【目澤秀憲の目からウロコ】田中ウルヴェ京編①メンタルトレーニングは“魔法”ではない
目からウロコ
目澤秀憲コーチが、異業種からゴルフのヒントを得る連載「目澤秀憲の目からウロコ」。今回はスポーツ心理学者の田中ウルヴェ京氏に話を聞いた。
TEXT/Daisei Sugawara PHOTO/Hiroaki Arihara

目澤秀憲 ゴルフ界の最先端を知り尽くすコーチ。現在は河本力、金子駆大、永峰咲希、阿部未悠などを教える
>>前回のお話はこちら
- 目澤秀憲コーチが、異業種からゴルフのヒントを得る連載「目澤秀憲の目からウロコ」。前回に続き、スポーツドクターの二重作拓也氏に話を聞いた。 TEXT/Daisei Sugawara PHOTO/Hiroaki Arihara 二重作拓也 ふたえさく・たくや。スポーツドクター。格闘技医学会代表。8歳で空手を始め17歳でアメリカでも試合に出場。格闘技の経験とスポーツ医学の臨床経験か……
本当の資格を持つ人が
まだまだ日本には少ない
――目澤コーチは、普段から専門的な立場からのメンタル指導が必要だと感じているそうですが……。
目澤 ボクの仕事はあくまで「技術」を教えることなので、それについては100%の準備をしているつもりなんですが、選手のメンタルの状態によってはそういう技術的なアドバイスが素直に入らないケースもあって、だからと言ってボクがメンタルも引き受けるというのは違うかなと思っています。ただ、選手がどう感じているのかは理解しておきたいので、ぜひ専門の知識を持った人と話したいと思っていました。
田中 「メンタル」という言葉の解釈が人によって多様であることが理解を難しくさせていると思います。一般的にスポーツにおいて「あの選手のメンタルは強い」という時は、その選手が何か前向きな様子の「表出行動」であることを指します。一方、企業研修などで「あの社員はちょっとメンタルで」というような表現をされることがあります。どういう意味かと聞くと「うつ症状で休んでいるんです」と言われたりする。そんな時、メンタルトレーニングというとまるで「気分を明るくさせる」とか魔法のように思われることもありますが、個人の目的や目標に合わせて自分の感情と思考に気づき、自己調整法を学んだり、本質的な自問自答によって思考力を鍛え、行動につなげていくことがメンタルトレーニングなんです。日本では、自己流でも心理学を勉強したということで「メンタルコーチ」と名乗れるため、メンタルに関する指導者の質が混在していることも誤解が増える原因です。
目澤 ゴルフ界にも「メンタルコーチ」という肩書の人が多くいるのですが、そういう人たちってどういう資格で指導しているんだろうって、疑問に思っていたんです。
田中 資格には客観的根拠が必要ですね。たとえば日本のナショナルトレーニングセンターで仕事をする心理専門家は国際基準と同等の資格で日本スポーツ心理学会認定のスポーツメンタルトレーニング指導士、そして精神科医、臨床心理士および公認心理師があります。
目澤 技術コーチとして、「必ず勝たせます」とは口が裂けても言えないんですが、メンタルコーチの中にはそういうことを簡単に言う人が多いような気がして……ちょっと偏見が入っているかもしれませんが。
田中 選手に「私のメンタルトレーニングやると勝てますよ」というような営業は一時的な手法に頼らざるを得ず、結果的に選手にとってはマイナスです。
目澤 ボクも営業はできないです。やっぱり自分から「変わりたい」と思って、自分の意思で習いに来る人しか、結局うまくいかないんですよね。
田中 それがわかってらっしゃるのは、さすがですね。
目澤 日本はスポーツ分野でのメンタル指導後進国だと思うんですけど、何がそうさせているんでしょうか?
田中 やっぱりメンタルを「強い」、「弱い」だけで考える土壌があるからじゃないでしょうか。フィジカルと一緒でメンタルには強い幹と、「しなやかさ」が重要です。どんなに技術が一流でも、試合前に不安になることはあるし、ストレスがあるのは当然だし、それを日本だと「メンタルが弱いからだ」と言いがちですよね。
目澤 気持ちの浮き沈みがあっても、それを柔軟に受け入れるというか、受け流すことができるようにしなきゃいけないってことですよね。
田中 そうです。それも一つですね。

プレーヤーじゃない「その人」を一緒に作り上げていく
技術、体力的には全盛期に近くても、バーンアウト、いわゆる「燃え尽き症候群」に陥ってしまう選手は多い。「プレーヤーとしての自分だけがアイデンティティになっている選手は危ういです。そういう場合、メンタルの専門家としては、ある程度長いスパンで選手と関わりながら、プレーヤーじゃない『その人』を2人で作っていくという過程が必要です」(田中氏)
「『技術』か『メンタル』か、問題の所在見極めが重要」
普段から100前後のスコアの人が「110」を打ったら、それは単なる技術不足でメンタルの問題ではない。それがたとえプロレベルであっても、うまくいかなかったことの原因がすべて「メンタル」とは限らないのだ。「『気持ちで負けちゃって』みたいに、技術の前に心の問題にしたがる選手が一定数いる印象ですが、そういう選手には技術的なアドバイスは届きにくいです。それどころか、技術の問題にすることで選手のプライドを傷つけてしまうケースもある。メンタルの専門コーチも含めて、多面的、立体的サポートが必要と考える理由がそこにあります」(目澤)
月刊ゴルフダイジェスト2026年6月号より


レッスン
ギア
プロ・トーナメント
コース・プレー
書籍・コミック




















