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【世界基準を追いかけろ!】Vol.99 “飛距離規制”が現実になったらツアーは技術力の勝負になる

目澤秀憲と黒宮幹仁。新進気鋭の2人のコーチが、ゴルフの最先端を語る当連載。回も前回に引き続き、R&AとUSGAから提出された飛距離を抑制するための提案書について議論していく。

TEXT/Masaaki Furuya ILLUST/Koji Watanabe

前回のお話はこちら

GD もし『R&A/USGA研究トピック――関心のある分野』(※1)の内容通りの数値にルールが改正されたとしたら、今後のゴルフ界はどのように変化すると考えられますか。

黒宮 基本的なスウィング自体はあまり変わらないんじゃないかと思うんですけどね。変わるとしたら、キャスト(リリースを早める)させる打ち方は出てくると思いますよね。硬めのシャフトを入れて、キャスティングしながらなおかつロフトを立てて、ヘッドを開閉させて、飛ばないボールでも飛距離を出すようにします。

X パーシモンのドライバーとバラタボールの時代の人は、そうやって打っていましたよね。

目澤 ドライバーの反発が出ないならフェースの開閉を上手く使えないと飛ばないですからね。

GD プロはヘッドの開閉のタイミングをアジャストできても、アマチュアはタイミングが合わないから難しくないですか。


黒宮 でも昔と違うのは、今の時代はギアーズなどのスウィングを解析できる機器がありますからね。

X なるほど。パーシモン時代にはなかったギアーズがあるわけですから、本当に効率が良いスウィングがわかるかもしれない。

黒宮 必要な球種は増えると思いますね。180ヤードをドローで打ったり、170ヤードはフェードで打つ。そのような打ち分けがプロに求められるスキルになってくる。ですから、フェース面の動かし方や、体の動かし方に長けた選手が上位に来るでしょうね。

X ドラコン世界一のカイル・バークシャー(※2)が300ヤードくらいしか飛ばない設定になるわけですよね。そうなると、これまでのPGAツアーでは300ヤードを超えている選手が賞金の7〜8割を獲得しているという状況でしたが、それもガラリと変わってきますよね。

目澤
 技術面での優劣を争うようにシフトしていくでしょうね。

GD 飛距離争いを、ひとまず落ち着かせるということですね。

X デシャンボーが隣のホールに向かって打つというマネジメントを公表したら、主催者サイドが翌日には、そのエリアをOBに設定してしまうくらいですからね。

目澤 
メモリアルの11番ホールですね。

黒宮 でもそういう怪物を中心にしてルールを考えるというのはどうなんでしょうね。

X 220ヤードしか飛ばないアマチュアにまで同じ設定を仕掛けたら、ゴルフをやめてしまう人も出てきますよね。

GD その辺は、R&AとUSGAも、『より遅いスウィング速度の飛距離の出ない人たちへの影響を最小限とする』という姿勢で考えているようですけれどね。

X いずれにしてもウェッジやパターのウェイトが大きくなる。

黒宮 となると石川遼みたいな選手が活躍できる。彼はスピンをかけさせたらメチャ上手いですから。

GD この「関心のある分野」に対する業界関係者からの意見を9月2日に締め切り、その後、本格的な調整に入るようです。

(※1)2021年2月1日 に『R&A/USGA研究トピック-関心のある分野』という文書が公表された。概要は、伸び続ける飛距離に対する歯止めのルール作りと、用具に関する規制についての取り組みに関して、その研究・実験過程の中間報告である。その内容は『ボール初速』、『ドライバーのスプリング効果』、『ドライバーの慣性モーメント』の3項目のテスト基準や規定の変更に関するもの (※2)北テキサス大学のゴルフ部出身。17年からドラコン競技に参戦。競技でのパーソナルベストは492ヤード。ボールスピードの世界記録、時速233.4マイル(=104.3m/s)も保持

目澤秀憲

めざわひでのり。1991年2月17日生まれ。13歳からゴルフを始め、日大ゴルフ部を経てプロコーチに。TPIレベル3を取得。2021年1月より松山英樹のコーチに就任

黒宮幹仁

くろみやみきひと。1991年4月25日生まれ。10歳からゴルフを始める。12年関東学生優勝。日大ゴルフ部出身。淺井咲希、宮田成華、岩崎亜久竜らを指導

X氏 目澤と黒宮が信頼を置くゴルフ界の事情通

週刊ゴルフダイジェスト2022年8月23・30日合併号より