【ゴルフ野生塾】Vol.1690「ソールを浮かせると微なる緊張が生じる」
古閑美保、上田桃子など数多くの名選手を輩出してきた坂田塾・塾長の坂田信弘が、読者の悩みに独自の視点から答える。
今日6月16日、少しの疲れを
覚える。
朝の食事、少し多かったと思う。
食べて疲れるは運動不足か。
歯を磨くのも風呂に入るのも爪を切るのも面倒になって来た。
6月30日の二度目のワクチン接種を待つ。
疲れた。
吐く息が太い。
それでは来週。
3つの理由に優先順位を付けよ。
ドライバーでアドレスしたとき、ヘッドをボールの真横に接地させて構えていますが、ジュニアからゴルフをやってきた友人は、「ヘッドを浮かせて構えている」と言います。また、「接地させるなら、ヘッドを浮かせたときに芯になるようにトウ寄りで構えるべき」とも言っていました。その友人はドローが持ち球で、自分はフェードです。塾長、どう構えるのがいいと思いますか。(大阪府・伊藤章大・33歳・ゴルフ歴5年・平均スコア92)
ヘッドを浮かせて構える理由は幾つもあると思うが、何事に於ても3つの理由を考え、その3つの理由に優先順位を付ければ理由明確になると思う。
理由明確になれば事は前へ進む。
不明瞭ならば前へは進まず、進む方向、見渡す限りとなる筈だ。
物事紛糾する時は4つ5つもの理由が提出され、その4つ5つに優先順位付け難い状況訪れた時であろう。
3つは三角形を作り、4つは四角形を生み、5つは五角の型を作るが、三面の型は型を複雑とせず、四角五角の型は型を複雑多様化させると思う。
事を前に進ませるには単純化は必要。
やはり四角五角よりは3つの角がいい。
今、若い人の中に静かなゴルフブーム起きている様に思うが、彼等は悩んでいると聞く。
信じ切れる指導要領、指導の鑑(かがみ)がないからだ。
稽古事、鍛錬事、修行事、一徹事、継続事には相互の信頼が要る。
不信は断層。
信頼は連なる尾根。
歩くのであれば連なる尾根の歩きがいい。
片方、指導を信じ、片方、信じてくれる事に責任感じれば、その関係に縦割れも生じはしないと思う。
縦割れは指導能力と理論への不信、横割れは指導する者の人間性への不信で起こるものと考えるが、信頼の気持ち稀薄だと上達の勢い生じはしないであろう。
私は信じて来た。
この人の教えに間違いはないと信じた。
私の信じる気持ち、最も強かったのは24歳から27歳迄の研修生時代だったと思う。
疑わなかった。
疑いなき修行の一日は早く過ぎる。
1週間も1カ月も3カ月も半年も1年も早かった。
もう1年過ぎたのかと思う事、幾度もあった。
己のやっている事に疑い持てば過ぎる1日は遅い。
塾生に問うた。
ゴルフやってる時と友達と遊んでいる時、どっちの時間を早いと感じるか、と。
一緒です、と答えた者はプロを目指さなかった。
ゴルフやってる時です、あるいは友達と遊んでる時です、と答えた者はプロを目指した。
私はジュニア塾開塾前からこの質問を用意していた。
塾には7カ条あったが、その1は嘘をつかない事、その2は隠し事をしない事だった。
子供達は塾7カ条を守った。
塾を開塾して半年、この質問を投げた。
ゴルフやってる時と友達と遊んでいる時の比率は半々だった。
親もコーチもゴルフやってる時を期待したと思うが、小学4年生の答えは5分と5分だった。
この時、思った。
このまま行けばいい。
友達との遊びは大切なものである。
ゴルフ以上に大切なものと思った。
嘘と隠し事のない塾だった。
嘘と隠し事なければ3つの理由を見つける事は出来る。
そして優先順位も付く。
嘘と隠し事あれば、理由の数は多くなる。
稽古事、継続事に嘘と隠し事は要らぬ。
貴兄はクラブヘッドを浮かせて構える理由を知らぬ方だ。
一時期、私は浮かせて構えた。
そして、いつの間にか、地面にソールして構えていた。
また浮かせて構えた。
この繰り返し続けて、今は地面にソールして構えているが、浮かせて構えるのと地面にソールする違いは1つだけだった。
試合が続いて疲れを覚えた時、私は浮かせた。
浮かせれば体全体に微なる緊張生じた。
疲れている時、この微の緊張、消えていた。
私にとって、微の緊張はスウィング始動に於て必要なるものだった。
だから疲れていた時、浮かせた。
疲れてない時は地面にソールして構えた。
疲れてない時、クラブヘッドを浮かせて構えると左への曲り生じた。
地面にヘッドをくっ付けて構えると曲りは消えた。
経験から得たアドレスだった。
18ホール連続でヘッドを浮かせてアドレスしたのはプロテスト最終ラウンドの時だけである。
プロテストは疲れた。
微の緊張は消えた。
そして18ホール全部のショット、ヘッドを浮かせて構えた。
ヘッドを浮かせて構える第二の理由は呼吸。
バックスウィング始動直前、浮かせのアドレスと地面にソールしてのアドレスでは、吸う息の強さ異なった。
人それぞれと思うが、私は浮かせて構えた時の方が吸う息、強くなっていた。
どっちの息の方が己の振りに合うかは、強く吸って一度息を止め、そこから薄く吸ってトップ位置に向うか、吸う息、強くせず、弱く吸い続けてトップ位置に達するか、強く吸って息を止め、そして吐き、そこから弱く吸い続けてトップ位置に向うか、それとも呼吸を意識せずにバックスウィング続けるかの球叩きをやってみれば分ると思う。
呼吸に波あれば、スウィングは低くなった。
トップもフィニッシュもだ。
呼吸に波生じれば、試合の時の球は曲った。
だから塾生には呼吸に波の生じ難い高いトップと高いフィニッシュを教えた。
高いフィニッシュだと5秒の静止は出来る。
低いフィニッシュだと5秒の静止は難しい。
フィニッシュで左肘の落ちた振りでは2秒の静止も困難となる。
塾生指導の中で最も怖いのは怪我だった。
5秒静止出来るフィニッシュに怪我はなかった。
私は塾生のフィニッシュ時の左肘を下から上へと叩き上げた。
しかし、左肘を落とすフィニッシュは楽だった。
放って置くと子供達のフィニッシュの左肘は落ちた。
落ちていると思った時、私は2週に一度、熊本へも札幌へも通った。
左肘を上げる為だけの通いだった。
今であれば無理だ。
当時、私は若かった。
そして95人がプロになり、シード得し者は12名。
第三の理由はアドレス時の体重位置の確保。
ヘッドを浮かせれば踵体重になり、ソールして構えれば爪先体重になり易いと思う。大きく振りたければ踵体重がいい。
この3つの理由から優先順位を決めればいい。
あとは貴兄次第。
私から離れての決断の時であります。
坂田信弘
昭和22年熊本生まれ。京大中退。50年プロ合格
週刊ゴルフダイジェスト2021年7月6日号より