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賞金王はこれで15kg減! “食べていい断食”で体調もスウィングもシャキッと快調

昨季賞金王に輝いたチャン・キムだが、好調の理由のひとつが“断食による減量”だ。スリムになって体が軽くなるのはもちろん、コンディションアップの役にも立ったという。コロナ禍で太ったという人、ゴルフのパフォーマンスアップを目指す人も注目!

解説/青木厚(医学博士)
「あおき内科 さいたま糖尿病クリニック」院長。専門は糖尿病や高血圧、脂質異常症などの生活習慣病。2019年に発売された「『空腹』こそ最強のクスリ」が大ヒット

1日3食では内臓を働かせすぎ

「断食」と聞くとずいぶん辛そうな印象を受けるが、チャン・キムの場合は「何も食べない」ではなく「決められた時間以外は食べない」というもの。どういうことか専門家に話を聞いてみると……。

医学博士の青木厚先生によると「1日3食は食べすぎ」「食べすぎが疲れやすい体を作るんです」とのこと。「ものを食べない時間を作り、空腹を楽しむ。それだけで病気知らずの体が手に入ります」という。減量だけでなく、さまざまな健康効果が期待できるという。

具体的な方法の前に、まずはそのメカニズムを。現代人の食事は高カロリーになりがちで、1日3度の食事で本来必要なカロリー(1800~2200キロカロリー)をかなりオーバーするケースも。すると食べ物がひっきりなしに運ばれてくることで、内臓は休みなしでフル回転し疲れてしまう。結果、内臓の働きが低下し、免疫の低下などにつながることも。さらに、消費するエネルギー以上に食べれば脂肪がつく。とくに内臓脂肪からは悪玉ホルモンが分泌され、慢性炎症状態を引き起こし、がん発症につながる怖れもあるのだ。

また、食べすぎは体を錆びさせる活性酸素を増やすといったデメリットもあり、疲れ、だるさ、糖尿病、高脂血症などの動脈硬化性疾患、脳出血や脳梗塞、狭心症や心筋梗塞など虚血性心疾患、また前述のがんの原因にもなりうる。そして、食べすぎのなかでも、特に問題になっているのが糖質のとりすぎで、これが体のさまざまな不調をもたらす。

そこで「おすすめするのは、ものを食べない空腹の時間を作ることです」と青木先生。これにより「内臓がしっかり休めます。最後にものを食べてから10時間ほどたつと、脂肪が分解されエネルギーとして使われるようになり、16時間を超えると体に備わっている『オートファジー』という仕組みが活発に働くようになります」。オートファジーとは細胞内の古くなったタンパク質が新しく作り替えられるというもの。つまり、16時間の断食でオートファジーを活性化させると、病気を遠ざけ、老化の進行が食い止められるということ。「これが、空腹は最高のクスリ、ということなのです」。なるほど!


具体的なやり方は簡単。1日16時間以上(24時間以上は医師に相談を)空腹の時間を作ること。残りの8時間は何を食べてもOKだ(下のタイムスケジュール2パターンを参考に)。16時間というと長く感じられるかもしれないが、睡眠時間をうまく組み込めば意外と簡単にできる。8時間睡眠の人なら、プラス8時間、ものを食べなければいい。

【16時間断食のタイムスケジュール例】

【パターン1】夜間に空腹の時間を作る

空腹を感じる時間をできるだけ短くしたい人や、夕食を比較的早く食べられる人向け

【メリットや注意点】
サーカディアンリズム(体内時計)に即しており、体への負担が少なく、アンチエイジングや病気への予防効果がより高まる。空腹の時間に睡眠時間を組み込むため、無理が少ない

【パターン2】昼間に空腹の時間を作る

朝食を食べないと午前中の仕事に支障が出る人、残業(夜勤)が多く夕食を食べるのが遅くなりがちな人向き

【メリットや注意点】
昼食を食べないことで眠気を感じにくくなり、仕事の効率アップにつながる。昼食代の節約にもなる。朝は食べても食べなくてもいいが、ご飯や麺、パンなどを食べると昼間の空腹感が強くなる。朝食を食べる場合は、できればサラダや卵料理、肉、魚など、タンパク質中心の内容にする

