【ゴルフ初物語】Vol.60 かつて140ものコースが導入。日本独自のシステム“モノレールカート”
1964年に大阪の池田CCが日本で初めてゴルフカートを試験的に導入し、翌年から本格的に採用したが、それから9年後には日本独自のカートシステムが誕生した。
西日本で広く普及した
初めてモノレールカートを敷設したゴルフ場は兵庫県豊岡市のプレイヒルカンナベ大岡山ゴルフコース(現・大岡GC)。標高658メートルの大岡山の山頂付近に造られ、日本海を一望する大パノラマが楽しめるコースだ。
冬季には2メートルを超える雪が積もるため、かつては5、6、10番をスキー場として使用。そのためリフトも設置されていた。そこに開場翌年の1973年、三洋電機とハンコウ興産の提携により日本初のモノレールカートが設置された。
クラブハウス周辺に格納庫を置いてカートを収容し、夜間にカートのバッテリーを充電。格納庫からレールが延び、アウト、インのスタート地点からフェアウェイに沿ってレールが敷かれ、グリーン周辺を迂回して次のホールへ。最後は格納庫に戻ってくるようになっている。
当初はモノレールが「ゴルフ場の美観を損なう」「二流、三流コースのもの」といった“アレルギー”もあったが、出現から8年後の1980年には全国で139コースに導入され、実に全国の1割強のゴルフ場がモノレール化した。元々はキャディ不足を補い、経営を省力化するために導入されたのだが、キャディの負担軽減によるサービスの向上、カート道が不要で芝を傷めない、プレーが安全で早いといったモノレールカートの新たなメリットが認知されることとなった。
導入コースの9割以上が西日本のゴルフ場だったが、これは高低差がある山岳コースが多かったためだろう。先発メーカーの三洋電機が139コース中65コースに納入とシェアのほぼ半分を占めていた。三洋電機の創業者・井植歳男が創設した兵庫県の洲本GCにも1977年に三洋電機製のモノレールカートが導入されている。
1973年8月にプレイヒルカンナベ大岡山ゴルフコースで行われたモノレールカートの開通式。クラブハウス横に作られた半地下の格納庫からレールが3本延びていた
週刊ゴルフダイジェスト2021年11月2日号より