【ゴルフはつづくよどこまでも】Vol.91「擬音がいちばん伝わる」
高松志門の一番弟子として、感性を重んじるゴルフで長く活躍を続ける奥田靖己。今週もゴルフの奥深い世界へと足を踏み入れていく。
PHOTO/Tsukasa Kobayashi
僕はよく擬音を使います。「チョン、パン、スカーン」なんて。
ボールというのは、カコンッて打ったらチョン、チョン、チョンチョンといくわけです。スパーンと打ったらスパーンといく。カーン言うたら、ピョーン、チョチョッと止まるの。どんな球を打ちたいかで、ヘッドの入れ方が変わるイメージです。
昔の人は、たとえばバンカーにスパーンと一発で落とすとか、ジワッと落とすとか、全部に音のイメージがあると思います。
逆に言えば、擬音がいちばん伝わるんですよ。もうちょっと赤ん坊をソオッと抱きなさい、という擬音って、すごくわかるでしょう。でも、この右の2本指はこうして、左の指はこうして、ひじはこうして抱いて……と言うても、確かにその形はできるかもわからんけど、ソオッと抱くのに、右も左もないという話です。
皆さんも、一緒に回っておる人が上手くて、それを、「あの人はビチーッと打ってました」とか、「なんかチョーン、チョンッと打つんだけど上手いんです」と擬音を使うでしょう。「あの人はここにこう上げるから上手いです」なんて言わない。逆に下手な人には「なんかガチガチになって打つ。あの人やばいですよ」って言いますよね。
どんなマニュアル本よりも、擬音のほうが上やと、僕は思います。でもやっぱり、ここでこうして、ここでこの角度で、ここまで持ってきて、こういう感じで、ここからこうリリースしろとか、具体的に言われたほうが、アマチュアの人はわかると思ってるんですよ。
人間って、絶対AIより上ですから。60兆の細胞で、感じるわけです。
擬音っていうのは感覚がいちばん出せるものなんです。こういう球を打ちたいから、そういう表現の仕方をしてるんやな、ということが瞬時にわかります。だから擬音がわからん人は、まだそのレベルにきてないということです。
感覚は、ゴルフを一生懸命やったら鍛えられます。頭でわかったと言うてる人はほとんどわかってない。わかったかどうかは感じてるもんやから。だからブンブン振ってヘッドスピードを測って、41とか48とか、その数字は確かですけど、自分で速く振れていることを感じてるかどうか。そっちのほうが大事です。
「こういう球を打ちたいから、そういう表現の仕方をしてるんやな、ということが瞬時にわかるようになるとエエです」
奥田靖己
おくだせいき。1960年、大阪生まれ。93年日本オープンなど6勝。シニアで2勝。ゴルフの侘び寂び、温故知新を追求する
週刊ゴルフダイジェスト2022年8月9日号より