グリップポイント①】右手は手のひら側に折れる
【横グリップポイント②】左右のひじは曲がり、わきは開く
篠塚 ヘッドの動きが簡単にイメージできるのも、「横グリップ」の利点。現実にはない架空のグリップですが、これを頭に叩き入れ、ねじらないように振るだけで、スウィングが激変するのです。
体にやさしいから、心にもやさしい
篠塚 ぜひ「横グリップ」をイメージする練習を繰り返し行い、頭と体に覚え込ませましょう。
── ところで、篠塚さんのクラブのグリップ、妙な凹み方をしています。
篠塚 これは、両手の親指をグリップに沿って伸ばさず、テンフィンガーで握っているからできた凹み。テンフィンガーの素晴らしさは、ケガをしないこと。グリップがこんなになるまで、体に染み込ませて研究してきましたが、それでも手が痛くなることはなかった。
篠塚 私は、若い頃にインターロッキングで親指を痛めて苦しみ、ゴルフを辞める一歩手前までいきました。テンフィンガーが当たり前の時代が来れば、世界中の指を痛めたゴルファーを救うことにもなります。
「横グリップ」をイメージするのが早道だ!
【ドリル1】スプリットハンド打ち
篠塚 両手を離して握ると「横グリップ」のイメージを再現しやすくなります。ボールを打つと、腕をねじったりわきを締めると上手くいかないのがよくわかります。
【ドリル②】ヘッド持ち振り
篠塚 ヘッドを持って素振りをしてみましょう。ヘッドが「横グリップ」の役割をし、繰り返し振ると、“道”が見えてくる。その道に沿って「横グリップ」を走らせる感覚で、何度も振ってみるのがポイントです。
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