【世界基準を追いかけろ!】Vol.81「カップインまでの時間、計ったことある?」
目澤秀憲と黒宮幹仁。新進気鋭の2人のコーチが、ゴルフの最先端を語る当連載。パッティングの時にカップインするまでの時間に注目しているという黒宮、その意味について話してくれた。
TEXT/Masaaki Furuya ILLUST/Koji Watanabe
GD 黒宮コーチは最近、パッティングに関することで何か発見があったということですが。
黒宮 目澤君は、パッティングで打ってからカップインするまでの時間を計ったことあります?
目澤 ロングパットならありますかね。
黒宮 プレッシャーのかかるショートパットとかは?
目澤 それはないですね。
黒宮 何でそんなことを聞くかというと、ある女子プロに、エイムポイント(※1)で打ち出しやスピードを合わせて打たせた時に、最初はすごくオーバーしたんですよ。それで、その次はジャストタッチ狙いで打ってもらったんですけど、その時に彼女は「私、今のはカップインの時間を待っていられなかった」と言ったんですよ。それを聞いて、コレだなって思ったんです。
X 要するに、「時間を待つ」ということは、パッティングのタッチの強弱に関係する自分なりの感覚で、「待てない」のは、打つ距離に対して弱めのタッチでジャストインをさせることが、その選手には合わないということですかね。
黒宮 そうです。例えば、最終組で優勝争いをする状況を考えた場合、最終日の最終組は荒れたグリーン面でパットを打たないといけないわけじゃないですか。その時に、絶対に早くカップインしたいと望むんですよ。
X できるだけ荒れた芝に影響されないためにね。
黒宮 そうです。でもそれを例えばジャストタッチのエイムポイントを設定して打ってしまう人は、弱めのタッチとなって次第に入らなくなり、気づけばメンタルが崩壊していくわけですよ。
X 強いタッチで打ちたいのに、普段通りにエイムポイントを設定することで微妙なずれが生じるからですか。
黒宮 そうですね。それで怖くなってしまって、体がいびつな動きをし始める。優勝争いの中でパッティングで崩れていくパターンですよね。
GD なるほど。
黒宮 僕が学生の頃、関東学生の会場はコーライグリーンが多かったので、その場合はロールが出る(転がりのいい)パターを選んでいましたからね。
X 球足が前に強く出るやつ。
黒宮 そう。目によってブレないようなマレットとかにしていました。それは「コーライだから」という理由でやっていましたが、結果的にそれは「カップインの時間を短く」したかったということなんですよね。
GD それで黒宮コーチとしたら、どのような結論を得たわけですか。
黒宮 まず、1メートルのショートパットの練習をする時に、毎回同じ時間でカップインするようにします。それを合わせることで、自分が振りやすいスピードが出てくると思うんです。金谷選手がヒールを浮かせて打つのは、それで自分が振りやすいスピードを出せるからで、それをコーチが探ってやらせるというのは難しい。パットの上手い選手は、そういうのを自分で探って見つけられるんですよね。
※1. マーク・スウィーニー氏が開発したグリーンの傾斜を読むメソッド「エイムポイント・エクスプレスリード」。カップに正対した時に左右の足に対する重力のかかり方を5段階に分け、ラインの傾斜度合いを指をかざして指の本数によって認識。その指の位置に対してボールを打ち出す
目澤秀憲
めざわひでのり。1991年2月17日生まれ。13歳からゴルフを始め、日大ゴルフ部を経てプロコーチに。TPIレベル3を取得。2021年1月より松山英樹のコーチに就任
黒宮幹仁
くろみやみきひと。1991年4月25日生まれ。10歳からゴルフを始める。09年中部ジュニア優勝。12年関東学生優勝。日大ゴルフ部出身。松田鈴英、梅山知宏らを指導
週刊ゴルフダイジェスト2022年4月5日号より