【名手の名言】ホレス・ハッチンソン「ゴルフにレフェリーはいない」
レジェンドと呼ばれるゴルフの名手たちは、その言葉にも重みがある。ゴルフに限らず、仕事や人生におけるヒントが詰まった「名手の名言」。今回は、全英アマを連覇しながら作家としても多くの著作を残したホレス・ハッチンソンの言葉を2つご紹介!
ゴルフにレフェリーはいない。
プレーヤーはみずからがレフェリーであって
すべての問題を採決し、処理し
責任をとらなければならない
ホレス・ハッチンソン
ゴルフが、他のスポーツと一線を画するのはまさにこの一点だろう。
ゴルフに審判はいない。自分が唯一の裁定者である。よって自分に厳しさが求められるのは当然だろう。だからルールでどちらだろうと迷ったところがあれば、自分に不利なほうに判断するのがルールの基本的精神である。
例えば、ラフで枯れ葉などのルースインペディメントを取り除こうとしたときに、ボールが「動いたように見えた」とする。実際に動いたかどうかは定かではないが、誰も見ていなけば自分で判断するほかはない。こんなときは潔く「動いた」と申告してしまったほうが、あとあと良心の呵責に苛まれることもないだろう。
大きな試合では特別に審判がつくが、これはプレーヤーから疑義が出たときに採決を与えるためで、プレーヤーを監視するためではない。
これが他の競技と違うところで、ルールの判断は性善説に拠っている。ゴルフという競技のもっとも誇っていい特色といえるだろう。
この言葉は、ハッチンソンが数多く残した著書のなかの1冊『アスペクツ・オブ・ゴルフ』に出てくる一節である。
アリストテレスとシェイクスピアが
ゴルファーでなかったのは真に遺憾
ホレス・ハッチンソン
全英アマを1886年、87年と連覇してプレーヤーとして十分に“名手”なのだが、“ゴルフ作家”として扱われるのを好んだハッチンソン。
「アリストテレスとシェイクスピアがゴルファーでなかったのは真に遺憾」という彼の言葉は何を伝えたかったのか。
ご存知のように、アリストテレスは古代ギリシャの哲学者であり、生物学者。またシェイクスピアは人間の心理をあますところなく描写、抽出した劇作家である。
この2人がゴルファーでなかったのは遺憾と語った理由は、「ゴルフほど人間の心理をありのままにさらけだすゲームは他にないからだ」とハッチンソン。
もし2人がゴルファーであったなら、今に残る足跡をさらに上まわる偉大な業績を残していたに違いないという、ハッチンソンのゴルフ作家らしい逆説なのであろう。
■ホレス・ハッチンソン(1848-1909)
1886年、87年と全英アマを連覇したが、それより史上最もゴルフの本を書いたチャンプとして知られる。ゴルフ誌最初のベストセラー「Golf」の編纂者としても有名。大英図書館に残る著作は39冊を数えるが、実はまだ20冊は残っているといわれる。全英アマチャンプと呼ばれるより、ゴルフライターと扱われるのを本人も好んだ。