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“欲”を手放してパフォーマンスアップ!<後編>「“頭の力み”を減らし、身体の感覚を取り戻す」 

世界で活躍するプロたちにも、「欲」がプレーの邪魔をすることがあるという。我々アマチュアはなおのこと。「欲」を手放すためには何が必要なのか。前編に続きメンタルコーチの赤野公昭氏に聞いた。

PHOTO/Shinji Osawa、Hiroaki Arihara、Tadashi Anezaki、Yoshihiro Iwamoto、Getty Images
ILLUST/Koki Hashimoto

解説/赤野公昭

あかの・きみあき。1972年岡山県生まれ。世界のアスリートを育てたアメリカのトップメンタルトレーナー、ジョセフ・ペアレント博士に師事。日本古来の「禅」と欧米の最新理論を融合させた独自のメソッドで、プロゴルファーはじめ多くのアスリート、企業人などを指導

>>前編はこちら

意識では頭の力みは抜けない

頭の力みが身体の力みになるという赤野氏だが、特に欲が頭を力ませるという。「ゴルフには『飛ばしたい』と『入れたい』という2つの大きな欲がある。イップスもパッティングとドライバーショットに多いでしょう」

ただし、意識では頭の力みは抜けないと赤野氏。

「『力みを抜こう』としても抜けない。頭で起こっていることを頭で解決しようとしてもダメなんです。考えごとをしながらご飯を食べていたらご飯の味はわからない、そんな状態になっています。まず、頭の力みを “減らす”ということをしないといけません」 

そのために必要なことが「三位一体」だという。

「僕自身の研究テーマで、トレーニングとしてアスリートの皆さんにもやってもらっています。『三位』というのは心・技・体ではなくて、頭(思考)・身体・地面という三位だと考えています。頭が中心になると、頭と身体が“切れて”しまうんです」

赤野氏が言う“切れている”とは何が切れている状態なのか。


「“気の流れ”と言えます。地面に立つことで身体を通って頭までくるエネルギーの循環が切れるんです。そうすると身体の動きがバラバラになったり、動かなくなったりする。軸も作れないし、同じように振っているつもりでも、振り遅れたり手打ちになったり、何かがズレます。これはプロもアマチュアも同じです。このとき、技術で修正しようとしても上手くいかないし、やればやるほどダメになっていきます」

上級者は、この三位がつながっていることが多いと赤野氏。

「でも、調子がよくないときは上級者でも切れています。同じようにスウィングしていても、突然乱れることはプロでもありますよね。最近、プロゴルファーと話をしていると『感覚がよくない』という状態をよく聞く。そのときは、三位が切れている状態。これが切れ続けると、『苦手意識』になってしまいます。若手選手を見ていると、どう当てるかしか頭になく、足と地面とがおざなりになっている感じの選手をよく見ます。思考だけがバッと出て、地面と身体も切れているので動きもバラバラになり、ミスが多くなるんです」

また、頭が力むと、身体が置き去りになり、感性が使えなくなる。

「身体に感性は宿ります。“こんな感じ”は思考ではなく、身体の感覚です。これが大切です。そのためには、三位が一体につながっていることが必要。つながっていないと、振ったときに気持ちよくないのはこのためです」

思考には「強いか弱いか」しかなく、思考で「フィーリング」は出せないと赤野氏。

「思考が増えると、思考の速度も早くなる。そのまま打つとテンポやリズムが早くなります。東京の人が速足なのは考えすぎだから。考えごとをしながらご飯を食べると早食いになるでしょう。味わって食べることが大事。感性のほうを大切にするんです。感性は身体の働きですから」

松山英樹の話を「三位一体」の観点から見ると、より深みを感じるという。

「今のポジションにいる理由がわかります。調子がいい日も悪い日も受け入れる。距離感が合わなかったり、フィーリングが悪かったりするときこそ身体という感性を大切にし、常に三位の“つながり”を見つけているんだと思います」

さて、ゴルフで大事とされるものに、球筋のイメージがある。これは思考とは違うのだろうか。

「実は、禅の考えでいうと、今この瞬間以外のものはイメージすら妄想になります。ただ、ゴルフのイメージは今に近い。大事なことは、自分でイメージを作るのではなくて、自然と湧いてくるものを受け取ること。コースから『こういうふうに打ってほしい』とくるイメージです。このためにも、常に三位がつながった状態でいることが必要です。頭で考えたイメージでは上手くいきません。プロでも調子が悪いと三位が切れてくるので、イメージが湧かなかったり、思考で作ったイメージでプレーして、ミスをしたりするんです」

気の流れが途切れると動きもバラバラになります

「三位」が切れていると、特にスウィングの切り返しに現れるという。「トップがバラバラになり、力んだりゆるんだり、テンポが速くなったり遅くなったり、一定になりません」

