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小祝さくらと稲見萌寧。今もっとも強い2人の「ショット力」はどう育まれた?

ILLUST/Masashi Anraku PHOTO/Tadashi Anezaki
THANKS/鎌ヶ谷CC、北谷津ゴルフガーデン、TRANSFORM

今季すでに6勝と無類の強さを誇る稲見萌寧と、今季3勝を挙げ賞金ランクトップをひた走る小祝さくら。毎週のように優勝争いを演じる2人の強さの秘密を探った。

小祝さくら

●1998年4月15日生まれ
●北海道北広島市出身
●身長/158cm
●血液型/A型
●飛鳥未来高等学校出身
●2017年プロ入り


稲見萌寧

●1999年7月29日生まれ
●東京都豊島区出身
●身長/166cm
●血液型/A型
●日本ウェルネススポーツ大学在学中
●2018年プロ入り

すべてのおいてハイレベルな
オールラウンダー

2人の強さの秘密はなにか。まず彼女たちのデータを見ると、ショット、アプローチ、パットとすべてにおいてハイレベルで穴がないことが分かる。このことが、平均ストロークのデータに反映されているといえるだろう。

実際、稲見のことを鈴木愛は「どこからでもグリーンに乗せてくる」とショット力を称賛。小祝に関しては、あの岡本綾子がスウィングを評価する。

唯一2人が後れを取る飛距離に関しては、スウィング改造やトレーニングによって改善してきているという。その取り組みについても探ってきたので紹介していこう。

スタッツはほぼ互角!

小祝さくら稲見萌寧
シーズン獲得賞金134,984,333(1位125,405,216(2位
平均ストローク70.3351(2位70.2127(1位
平均バーディ数3.7349(2位3.6000(3位
パーセーブ率88.9558(3位89.9206(1位
パーオン率73.1593(3位74.2857(2位
平均パット数1.7782(6位)1.7743(3位
リカバリー率69.0773(3位71.6049(1位
サンドセーブ率64.7059(1位54.5455(5位)
平均飛距離(Y)243.97(19位)238.25(34位)
フェアウェイキープ率62.5000(60位)73.3871(11位)
ラウンド数26試合(83R)23試合(70R)
両者とも、ほとんどのスタッツが3位以内と穴がない。とりわけショット力の高さが光る(※スタッツは5月24日時点のもの)

高校時代の2人を取材していた武市悦宏プロは……
モネちゃんは言葉使いもスウィングもプロを強く意識してたな~。さくらちゃんは運動オンチっていってたけど想像力が豊かな子って印象でしたね。

●稲見萌寧 ショット力の秘密その1

キックボクシングで下半身を強化

昨年は連戦の疲労からスウィングのブレが生じていたという稲見。これまでは体のバランスを考えたトレーニングが多かったが、このオフは筋力アップに取り組んだ。

「キックボクシングのトレーニングを取り入れて、下半身と体幹を重点的に強化していきました。かなりハードなメニューをこなして、ひとまわりは足やお尻も大きくなったと思いますし、体力もかなりついてきましたね」と、トレーナーの平野洋平氏は語る。

奥嶋誠昭コーチは「筋力アップを目的としたトレーニングで、疲れにくさや、飛距離アップを本人も感じてくれました。試合中も疲労によるブレが少なくなり、安定したゴルフができているので、トレーニングの効果がかなりあったと思います」とその成果を話した。

筋力・瞬発力をアップするメニューをこなす。通常のキックボクシングとは違い、ゴルフのスウィングの動きを意識したトレーニングを行っている

●稲見萌寧 ショット力の秘密その2

狭めスタンスで軸ブレ防止

毎週のように試合を戦っていると、気づかないうちにスウィングのズレが生じてくるもの。稲見の場合は知らず知らずのうちにスタンスが広くなっていたという。

「自分ではまったく意識していなかったんですが、一昨年のスウィングと比較したときにスタンスが広くなっていることに気がつきました。正直こんなにも広くなっているとは思いませんでした」と稲見は話す。

スタンス幅が広くなるとどんな悪影響があるのか。奥嶋コーチによると

「一見、下半身は安定するように思えますが、体重移動をしにくくなり、腰や上体が左右に流れやすくなります。軸がブレるのでスウィング軌道もバラバラになりやすい。また、軸を意識しすぎて上体が左に傾いてカット軌道になることもありました。彼女に合った狭めのスタンス幅に戻してから、本来の動きができるようになりました」

以前は……
スタンス幅が広く上体が傾いていた

現在は……
靴1足分スタンス幅を狭めて軸ブレが解消

常に鏡でチェック!
トップ位置での上体のねじりと軸の傾きをチェック。「自分が感じる以上に軸が傾くことがあるので、転戦中はつねにチェックします」(稲見)

軸が安定して精度がアップ!

●小祝さくら ショット力の秘密その1

インパクト時の重心が低くなった

ムダのないシンプルなスウィングを武器に賞金ランク1位を走る小祝さくら。その彼女をプロ入り前から指導している辻村明志コーチは、この快進撃についてこう語る。

「昔からスウィングはキレイでしたけど、力強さがありませんでした。いまでも飛距離は出るほうではありませんが、連続素振りを欠かさずやって、ここ数年でスウィング中に重心が上がらなくなってきたことで、本当に飛距離が伸びてきました」

以前はインパクトで左かかとが浮き上がり、重心が高くなってボールを強く押し込めていなかった(写真右)。現在は左かかとが浮かず、力を下向きに使えるようになったことで、ボールに強く圧力をかけることができている

小祝はコレで変わった!
息を止めて20回連続素振り

ボールに合わせて振るのではなく、スウィングアークの通過点上にたまたまボールがある意識で振れるようにするため、連続素振りを取り入れている。「これをやり出してから、スウィングがシンプルかつシャープになりましたね」(辻村)

●小祝さくら ショット力の秘密その2

右足で地面を押すから
重い球になる

連続素振りを取り入れて、重心が下がってきたことでボールに力が伝わりだし飛距離が伸びてきたという小祝。さらに、右足の使い方を覚えたことで、圧をかけられるようになってきたと辻村コーチはいう。

「以前のさくらは、ダウンスウィングで右足を蹴る意識があったため上体が伸び上がっていました。右足のイメージは“押す”です。さくらは、キレイに振ることができても、この押す動きができていなかったので、球質が軽かった。でも、この動きができるようになってからは、ライン出しのような力強いショットも打てるようになってきて成績にも結びついていると思います」

短いドライバーで腰を落として打つ

Point
下半身でスウィングをしっかりと受け止める

「テークバックからトップにかけて、右足内側でしっかりと体重を受け止められると、インパクトでボールを強く押し込んでいける」と辻村コーチ。右足は「蹴る」のではなく、目標方向へ右足側面を押し込んでいくイメージだ

週刊ゴルフダイジェスト2021年6月8日号より