【ゴルフはつづくよどこまでも】Vol.50 道具を自分に合わせるのではなく、自分を道具に合わせればいい
高松志門の一番弟子として、感性を重んじるゴルフで長く活躍を続ける奥田靖己。今週もゴルフの奥深い世界へと足を踏み入れていく。
PHOTO / Masaaki Nishimoto
以前、何か得るものがあるかもしれんとヒッコリーシャフトのクラブを打ってみたものの、何もゴルフにプラスになるものはなかったという話をしました。
せやけど、よう考えてみれば、それは進化したクラブを使える現代の、僕を含めてゴルファーの驕(おご)りやないかなと、考えるようになったのです。
たとえば、今使っているドライバーで250ヤード飛ばしておるとして、その飛距離をヒッコリーシャフトのクラブに求めるから、ややこしい話になるわけです。
もしヒッコリーシャフトで250ヤードを飛ばそうとしたら、とんでもないスウィングになるはずやし、どだい無理です。ヒッコリーシャフトにはそういう性能はないんやから、そこを求めてもないものねだりということです。
自分は250ヤード飛ぶはずやと思ってヒッコリーシャフトを振るから「何もゴルフにプラスになるものがなかった」という結論を出してしまうわけです。
ヒッコリーシャフトを打つなら、そのクラブに合ったリズム、タイミングとかスウィングで振らなあかんのです。そうやってジャストミートしてそのクラブの最高の性能が引き出せるわけです。
1回、2回の素振りだけで合わせられれば一番ええんやけど、なかなかそうはいきません。それだけ現在のクラブとは違うのです。
「オレに合わせなさい」というのが今の主流になっています。だからクラブを新調するときにフィッティングというものがあるんです。
ショップが「あなたに合ったシャフトはこれや」と答えを出して薦めてくれます。せやけど、打つたんびにダフったりトップしたりというおっちゃんが、試打なんかして「これや!」というクラブを見つけられるはずはあらへんのです。
何発か打って、データを見て一番飛距離が出たクラブを選んだとして、その一番のスウィングは、やっぱり何発も打たないと出んわけです。極端な話、もしかするとその一番は一生出ない可能性もあるかもしれません。
スウィングというものは、形やのうて、道具の使い方やという話をしたことがあります。せやから、道具を自分に合わせるのではなくて、自分がいかに道具に合わせるかということが、ヒッコリーシャフトのクラブを打ってみて気がついたことやったと思います。
「自分が順応性のある自分になったらええということですよ」
奥田靖己
おくだせいき。1960年、大阪生まれ。93年日本オープンなど6勝。シニアで2勝。ゴルフの侘び寂び、温故知新を追求する
週刊ゴルフダイジェスト2021年10月5日号より