また、16時間内で、どうしても空腹を我慢できなければ、ナッツ類(できれば味付けなしの素焼きのもの)なら食べてもいい。

ナッツ類は古代人が主食にしていたもので、特に味付けされていない素焼きのナッツは低糖質なうえ、良質な脂肪も含まれている。少量で満足感を得やすいのも特徴だ。ナッツが苦手だったりアレルギーがあるという人は、生野菜サラダ、チーズ、ヨーグルトなど、ご飯や麺類、パン、肉といった“食べものの塊”でないものなら食べてもかまわないが、これらは基本的に「空腹力をつける」(長時間ものを食べない生活に慣れる)ためのもの。空腹力がつくに従い、ナッツなどをちょこちょこ食べたり、それ以外の時間にドカ食いしたりすることがなくなってくる。


チャン・キムは半年で15kg減!
「“断続的断食”で痩せて、体の調子も良くなりました」

2021年4月の国内開幕戦、東建ホームメイトカップで予選落ちしたキムだが、調子は尻上がりで、見事初の賞金王に戴冠。陰にあったのが“減量”だ。キムが実践したのはインターミッテントファスティング(断続的断食)。具体的には「食事をとる時間を13時~19時の間だけにし、それ以外の時間は水とブラックコーヒー、お茶しか飲まない」というもので、食事の内容は特に制限しなかったという。それでも、1カ月で4キロ減。体調の良さを感じたため、その後も継続し、勝負の秋には15キロ減。太っていたころは「コースで疲れがたまったり、コンディションが落ちてしまっていた。体重が増えるとケガが重なってしまったりする」と語っていたキムだが、痩せるに従い「賞金王を目指す」と堂々宣言するなどメンタルも好転。減量効果は絶大だったとわかる。


土、日だけでもリセットになる

「毎日、きっちり16時間、空腹の時間を作らなければと必死になりすぎてはいけません。1、2時間なら誤差の範囲。大事なのは、無理せず、長く続けることです」と青木先生。日常生活の中でフレキシブルに対応しながら、この16時間断食がライフスタイルにできればしめたものだ。

しかし、つきあいなどでどうしても設定時間外に食事をとらなければならなかったり、どうしても仕事中は空腹が気になってしまうという人は、まずは、土、日だけものを食べない16時間を作ってみてもいい。「土、日は10時間くらい寝ている」という人なら、あとたった6時間。たとえ週1、2回でも、まとまった空腹の時間を作ればオートファジーは働く。「平日の食べすぎなどによって内臓が受けたダメージを週末にリセットするのもいいですね」

最後に注意点を1つ。この16時間断食をする際は、並行して簡単な筋トレが必要だ。「空腹の時間を作ると1日の総摂取カロリーが減り、体重も減少します。その際、内臓脂肪も分解されますが、同時に人体に必要な筋肉も落ちてしまいます。健康のために空腹の時間を作っても、筋肉量が落ちれば代謝も落ちて逆効果。特に高齢者の方は、体を支えるのも難しくなってしまう可能性があり、危険です」

そこで、筋トレだ。「とはいえ、ジムに通うなど特別なことをする必要はありません。階段の上り下りも日常生活の中でできる立派なトレーニングですし、腕立て伏せや腹筋、スクワットをできる限りやるくらいでも十分です」。過度の運動は、活性酸素を発生させる原因にもなるので、「無理をしすぎない」を合言葉にしよう。

「8時間中なら好きなものが食べられる」「土、日だけでもいい」……これなら、チャン・キムのようなプロアスリートではない私たちでもできそう。「体重がオーバー気味で動きにキレがない」「慢性的な疲れやだるさがある」「血圧、血糖値、コレステロール値が高い」などなど、悩める現代人のお助けになるかも!

※すでに「がん」が体内に発生している場合、空腹が逆効果になる場合があります。医師の指示に従ってください。

階段はもっとも手軽な“トレーニングマシン”。エスカレーターではなく階段を選ぶだけでも立派な筋トレになる

週刊ゴルフダイジェスト2022年3月29日号より