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目的は兵役免除? 韓国男子のトップ2が全英OPを蹴ってまで東京五輪に懸ける理由

PGAツアーを主戦場にしながら全英オープン欠場を表明したキム・シウー(26)とイム・ソンジェ(23)。ふたりは韓国代表として東京五輪出場も決まっており、全英欠場の理由は、あくまでも五輪に集中するためとしているが、これには大きな理由が。その決断に至った背景には、韓国の兵役法が大きく関与していると見て間違いないだろう。

というのも、今でも北朝鮮と休戦状態にある韓国では、成人男子に約20カ月の兵役を義務づけており、たとえ有名なスポーツ選手や芸能人、財閥の御曹司や政治家の息子であっても特例はない。今年5月に法改正があり、国民的ポップグループのBTSなど大衆文化寄与者のみ満30歳まで入隊時期を先延ばしできるが、一般的には満30歳までに兵役を終えなければならず、逆算すると満28歳までに入隊しなければならないのだ。

ただ、スポーツ選手の場合、アジア大会で金メダル、五輪ではメダルを獲得すれば4週間の軍事基礎訓練だけで済む「兵役免除」の恩恵に預かることができる。ゴルフでこの恩恵に預かった代表的例がキム・キョンテ。アマ時代に出場した2006年ドーハ・アジア大会で個人・団体の金メダルに輝いたキムは、兵役免除を獲得したことで海外渡航にも制限がなくなり、日本やアメリカなどでツアー生活を続けられたが、兵役のせいでツアー生活中断を余儀なくされた選手も少なくない。

例えば11年日本ツアー賞金王を足がかりに12年からアメリカに渡り、PGAツアーで2勝したベ・サンムンは、入隊時期を先延ばししながらツアー生活を続けてきたが、満28歳となった15年にタイムリミットを迎えて米国ツアー生活を中断して帰国。韓国陸軍・第36歩兵師団で兵役を務めた。17年8月に除隊となり、その2カ月後PGAツアーに復帰したが、いまだ優勝がない事実が約2年のブランクの重さを物語る。キム・シウーやイム・ソンジェはそんな先輩の姿を間近で見ているからこそ、東京五輪に集中することを選んだのだろう。ふたりは誰よりもメダル獲得が切実かもしれない。

今季米ツアー1勝のシウー。先日のメモリアルでも9位と好調だ(写真は2021年プレーヤーズ選手権)

週刊ゴルフダイジェスト2021年7月27日号より