【ゴルフ“覚醒”のメカニズム】<前編>稲見、西郷、シェフラー…“突然勝ち始める”理由とは?
なかなか勝てなかった選手が、1勝を皮切りに突如として勝ち星を重ね始める。今季では西郷真央やスコッティ・シェフラーが好例だが、最近とくに、こうしたケースが多いように感じる。“覚醒”ともいえるこうした現象はなぜ起こるのか。レベルは違えど我々アマチュアにも起こりうるものなのか。今回はゴルフにおける“覚醒”にスポットを当ててみた。
TEXT/Kenji Oba PHOTO/Tadashi Anezaki、Shinji Osawa、Hiroyuki Okazawa、Hiroaki Arihara、Blue Sky Photos
西郷真央の勢いが止まらない。昨季は2位が7回となかなか勝てなかった選手だが、今季の開幕戦で念願の初優勝を果たすと、なんと出場10試合で優勝5回という快進撃。「堰を切ったように~」という表現がぴったりの勝ちっぷりは、まさに“覚醒”した代表選手といえる。
昨季でいえば、稲見萌寧もそうだ。プロ転向後19年に初優勝を飾り、21年はツアー8勝(20年に1勝)し、その間に東京五輪で銀メダルも獲得。その勢いのまま賞金女王まで駆け上がった。稲見の活躍で印象が薄れた感はあるが、現在米ツアーに参戦、昨季6勝の古江彩佳も覚醒した選手といえるし、昨季5勝の小祝さくらもそうだ。小祝は19年の初優勝まで出場60試合でベスト10が20回という驚異的な成績を出しながらもなかなか勝てなかったが、初優勝後、立て続けに5勝をマークしている。
海外に目を転じると、今年のグリーンジャケットに袖を通したスコッティ・シェフラーも“覚醒者”だ。初優勝はプロ転向5年目の今年2月。それからわずか2カ月、出場6試合で4勝を挙げ、しかも4勝目がメジャーのマスターズ。19年の米ツアー年間王者、パトリック・カントレーも初優勝まで6年かかったが、その後の4シーズンで着実に7勝を挙げている。
今年の全米プロではウィル・ザラトリス、ミト・ペレイラ、キャメロン・ヤング、マシュー・フィッツパトリックの未勝利4人が大会を引っ張った。生みの苦しみを味わっている彼らだが、覚醒の可能性を秘めた選手であることは間違いなさそうだ。
では、覚醒とはどういう仕組みなのか? また、アマチュアにも起こせるものなのか?
「アマチュアにも十分可能性はあります」というのは、小誌でもおなじみ、カリスマコーチの江連忠プロだ。覚醒する選手に共通するのが頭の良さ、達成感のある練習ができること、そして「何よりポジティブに考えられる人です」と断言する。また「大事なのは“自分を知ること”」と言うのは内藤雄士プロ。脳科学者の篠原菊紀氏による解説とともに、幅広い視点から覚醒の正体に迫っていこう。
初優勝から2カ月でメジャー含む4勝
スコッティ・シェフラー(25)
初優勝は今年2月のフェニックスオープン。P・カントレーとのプレーオフを制した。そして1カ月後に2勝目を挙げるとWGCデルマッチプレーとマスターズも制覇。世界ランク1位に上り詰めた
昨季未勝利も今季10戦5勝
西郷真央(20)
昨季は2位が7回。優勝に最も近い選手のひとりに数えられた。だが、今季は開幕から10試合で5勝。まさに覚醒した選手の代表だ
昨季9勝で賞金女王。東京五輪で銀メダル
稲見萌寧(22)
2020-21年の統合となった昨季、強すぎると注目を集めたのが稲見萌寧だ。20年に2勝目を挙げると21年に入り、3~5月で5勝を挙げた。トップ10入りは45試合中25試合とその強さ&安定感は群を抜いていた
>>“覚醒”を引き起こすための条件とは?
- “覚醒”というと、人知の及ばないもののように思いがちだが、練習の意識や心の持ちようにより、“覚醒”が起こりやすい環境を作ることは可能だという。トッププロコーチや脳の専門家に話を聞いた。 TEXT/Kenji Oba PHOTO/Tadashi Anezaki、Shinji Osawa、Hiroyuki Okazawa、Hiroaki Arihara、Blue Sky Photos ……
週刊ゴルフダイジェスト2022年6月14日号より