【ゴルフ初物語】Vol.42「1983年、ヤマハ初となるアイアンがデビュー」
1887年に国産第1号のオルガンを完成させたことに始まるヤマハの歴史。1982年に世界初となる中空構造のカーボンコンポジットドライバーでゴルフ業界に参入すると、翌年にはアイアンをリリースした。
フェースには
“プラズマ溶射”処理を施した
ピアノ製造を通して、国内トップレベルの木工加工技術を持つようになったヤマハは、1959年からアーチェリーを皮切りにスポーツ用品の製造を開始する。繊維強化プラスチック(FRP)製のアーチェリー開発で蓄積された技術は、スキーやテニスラケット開発にも生かされ、82年には世界初のカーボンコンポジット中空ヘッドのクラブでゴルフクラブに参入。翌年10月には、アイアンも発売された。
当時としては画期的な、コンピューターによる科学的解析をもとに、重心と慣性モーメントの関係を独自のコンセプト「CG-MI理論」で展開。「ST-30」シリーズは、重心をやや高め、慣性モーメントをやや小さめにすることで、ダウンブローに打ち込むコントロール派向き。「FD-20」シリーズは、重心の高さと慣性モーメントをバランスよく設定し、コントロール性と方向安定性を高い次元で両立。「IMAGE」シリーズは、低重心&高慣性モーメントにすることでヘッドスピードが遅めのゴルファーでもやさしく打てるモデルとなっていた。
さらに全モデルのフェースには世界で初めてという「プラズマ溶射」処理が施されていた。「プラズマ溶射」とは「1万5000度という超高温、秒速3000メートル以上の超高速のなかで、ニューセラミック系やメタル系素材を、マッハ2の超ハイスピードでフェース面にぶつけ、瞬時に緻密な被膜を形成する技術」だという。セラミック系素材を溶射した場合、フェース面の硬度は極めて高くなり、耐摩耗性に富み、硬くて衝撃の大きいツーピースボールに最適なアイアンとなる。メタル系の素材を溶射すれば耐久性に富むとともに、打感が非常にマイルドになるという画期的な技術だった。
ヤマハ初のアイアンは「ST-30」「FD-20」「FD-20F」「IMAGE」の4シリーズをラインナップ。「FD-20ニューセラミック」は3I~9I、PW、SWの9本セットで34万2000円と高価だった
週刊ゴルフダイジェスト2021年6月22日号より