【ゴルフはつづくよどこまでも】Vol.88「自然治癒力を信じよう」
高松志門の一番弟子として、感性を重んじるゴルフで長く活躍を続ける奥田靖己。今週もゴルフの奥深い世界へと足を踏み入れていく。
PHOTO/Yasuo Masuda
人間には自然治癒力いうのがあります。風邪は自然に治るでしょう。ゴルフも一緒。最近それがようやくわかったんです。一生懸命何かをしよう、薬をベタベタ塗って何とかしようと思う。それが上手くいかない原因です。
ジーッとね、ただ単純にポーン、ポーンと打ってたらね、今の自分がわかるようになってくる。そうするとね、ズレがわかる。それで次の球が少し改善されるように人間いうものはできとります。何も考えんでもやるんですよ。1回石でつまずいてこけたら、しばらくは下見て歩く。それと一緒なんです。何かをやろうとするからどんどんはまっていく。
とはいえ僕もなかなかできへんのです。やっぱり、今すぐようなりたいから。自然治癒は待たれへん。すぐに効く最高の薬がほしいんですよ。
結果を出したいから何かを足さないといけない。必ずみんなそうやってます。頑張るんです。You Tube見て、参考書買って。あの人がこう言うたからこの教えを守ろうとか。今回はこの流儀、とやるんです。
でもね、たとえば無人島に3年ぐらいおったらごっつい上手くなると思う。何の情報も得られないから。風とか湿気とかの対応力はつくやろうし、今日の芝は濡れてるからこうしてみようかとか、そんなことも少しずつ覚えていく。
僕はよく、「感覚派」と言われます。もちろん感覚でやりたいんです。ものすごい希望してるけれども、なかなかできない。僕はどんくさいんですよ。
たぶん、すごく突き詰めるタイプなんです。だからもうすごい悩みも深い。夜も寝られへんくらい悩みます。夜中の3時ごろ、「あれ、これちゃうか?」って思ったら、素振りしてるときありますもん。今でもです。
「一芸は百芸なり」という言葉があるんですけどね。一ついけたら全部できるんです。ゴルフも一緒です。一つがわかったら全部ができる。その一つが難しい。やっぱり突き詰めていくと、あれもこれもとやりたくなるけど、もうとにかく、ポーンと振りたいだけなんです。それがなかなか……死ぬまでに間に合うんかなあ、と思いながらやっております。
ポーンと振りたいだけです
「すぐに突き詰めてあれもこれもとやりたくなる。本当は一つできればいいんです」
奥田靖己
おくだせいき。1960年、大阪生まれ。93年日本オープンなど6勝。シニアで2勝。ゴルフの侘び寂び、温故知新を追求する
週刊ゴルフダイジェスト2022年7月19日号より