【待ってろ、ウエハラ】Vol.12 よく聞く“傾斜なりに立つ”ってどういうこと?
ラグビー元日本代表の大畑大介が、高校の同級生で元メジャーリーガーの上原浩治をゴルフで打ち負かすべく、精鋭コーチ陣に教えを請う本連載。第12回は、前回に引き続きメジャーチャンプコーチ青木翔が傾斜地からのアプローチをレッスン!
ILLUST/Koki Hashimoto TEXT/SHOTANOW PHOTO/ARAKISHIN THANKS/六甲国際パブリックコース
ラグビーはいかに機転を利かせて臨機応変に対応できるかが大事なスポーツ。常にボールと人が動いていてまったく同じ状況っていうのはないから、プレーの選択肢の引き出しが多くてそれを場面に応じてパッと出せるのがいい選手の条件。オレは小さいころからそんなことをずーっとやってきたから、応用力には自信がある。
現役時代に「スポーツマンNo.1決定戦」っていう、アスリートがいろんな種目で競うテレビ番組に出て優勝したけど、あれも応用力の勝利。
でもなぜか、ゴルフだけはオレの応用力が通用せん! グリーン周りの傾斜地なんて難しいのがわかっているから、かなり慎重に準備して打っているのに、ちゃんと当たった試しがない。でもオレには世界の青木コーチがついてる。きっとオレの感覚を生かしたスーパー寄せ技を教えてくれるはずや。待ってろ上原!
傾斜地はフラついてOK
飛ばないアドレスに、力の入りにくいグリップで、アプローチの基本をマスターした大畑氏。これまで上手くいかなかったグリーン周りから面白いように寄るようになったが、傾斜がかかるライになった途端、またミスが出始めてしまった。
大畑 あー、せっかくアドレスとグリップを直して上手いこと打てるようになったのに、傾斜になるとアカン。
青木 グリーン周りってたいてい傾斜していますから、このままだと本番はかなりマズい事態になりますよ。
大畑 むっちゃ煽るやん。上原陣営の手先か! そんなこと言わんで、なんとかしてください。
青木 傾斜ではどんなことに気をつけていますか?
大畑 平らなとこより、不安定になりそうでしょ? だからフラつかないことを意識してるかな。
青木 なるほど。でもグリーン周りの傾斜って大した距離を打たないので、実は普通に振っていればフラつくことってほとんどないんです。
大畑 たしかに、振り幅は小さいわ。この程度の傾斜やったら、腰から腰の振り幅でしっかり打ってもバランスは崩れそうにない。
青木 そのとおり。アプローチの振り幅でフラつくような傾斜なんてほとんどない。だから安定感を出そうと斜面に抗う必要はありません。傾斜地で普段どおりに振ろうとすると、重心を落としたりスタンスを広くしたりして安定感を出そうとしがちになります。
大畑 オレもそうなってる?
青木 はい。構えが少し大きくなってますし、これまでよりひざが曲がってガニ股のような形になっています。
大畑 それじゃ逆戻りやん。傾斜では何をイメージしたらいいの?
青木 ズバリ傾斜なりに立つことです。
重心も体重配分も考えなくていい
大畑 出た出た、傾斜なり! よく聞くけど、それがわからんのよ。体重の配分を変えて調整すればいいの?
青木 体重配分や重心ってイメージしにくいですよね。だから肩や腰、両ひざのラインを傾斜と平行にすることを意識してください。
大畑 たしかに目に見えないものより、具体的なラインのほうがイメージしやすい。
青木 あとは距離の感覚です。左足上がりはいつもよりロフトが増えて上方向に打ち出されるので、距離が出にくくなります。左足下がりは逆に転がりやすい。
大畑 そのへんはバッチリ。スーパー感覚派のオレなら、何十球か打てば身につくから。
青木 スゴイ自信……。ちなみに大畑さんくらい体幹がしっかりしているなら、たとえ傾斜でフルショットしてもブレることはないはずですよ。距離感をマスターすれば、得意な状況になると思います。
大畑 苦手から一転して得意に! これはまた上原をビビらせる武器が増えてしまったな。
青木 ちなみに、最初にやっていたように下半身を固めてパッティングのように打つ方法もあるんですけど知りたいですか?
大畑 なんなんその裏技。もったいぶらずに教えて!
「傾斜があると、踏ん張ろうとガニ股にしていたけど、こんな感じでいいんやな。合言葉は『平行』か」(大畑)
基礎、応用とマスターした大畑氏が次回挑戦するのはどんな裏技なのか。乞うご期待!
【オオハタ’s MEMO】
傾斜地は安定感より
地面と平行に立つこと
令和の武蔵になる!
オオハタダイスケ
大畑大介。1975年11月11日生まれ。ラグビー元日本代表、伝説のウイング。大阪の東海大仰星高で上原浩治と同クラス。ゴルフのベストスコアは91だが「本気を出せば上原に勝てる」と豪語するスーパーメンタル&フィジカルでゴルフ修行へ
迎え撃つは
ウエハラコウジ
上原浩治。1975年4月3日生まれ。読売巨人軍の元エースで、メジャーリーグでも活躍したレジェンド。マウンド上の緊張感を今はコースで味わうのが楽しいという根っからのアスリート気質を持つエンジョイかつ本気ゴルファー。同窓生・大畑の挑戦を待つ
週刊ゴルフダイジェスト2021年10月12日号より