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【岡本綾子 ゴルフの、ほんとう】Vol.917「ドキドキする経験がゴルフ人生をもっと楽しくして新たな発見につながってきます」

KEYWORD 岡本綾子

米国人以外で初めて米女子ツアーの賞金女王となった日本女子ゴルフのレジェンド・岡本綾子が、読者からの質問に対して自身の経験をもとに答えていく。

TEXT/M.Matsumoto

>>前回のお話はこちら


コースは難しくなるほど実力差が出ることは分かっていますが、今年は初めて大きな大会に出場するので超難関セッティングのコースでプレーする場合、どんな心構えで臨めばいいのかをご教示いただければと思います。 (匿名希望・37歳・HC 0)


スコアメイクで一番ものを言うのは何だと思いますか。

飛距離や方向性などの安定したショット力?

それとも球筋を打ち分ける技術?

そのどれもが優れたプレーを支える要素には違いありませんが、高度な技術を身に付けたプロの間ではそれらに目に見えるほどの差はないと言っていいはずです。

ではどこに差が出るのか。それは“経験”です。スコアメイクする能力とゴルフの腕前の積み重ねです。

さまざまな能力が要求されますが、例えばショットに関する細かい技術は練習の繰り返しによって向上させることができる。

極端に言えば練習場で身に付けることはできますが、試合はそれだけでは勝ち抜けません。

コース上のさまざまな条件や不都合やアンラッキーを乗り越えなければならない。

その際に不可欠なのがそのプレーヤーに蓄えられた経験というわけです。

経験を生かしたスコアメイクがあってこそ、その他大勢のプレーヤーから抜きん出ることができるのです。


コースが変われば気候や環境が変わる、当たり前のことですよね。その中には芝の特徴の違いによる影響もあります。今年の全米女子オープンが開催されたリビエラCCは、ラフにキクユ芝、グリーンはポアナ芝という日本国内ではまったく見ない条件が揃っていました。

シーズンを通してUSLPGAツアーでプレーする選手が増えたとはいえ、日本人23選手中、およそ半数が予選落ちしたのは、少なからず特有の芝に対応しきれなかったことも要因の一つだったと思います。

セッティングに対する経験不足ということで言えば、今年5月に開催された『ワールドレディスサロンパスカップ』で、池越え100ヤードに満たない短いパー3では何人もの選手がバックスピンで池ポチャするというシーンが見られました。

風の読みが難しかったというのは言い訳で、手前の池まで戻ってしまうほどのスピンがかからないようにもう少し工夫がほしいところでした。

そのなかで、わたしが見ていて不思議に思ったのは、多くの選手が普段と同じ高さのティーアップをして打っていたこと。

たとえばいつもより逆にティーを少し高くすれば入射角が緩くなってスピン量は減る、というようなアイデアがあってもよかったかもしれませんね。

失敗に泣き経験を積むことでゴルファーは学びます。優れたプレーヤーは学んで知恵をつけ次の似たようなケースに対応する。 そこに差が出るのです。

アマチュアとプロとでは練習に費やす時間の長さ、練習量が大きく違います。

ゴルフの技術全般に関してレベル差がありますが、長年ラウンドに親しんできたベテラン上級者には豊かな経験があり、テスト合格を果たしたばかりの若手プロよりも経験と技を持っていることがあると思います。

それは練習場のマットの上でいくら打ち込んでいても身には付かない、コースの実戦で身をもって学ぶしかない臨機応変な対応術のようなものです。

その引き出しの数を競うのがトーナメントと言ってもいいと思っています。また、試合では自分のプレーだけに集中するのが難しくなります。

同組の選手だけでなく周囲からの視線も気になってしまう。

そして伝統ある大きな大会となると独特のムードが漂っています。 難コースのみならず、その試合会場の重苦しい空気までもがタフなセッティングの一部となってあなたの体にまとわりついてくるのです。

そんな大会に初めて出場するとなればナーバスになるのは無理もありません。

でも難コースやハードなセッティングに臨む時の特別な心構えはありません。

緊張感にシビレる感覚を覚えたのなら、わたしはむしろそれを素直に味わってほしいと思います。

タフな設定に対して「怖い、イヤだ」と感じるなら、自分の弱点や傾向だと再認識する機会にもなるはず。

あえてドキドキする感じを心に刻むことで経験になりゴルフ人生の新しい一コマになるのですから、経験したことのない武者震い的な集中状態に入る感覚を味わってほしいです。

それがゴルフで一番貴重な“経験”そのものなのですから。

「チャレンジする人だけに“経験値”というスキルが身に付きます」(PHOTO by Ayako Okamoto)

週刊ゴルフダイジェスト2026年7月28日号より