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【林家正蔵の曇りのち晴れ】Vol.274「遠い知人とゴルフ」の巻

つい先日、友人の友人のそのまた知人の方が一緒にゴルフをしたいとのことで、ラウンドの約束をしたんです。でも、ちょっと気がかりなのが、僕自身がすごく人見知りなところ。落語家なら社交的なんじゃないの?と言われることも多いのですが、社交的なのはごく一部なんです。いわゆるシャイボーイの集まりですね(笑)

ILLUST/アオシマチュウジ

前回のお話はこちら

落語家といえども実はシャイボーイ

つい先日、「どうしても師匠と一緒に回りたいという知人がいるので、ご一緒してもいいですか」と友人の友人が連絡をしてきた。

整理すると、私の知っている仲のいい文具メーカーの社長の知人(僕の知らない方)のそのまた友人が一緒にゴルフがしたいとのことだった。さぁー困ったことになってしまった。

私はどちらかというと社交性のかけらもない性格。よく落語家さんだから、どんな人にもニコニコして愛想よく、明るく元気に会話を盛り上げてくれる。そしてあまり知らない人とでもすぐ友だちになるという、いわば妄想をお持ちの方が世間にはよくいるものだ。

落語家の仲間のなかには、たしかにそういう人もいるのだが、そんな社交的な人は、はっきり言ってごくわずかで、私の知っている限りでは、高座ではよくしゃべっているが、楽屋ではむっつりと黙り込んでいる人や、人見知りの激しい人もいる。

どちらかというと、私は「シャイですね」と初めて会う方に言われることがほとんどだ。

アメリカに留学していた友人に言わせてみると「シャイ」というのは、褒め言葉ではないという。つまり、友好的でない! とか、社交性や協調性に富んでおらず、自分のキャラクターを人に上手く伝えることができない変わった人、ということになる。

言われてみれば、アメリカ人であまり、むっつり黙り込んでいる人を見たことはない。映画や舞台なんかでは、そういうキャラクターは、変人扱いをされたり、どうかすると殺人をしたり、犯罪者だったりする。

でもね、そうかもしれないが、やっぱり初対面から感じよく振る舞うことができればいいんだろうなぁーと思ってはいるが、それができない人間だっているということは理解してほしい。

私もできる限り、「師匠ー」とか「林家さん、こんにちは」と言われれば、笑顔で挨拶することぐらいの常識はわきまえているつもりだ。

しかし、ごくまれな出来事にはなるが、肩をパンパンと叩かれたり、隣に座りこんできたり、どうかすると自分の食卓の席まで手を引っ張って「ほらほら、知っているだろう。この方は落語家さんなんだよ」なんて振る舞いをされると、泣きたくなることもある。


見習いたいのは女子プロの気の強さ

以前のプロアマでラウンドしていたときのことだが、ギャラリーの方が、私と回っている女子プロのファンで、「俺、めちゃくちゃファンなんだよ」とこともあろうに、その女子プロの肩をパンパンと二回叩いた。スタッフの方が「お客さん」と間に入ったが、その女子プロは、ニコリと笑って「ありがとうございます。私もあなたのファンなんですよ」と思いっきり、その知らないおっさんの肩を一回「パーン」と叩いた。

周りの人は「ワァー」と笑っていたが、「気の強い女子プロだなー」と感心した。周りのギャラリーもそのおっさんも笑っていたが、よほど思いっきり女子プロはおっさんの肩を叩いたであろう。叩かれたほうのおっさんは、痛かったと見えて叩かれたところを何度も何度もさすっていた。

その女子プロは、プレーオフでロングパットをねじ込んで優勝を勝ち取っていた。そのぐらいの気の強さがないと、プロゴルファーの世界では勝てないのであろう。

友人の友人の知人もまさかの人見知り

さて、話は戻るが、友人の友人の知人とのゴルフの話は、引き受けることにした。しかし、この場合怖いのがその御人が、反社会勢力の世界の方だったりすると、一緒にプレーしただけでゴシップになったりする。

あるパーティーに呼ばれ、知らなかったとはいえ、写真に一緒に写っていただけで、記事になった知り合いの芸能人もいた。それとなく友人を通して、その人の職業を聞いたら、ミカン農家の人だという。そしてその友人の友人は農協の人で、私の友人はパティシエ。噂によると、とてもおいしいみかんを作る人らしい。

四国の松山で落語会の翌日、ラウンドをしようとセッティングをしてくれた。「まず、その人が育てたみかんを送るから食べてほしい」と愛媛からみかんが大量に届いた。

見た目はお世辞にも綺麗とは言えなかったが、皮をむいた途端、ファーと香りの花が咲いた。ひと房口のなかへ。旨い! 甘味、酸味のバランスがとてもいい。この人なら信用できそうだ。

いよいよゴルフを。当日お会いしたらとても人のよさそうなおじさんだった。回っていても、ニコニコしているがあまり話しかけてこない。気になったので友人の友人に、「気にしなくてもいいですよ。気楽にお話ししてください」と言ったら、友人の友人が「いいんです、あの人は人見知りだから」と。べらべらしゃべらなくとも、無駄な気遣いをしなくとも、いい人ならばゴルフは楽しい!

人見知り しゃべらなくとも いいのかな

月刊ゴルフダイジェスト2022年2月号より