【ゴルフせんとや生まれけむ】 秋山博康 <後編>「リーゼントにはハットが合います」
ゴルフをこよなく愛する著名人に、ゴルフとの出合いや現在のゴルフライフについて語ってもらうリレー連載「ゴルフせんとや生まれけむ」。今回の語り手は、前回に引き続き元警察官の秋山博康氏。
私が考えるゴルフの面白さのポイントは2つあります。1つは飛距離。数ある球技のなかでアマチュアが200ヤード300ヤードも球を飛ばせるスポーツはゴルフしかありません。手で投げてもそんなに飛ばないですよね(笑)。ドライバーでナイスショットしたときの爽快感は格別です。
もう1つはド素人でも奇跡みたいなまぐれがあるということですね。グリーンサイドのバンカーから打ったショットがチップインしたり、10m以上の長さがあって、しかもラインが複雑なロングパットを沈めたりと、その時はまさに天にも昇るような快感ですよ。そういうことがあるから、いくらスコアが悪くてもまた来ようと思っちゃうんですよね。
私はクラブやファッションにはこだわりがありません。道具や格好より腕だと思っていますから。ただ唯一気にしているといえば帽子ですかね。何しろ私は高校時代から永ちゃん(矢沢永吉)に憧れ、警察学校に在籍していたとき以外は徹底してリーゼントスタイルを通した「リーゼント刑事」ですから、せっかくのリーゼントが乱れてしまう(笑)と、プレー中には帽子をかぶらなかったんですよ。でも、真夏のある日、熱中症になりかけてしまい、さすがに「これはいかん」と、それ以来、大きめのハットをかぶるようになりました。大きめなら髪がつぶれません。そして髪も大事ですが、命はそれ以上に大事ですからね(笑)。
さて、前回お話しした通り、35歳で私はゴルフを一時やめました。当時、私は徳島東警察署刑事一課の係長だったのですが、プレー中に3回続けて、しかも朝スタートしてすぐに署から呼び出され、帰らなくてはならないことがあったんです。いくら練習してもスコアが伸びなかった時期、しかも立て続けに凶悪事件が起こる……これは「やめろ」ということかなと。その後は警視庁に出向になり、しばらくは仕事一筋の毎日でした。
ゴルフを再開したのは52歳のときです。管理職になって現場に出ることも減り、基本的に毎日夕方6時には署を出られるようになったことがきっかけでした。ほかに趣味もなく、最初は子どもたちに武道でも教えようかなと考えたものの、50を過ぎてから空手や柔道をやるのもキツイなあと思ったとき「そうだ、ゴルフがある」とひらめきました。
やり始めた頃からレッスンプロに習ったこともなく、当時は寝る前に毎晩、中嶋常幸さんのレッスンビデオテープを見ていたくらい。DVDじゃなくてVHSね(笑)。でも、今はYouTubeがあって「バンカーショットの打ち方」とか、検索するとすぐにプロのレッスンが見られる。時代は変わりましたね。それを参考にしながら必死に練習した甲斐もあってか、4、5年前に82というベストスコアも出ました。もうこれ以上は上手くならないかもしれませんが、一度は70台で回りたいですね。
最後に、これはゴルフとは関係ないことですが、年末年始は犯罪が増える時期です。自分は関係ないと思わず、事件や事故に巻き込まれないよう十分お気をつけください。
秋山博康
1960年徳島県生まれ徳島県警で42年間勤め上げ31年間は刑事。「おい! 小池」で有名な事件の総指揮官。愛称は「リーゼント刑事」。現在は犯罪コメンテーターとして活躍中。ベストスコア82
週刊ゴルフダイジェスト2022年1月4日号より