言葉ではなく
“こんな感じ”を大切に

最初に紹介した3人のプロたちは、欲を手放しパフォーマンスを上げることもしている。

「一打一打に集中。低い球で“自分らしく”を徹底した」(金谷拓実)

“低い球”や”曲がらないティーショット“などの自分らしさを大事にし、“今”に集中したという金谷。「自分のプレーに一打一打向き合えれば、またいいパフォーマンスが出せるはずです」

「20本くらいのパターを試して、ひらめきがあった」(星野陸也)

エースパター以外のパターを20本用意し、打ち方も含め試行錯誤した星野。「やるうちにひらめきがあった。テンポを一定にすることを重視し、後半戦からは自信を持って打てるように」

「考えすぎない」「人のために頑張る」で初優勝できました」(小斉平優和)

一昨年惨敗した試合で昨年初優勝。技術的には変えず、メンタルの本を読んだ。「考えることが多いとネガティブな感情になりがち。考えすぎない練習や人のために頑張るといった内容の本です」

「皆さん、思考を減らして三位がつながったんですね。まず、自分で“欲があった”と気づいていることが素晴らしい。その上で、金谷プロは“今”を大切に集中し、星野プロはいろいろと試してみることで、むしろ頭の中の言葉が減っていった。道具を新しくしてみるのも思考を減らす1つの方法。小斉平プロは感謝の気持ちを持ってプレーしたとのことですが、これで怒涛の思考が収まります。心(気持ち)は身体にあるので、三位がつながりやすいのです」

このように三位が“つながる”ものを見つけることが大事だ。

「改めて、欲というのは我です。我というのは、頭の欲を満たそうとします。ですから、結果が出れば自信がついたように感じ、結果が出なければ自信を失います。しかし、結果次第で左右される自信は頭だけで作った“表面的な自信”です。一方、『頭、身体、地面』がつながり三位一体になってくると、安心感が生まれてきます。スポーツやビジネスで、実は一番得たいけれど難しいものは“深い安心感”です。これがあるとき、一時的な結果に左右されなくなります。何が起きても大丈夫ということが深い安心感であり、これが“真の自信”といえます。

手に入れようともがくほど、手からこぼれ落ちていくのが自信の特徴。それは頭の力だけでどうにかしようとしているから。三位がつながったとき、深い安心感がやってきます。そして、深い安心感があるときは、欲はなくなっていくのです」

人間の思考は複雑だ。「三位一体」という、シンプルな状態に常に戻すことが必要なのだ。

「ドイツ人の禅の老師・ネルケ無方さんが、坐禅をしたとき『自分はこれまで首の上だけで生きてきたことに気づいた』と言いました。坐禅は全身、そして地面、重力、空気、この世のすべての力を借りて成す運動であると。坐禅で、思考で生きてきた自分に、身体があるということに気づけたというのです。この気づきを得たいですね」 

最後に、赤野氏が実際に行っている「三位一体」のトレーニングを紹介してもらおう。

「ポイントは、頭の思考をとにかく減らしてあげること、そして、きちんと地面とつながって本来の身体の感覚を取り戻していくことです。地面をしっかり感じられると、頭を使わないようになります。あとは、自然と三位一体にしてくれる言葉を使うこと。頭の中の言葉を減らすための“魔法の言葉”を使う。『まるーく』や『転がす』や感謝の言葉などです。 

あるプロゴルファーは、頭で作ったスウィングを一生懸命に練習していましたが、最近、この三位一体トレーニングに取り組んで、自分らしいスウィングが戻ってきました。ただ、人間は、すぐに『思考』に戻ってしまいがちなので、気を長く持ってトレーニングしてほしいですね」

地面、自然とのつながりを感じる「三位一体トレーニング」

●地面に支えられていることを感じる
常に地面に支えられていることを感じながらプレー。足は踏ん張らず、三位がつながるように。調子が悪いと感じたら、練習でもコースでも地面を感じて素振りする。

●「目」の力みを抜き、「ゆるむ」を取り入れる
「ゆるむ」ことも大事。一点ではなく、広い視野で空や周りの景色、グリーン全体を見る。広く何となく見ていると、目からゆるんでいく。

直線から「丸く」、打つから「転がす」へ
思考が強いときは、直線的なイメージや“打つ”という思考になる。「まるーく」や「転がす」のイメージで。

欲に気づき、受け入れ、欲を「減らす」
自分の欲に気づき受け入れる。否定はしない。思考にいかないため、感謝の言葉や「貪らない、怒らない、妄想しない」と呪文のように唱える。

坐禅は、この世のすべての力を借りて成す運動である

坐禅も「三位一体」のつながりにある。「頭(思考)だけで生きている人は多い。日頃から身体、地面とのつながりを意識しましょう」

週刊ゴルフダイジェスト2026年3月3・10日合併号より