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【リズムを極める】内藤雄士編「下半身リードがリズムをつくる」

プロはよく、スウィングでは「リズム」が一番大事と言うが、なぜリズムが大事なのか、どんなリズムが理想的なのか、いいリズムを作るにはどうすればいいのか。プロ・アマ問わず指導経験豊富な5人のコーチに話を聞いた。

PHOTO/Blue Sky Photos

解説/内藤雄士

丸山茂樹の米ツアー3勝をはじめ、数多くの優勝をサポートしてきたプロコーチの第一人者。現在は若手の大西魁斗のコーチも務める

ワン『&』ツーのように間があったほうがいい

ゴルフスウィングは、下半身から上半身への連動があって、その上下の捻転のなかで、下半身リードで動き出します。ブランコが揺れの頂点で一瞬止まったようになり、また下へと下りていく動きですが、その体のねじれはエネルギーの貯蓄ポイントで、そこからエネルギーが解放されていくポイントがブランコの頂点。ねじってエネルギーを貯め、エネルギーを解放することを司るのがリズムです。

僕たちがレッスンしていて、たとえばスライスを直すとかなら物理的に教えられますが、この下と上の連動性みたいな部分は、教えて習得してもらうのがとても難しい。どうしても上半身優位で振ってしまうのがアベレージゴルファー。下半身リードとスウィングリズムは直結していると言えます。そういう意味では、リズムだけ意識して練習してもらうと、上達が早くなるだろうと思えるアマチュアの人はたくさんいます。


トップで一瞬止まるように見える松山英樹だが「別に止まっているわけではなく、本人も止めている意識はないはず。下のほうからジワジワジワと動いているからそう見えるだけ。アベレージゴルファーと決定的に違う部分です」

デビッド・レッドベターが教える「ワン&ツー」というリズムの「&」なんかは、ねじれ差だったり、ブランコの頂点だったり、その動きが「&」だと思うんです。

プロたちは、ねじれ差が勝手にできるので「ワン、ツー」でもいいし、その間に自然と「&」が入ってもいいですけど、単純にアマチュアの人が「ワン、ツー」でやると、右肩がかぶる「ワン、ツー」になって、いわゆるドアスウィングの形になる。だから、やはり「ワン&ツー」のように間を取らせたほうが、クラブをインサイドから下ろしやすくなると思います。

子どものころからゴルフをやっている人たちには、「粘って、粘って、粘って」インパクトみたいな感覚がある。あまり腕力がない時期にスウィングを作るとそうなるものです。ところが大人になってゴルフを始めた人は、どうしても腕力でクラブを振ろうとしてしまう。それを修正してくれるのがリズム感の習得です。

イヤホンでピッ、ピッというメトロノーム音を聞きながら、それに合わせて振ってもらうレッスンをしても、アマチュアの多くが合わせられないのは、リズム音痴ではないかと思ってしまうほど。体のねじれ差がないので、リズムに乗れない。どうしても手が先に先にといってしまう。それぐらいリズム感と体のねじれ差は関連しています。逆に言えば体のねじれ差ができている人は、リズムさえ狂わなければ、ショット、アプローチ、パットのすべてが上手くいくということです。

昔、平塚哲二プロがABC選手権の予選をトップ通過したときに、記者会見でバイザーに取り付けた小さなメトロノームで練習をしている話をしました。「1分間に80回のリズムに設定し、1回目のピッという音でスウィングを始動、2回目のピッでダウンスウィングへ切り返し、3回目のピッでフィニッシュを取る。本戦ではアドレスから何も考えずにリズムよく振っていければ、正しいスウィングができると思い込んでいました」

一般アマチュアは60ビートぐらいが適正ではないでしょうか。1分間のビートが平塚プロの場合80回ですが、総じてプロはビートが速く、真似ようとしてもアマチュアの人は体の回転がついていけない。もし参考にするならもっとヘッドスピードが遅い女子プロのほうがいいと思いますよ。

リズムが狂わなければ寄る

アプローチ巧者の丸山茂樹。「バイロン・ネルソン優勝時も、上がり数ホールはリズムさえ狂わなければ絶対に寄ると確信していたそう。キャディにもプロが『イチ、ニイ、サン』と声に出してリズムを刻んでいたのが聞こえたそうです」

週刊ゴルフダイジェスト2022年3月15日号より