【スウィング解説】五輪金へ準備万端! 畑岡奈紗「パワーの源はフットワーク」
PHOTO/Hiroyuki Okazawa
昨季は日米で3勝、2020年は開幕から連続2位に入るなど、好調の畑岡奈紗選手。世界ランキング1位、メジャー優勝、五輪金メダルと、期待がかかる彼女のスウィングをプロコーチ・井上透がじっくりと分析する。
畑岡奈紗
1999年1月生まれ。茨城県出身。2016年、17歳で日本女子オープンにアマチュア優勝を果たし、プロ入り。米ツアーを主戦場として、ここまで米ツアー3勝。日本では通算5勝、うちメジャー4勝と大舞台の強さを見せている
脚の伸展動作で
パワーを引き出す
2020年、米ツアー初戦から連続で2位に入るなど、上々の出だしを見せた畑岡奈紗選手。そんな彼女の最大の特徴は、重心の上下動に腕の振りを同調させてスピードを出すところにあります。
近年は体の回転を重視するプレーヤーが増えましたが、それとは一線を画す、脚の伸展動作を出力にしたクラブワークが持ち味のスウィングと言えるでしょう。
回転を重視したプレーヤーの場合、切り返した直後に、両ひざが目標方向に向き始め、インパクトでは腰がほぼ目標に向きます。
しかし、畑岡選手の場合、切り返した直後の両ひざは正面を向き、インパクト時にも、腰が目標に向いていません。これは、体の回転を抑えている証拠です。
トップからインパクトにかけての下半身にも注目してください。切り返し直後、屈曲した両脚が、インパクトではピンと伸びていることがわかります。
これは、脚の伸展動作によってパワーを引き出している証拠。この動作こそが、小さな体で大きな飛距離を生み出す秘密なのです。
2016年のスウィング
2020年のスウィング
プロデビューした2016年のスウィングと比較すると、現在のほうがわずかにスタンスが広い。トレーニングの成果が体つきに現れ、パワフルで安定感のあるスウィングになっている
ニュートラルなトップになり
動きが洗練された
畑岡選手の場合、ジュニア期には、トップでクラブがクロスし(クラブが目標の右を指し)、その反動によってクラブがインサイドから下りて、ドローが強くなる傾向がありました。
そのため、彼女はニュートラルなトップに収まる素振りを行う、球筋をフェードに直そうとするなどの修正を試みてきたのです。しかし、現在のトップを見ると、クラブが飛球線と平行に収まり、自然なクラブパスを描いていることがわかります。
これは、「考えて直す」という段階から、「考えずにできる」という段階に移行できたということ。やりたい動きが定着し、無理のないクラブの挙動を獲得できたということでしょう。
メジャーで何度も優勝争いを経験し、スポット参戦する日本ツアーでは、無敵の強さを誇る畑岡選手。そんな彼女が、より洗練された動きを身につけた現在、宮里藍選手以来の世界ランク1位は決して夢ではありません。
加えて、悲願のメジャー優勝、自国開催のオリンピックの金メダルと、3つの大きな目標すべての達成を目指す。2020年はそんな勝負の年になるのではないでしょうか。
解説/井上透
いのうえとおる。プロコーチ。東大ゴルフ部監督。日本におけるプロコーチの草分け的存在。現在、成田美寿々、穴井詩らのコーチを務める。
週刊GD2020年3月17日号より