【ゴルフせんとや生まれけむ】ピーター<前編>「二度の家出で身についた“決断力”がゴルフでも生きている?」
ゴルフをこよなく愛する著名人に、ゴルフとの出合いや現在のゴルフライフについて語ってもらうリレー連載「ゴルフせんとや生まれけむ」。今回からの語り手は、タレントの池畑慎之介(ピーター)氏。
20代の頃は人からゴルフに誘われても「あんなオジサンのスポーツ、嫌!」と断っていたんです。それが、33歳の時にミュージカルの『リリーマルレーン』で全国を回っている際に、共演者の近藤洋介さんに練習場に連れていかれ、初めて打ったらまあまあ当たったんですよ。それから始めるようになり、初ラウンドのスコアは「120」。パッティングが良かったんです。近藤さんから「初心者はパッティングで“行って来い”するんだけど、ファーストパットで速いと思ったら返しは遅いと分かるんだから頭が良い」と褒められた記憶があります。40歳で熱海に家を建てた時に、近くにゴルフ場が多かったので、本格的にやりだしました。ベストスコアは8年前に出した「86」。ハーフは「42」で、いずれもハワイでした。
バブル時代には、東京タワーの近くにあった芝ゴルフ練習場(2001年閉鎖)と東京プリンスのプールが「あそこに行けば誰かに会える」というくらい芸能界の社交場でした。球を打ってレストランで食事したら、ラウンドしたほうが安く上がるんじゃないかって思うくらいしたね(笑)。でも、私はあまり行きませんでした。というのも練習であまり力を使いたくなくて。
皆さん、ラウンドの1時間前に行って練習場で球を打ちますけど、私は体力がもったいないからやりません。打つ前の素振りも2回まで。これは体力温存以外に、あるプロからの「ボールの前に立ったら5秒以内で打つ」というアドバイスとも関係するんですけどね。アドレスに入る前にショットのイメージを作っておき、構えたらそのイメージが消えないうちにサッと打つことが大事、だから素振りは2回まで。打つ前にイメージが決まらない人は、構えてからもせわしなく素振りを繰り返し、挙句の果てに固まってしまい、打ったらミスショットになりがちでしょ。ゴルフは決断力が大事というわけです。
実は私、皆さんが思っているより男っぽい性格(笑)。なんでも自分でパッと決断を下すタイプです。だって、人に言われて失敗したら、その人のせいにしたくなるでしょ。それが嫌なんです。ゴルフも自分で決断して打ったなら、結果がダメでも仕方ないと思えるじゃないですか。
私は、二度の家出によって自分に決断する力が身についたと思っています。小さい頃から父(和舞の人間国宝、吉村雄輝氏)に、吉村流の家元になるべく道を敷かれた私は、自分の意志と関係なく走らされるトロッコみたいな人生は嫌だと思っていました。当時、雑誌などで見る刺激的な東京への憧れもあって、中3と高1の時に2度の家出をしたんです。後に母は「自分はこっちに行きたいというのはあなたの勝手。だから今後は溺れようがケガをしようが知りません。あなたは好きな道を行きなさい」と言ってくれました。その後、私はその都度の自分の決断で人生のかじ取りをしてきました。ゴルフでもそう。決断が早くプレー時間が短いから、熱海に住んでいた若い頃は、午前はゴルフで午後からはサーフィンというように、1日で2度も人生を楽しむということができたんですから。
池畑慎之介(ピーター)
いけはたしんのすけ。1952年大阪府生まれ。69年「夜と朝のあいだに」が大ヒット。歌手「ピーター」、俳優「池畑慎之介」として第一線で活躍が続く。2月23日に『SHINNOSUKE~ひとり唄~』をリリース
週刊ゴルフダイジェスト2022年3月15日号より