頑固おやじのクラブ工房Vol.17 振り切れる限界の重さってどこで判断?
少し前、ダスティン・ジョンソンや石川遼選手が60㌘台のシャフトを入れてることが話題になったことがあるけど、「重さ」ってやつはじつに厄介なんだ。「力がある人は重いもの」っていうのは過去の話だね。通勤GD「頑固おやじのクラブ工房」 Vol.17
シャフトの重さを選ぶときの基準は?
よく「軽すぎるクラブはダメ。振り切れる範囲でなるべく重いものがいい」と聞きますが、その限界の重さは、どう判断したらいいんですか? また、それは総重量? シャフトだけですか? (41歳・HC13・会社員)
Q、“振り切れる”とは
重さだけでは決まらない
「オヤジさん、シャフトの重さってどう選べばいいんですか? 軽すぎると良くない、振り切れる範囲で重いほうがいい、とよく聞くんですが、それってなに判断です?」
常連さんの紹介で、最近顔を出すようになった中古車屋の雇われ店長さんだが、メカ好きらしくちょっと理屈っぽい。
「なあ、シャフトが重くて振り切れない、なんて感じたこと、実際にあったかい?」
「ウーン…。言われてみれば、アイアンは『ダイナミックゴールド』ですし。となると、ドライバーももっと重いシャフトでいいのかな…」
「逆だよ。軽すぎ、長すぎのほうが振り切れなくなる。打ちにくくなる、て言ったほうがいいかな」
奴さん、キョトンとしたね。
「エッ、そうなんですか」
振り切れる範囲で
軽くて硬いシャフトがいい
「軽すぎて挙動が不安定になるほど、しっかり振れなくなる。そこが人間とマシンの違うところなん
だな。だから、オイラに言わせれば、振り切れる範囲でなるべく軽くて硬いシャフトを選ぶ、てのが
オススメ。そのためにこそ、重さだけじゃなく剛性分布とかトルクとかが大事になってくるんだよ」
軽いシャフトは
剛性分布がカギに
9番アイアンで考えてみようか。シャフトが120㌘台の『ダイナミックゴールド』だと振り切れない?
そんなことないのは長さが短いから。では50㌘台のカーボンなら? ラフで当たり負ける? イヤイヤ、女子プロでも当たり負けることはない。要はシャフト長さに応じたヘッド重量がしっかりあれば、シャフトは軽くてもまったく問題ない。
「でも、手打ちになるとか、捻転が小さくなるとか言いますよね」
「それは振る人間の問題。だから最近は飛ばしのトレーニングで、重い棒と軽い棒を交互に振ったり
するよな。あれは、重い棒で力の出し方を促して、軽い棒でそれをスピードに換えるのがミソ。これ
ができればクラブ自体は軽くていいんだよ」
ただし、軽いシャフトは剛性が出しにくい。重いヘッド挙動を安定させるのが難しくなる。
「軽くて長いシャフトはしなるし、捻じれる。かといってガチガチに硬くすると、今度は手首や腕でヘッドの挙動を吸収しようとして、振りにくくなる。いわゆる“軽・硬”だな。適度なしなりとトルクを持たせつつ、剛性を出して復元力を高めると……値段がグッと高くなるし、モデルが複雑に増えるんだな、コレが」
「剛性の低い軟らかいシャフトは、どうなんですか」
「短いと振りやすいぶん、初心者や非力な女性に合う。後はリズム重視で振れる、女子プロのような上級者向けかな」
パワーヒッターは重いシャフト、というのは昔話。男子プロが60㌘台カーボンに移行した時点でシャフトの重さは必要ないことがわかるはずだ。
「ということは、将来的にはプロも40㌘台とか、使うようになるんですかね?」
「メーカーが、剛性分布がしっかりしたシャフトで振りやすさを開発できれば、絶対に移行するよ。
ドライバーが300㌘もあったの? なんて言い出すプロが出てくる時代になるんじゃないかな」
月刊GDより(イラスト/コーチはじめ)