【ゴルフ初物語】Vol.68 日本で初めて賞金“1億円超え”を果たしたプレーヤーは?
2020-21シーズンの国内男子ツアーが終了し、米国のチャン・キムが1億3000万円近くを稼ぎ賞金王に輝いたが、1億円の大台を初めて超えたのは36年前の中嶋常幸だった。
1985年に中嶋常幸が達成
春先のダンロップ国際オープンで最終日に首位でスタートしながらも陳志忠に5打差を大逆転され、翌週の中日クラウンズでも最終日に崩れ海老原清治に逆転負けを喫し、不安なシーズン序盤戦を戦っていた1985年の中嶋常幸。翌週のフジサンケイクラシックでも初日2位と好発進しながらもスコアを伸ばせず3位。あと一歩のところで優勝に手が届かなかった。しかし6月のよみうりサッポロビールで優勝すると、2週後の関東プロでも勝利。後半戦に入ると全日空オープン、日本オープン制し、ビッグマネーの太平洋クラブマスターズとダンロップフェニックスで2週連続優勝。カシオワールド終了時で年間獲得賞金額が初めて1億円を突破し、3度目の賞金王に輝いた。
それまでの国内賞金獲得記録は中嶋自身が2年前に作った83年の8551万4183円。前年に青木功の5年連続戴冠を阻止して初の賞金王に輝いた中嶋は、3月に行われたシーズン初戦、静岡オープンで勝利し幸先のいいスタートを切ると、5月は日本プロゴルフマッチプレーを含む2勝、7月に日本プロ、8月には日本プロ東西対抗と5勝を挙げ賞金王レースを独走。9月以降も3勝を積み重ね、年間8勝で2回目の賞金王を連覇で飾った。この年、マスターズでは16位、全米オープンでは26位に入っており、海外獲得賞金を合わせると1983年にすでに1億円は突破していた。青木功も同年2月のハワイアンオープンに勝ち、米ツアー初制覇を皮切りに、念願の日本オープン、そして欧州オープンを制し、最後の日本シリーズで有終の美を飾り、国内外合わせると獲得賞金1億円を突破していた。テレビCMなどを含めると、ふたりの稼ぎは3億円を超えていたといわれている。
83年2月にハワイアンオープンで優勝し、優勝賞金5万8500ドルを手にした青木功。海外での獲得賞金を合わせると、青木と中嶋常幸のふたりが1983年に1億円プレーヤーとなっていた
週刊ゴルフダイジェスト2021年12月28日号より
「もう死んでやろうと、薬局へ行って…」
中嶋常幸が明かした壮絶な過去
- 一流と称される者には、自身のゴルフスタイルを確立するためのきっかけとなった転機がある。例えばそれは、ある1ホールの苦しみかもしれない。例えばそれは、ある1ショットの歓びかもしれない。積み重ねてきた勝利と敗北の記憶を辿りつつ、プロゴルファーが静かに語る、ターニングポイント。中嶋常幸の場合、それは、運転中に聴いたカセットテープでもあった。 TEXT/Yuzuru Hirayama PHOTO/……