【ゴルフ野性塾】Vol.1685「女房への嘘は神様が許した嘘」
古閑美保、上田桃子など数多くの名選手を輩出してきた坂田塾・塾長の坂田信弘が、読者の悩みに独自の視点から答える。
今日5月13日、木曜日。
曜日が分らなくなって来た。
女房が言った。
「菅さん、大変。安倍さん、いい時に総理大臣辞めて良かったネ。コロナは運不運を運んで来たと思う。天災に運不運は付きものだけど、コロナって天災なのかしら」
「人災に運不運なしとすれば、コロナは天災なのかも知れないな」
「でも中国、ますます嫌いになっちゃった」
「その気持ちは分る。中国と日本じゃ、正義が違い過ぎる。特にこの20年の違いはあからさまだ」
「でも、中華料理はおいしい。だから尚の事、中国に腹が立つのよ」
「その気持ちも分る」
現在時、午前11時55分。
朝昼兼用の食事を摂った後、ペンを持った。
この後、スクワットに入ります。
足の細さを指摘された。
ツアー参戦していた頃と較べると半分の太さになってると長男雅樹と女房が言った。
背中を壁にくっ付けてのスクワットである。
30回を1セットとして1日3セット。
やる気が続けば5セットやります。
「三日坊主でなけりゃいいけど」と女房が言った。
スクワット始めて1週間が過ぎた。
今日は何セットやるか。
体調良好です。
女房100%ゴルフ100%を貫け。
去年の夏から大学時代の友人たちとゴルフを始めました。いまはリモート勤務の合間を縫っての練習場通いとラウンドがとにかく楽しくて、毎週のようにコースに出かけています。自分としてはハッピーなのですが、最近、妻の機嫌がよくありません。というか、かなり悪いです。妻は完全なインドア系で、ゴルフをやる気はありませんし、させる気もありません。世のゴルファーはゴルフと家庭の両立をどうされてきたのでしょうか。
(東京都・匿名希望・35歳・ゴルフ歴8カ月・ベストスコア108)
男と女の良好な関係の維持手段だが、愛が必要な時もあろう。
お金が必要な時もあろう。
時間が必要な時もあると思う。
我慢を必要とする時もあれば、妥協必要な時もあり、己の我儘、欲望を打ち砕かねばならぬ時もあるが、私の友人等に問うて返りし返事は、我慢、妥協、我儘、欲望はプレス圧縮した方が良好な関係、維持できるのではとゆう事だった。
砕いてはいけない、圧縮して1枚の平板にして重ねて行くのが夫婦生活と言っていた。
砕ければ、元の型残らぬ残骸が残る。圧縮すれば元の型が残骸となる事はない、との考えであった。
成程と思った。
不平不満を圧縮して積み重ねて行くのが夫婦なのか。
しかし、そこ迄の我慢と妥協要るのかと思う。
面倒な話じゃある。
男は男の立場、己の立場で物を見るし、価値観もその立場で生れるものであろう。
女房殿は女の立場、妻の立場、そして1人の人間の立場で物を見て、その立場で生れし価値観を大切にするのは当然であろうが、その立場と価値観を尊重し合うが円満とは言わなくても、長続きする関係の維持と長寿なる我慢を得る最善の手段であるのは分る。
だが面倒だ。
貴兄は35歳。
私とは38歳の年の差ある若き人。
貴兄の文面から察するに、夫婦2人の生活であって子供はいないと見受ける。
当然、喧嘩は1対1、正面からぶつかり合い。言う言葉、受ける言葉もストレートであれば、我慢と妥協の限界点は低いと思う。
子供がいれば我慢と妥協の限界点は高まる。
子供の為との意識が生じる故にだ。
貴兄はゴルフを愛す。
女房も愛すがゴルフも愛す。
だが、女房殿は自分とゴルフを同等に扱われると嫌う。
自尊心、自己愛の強き人程、比較、同等の位置を嫌う。
人の世が厄介になり、ややこしさ生じるのは自尊心と自己愛生じるが為と思う。
私は嫉妬心、極めて稀薄な人間だ。
人は人、己は己と思って来た。
比較習慣持たぬ日々を過して来た。
だから理解し難い意見と出来事に出喰わす事も多かった。
私は携帯メールは打てぬし、SNSは見ないし、SNSした事もない。
世の常識から離れた位置に立つ73歳のアナログ人間だ。
世の情報は新聞で得ている。
テレビは音を消して、クラシック音楽を聴きながら見ており、得る情報は読売新聞1紙で充分と思って来た。
私と連絡取りたい者は、自宅の固定電話に掛けて来る。
原稿は相も変らずの手書き。
昭和58年11月から現在迄38年間、水性毛筆タッチのサインペン、リブと16字詰め10行の原稿用紙とぺんてる修正液で書いて来た。
多い時は週13本の連載を書き、現在は5本の連載を持つが、椅子に座る姿勢、若い時よりは深座りしているだけで、週連載を減らした他は何も変わっちゃあいない。
私が貴兄であればと考える。
友は大切だ。女房も大切だ。ゴルフも大切。
私なら優先順位をつける。
そして、その順位を女房殿に告げる。
一番大切なのはアンタ、二番目は仕事。三番目は友とゴルフ。
この時、友とゴルフが一緒になってもアンタの優先順位を越えはしないと約束する。
アンタが一番大切、何があってもアンタが一番と言う。
私は講演会で言った。
男の女房への嘘は神様が許した嘘であり、法律も納得してくれる嘘である。
だから上手く嘘のつける男になれ、と。
浮気してもしてないとの嘘は必要だ。
女房殿が追及の鉾先を緩める迄、嘘をつけ。反省はするな、と。
そして、成り行きでやっちまった事との己への嘘も必要だ。
心か体の浮気、一度か二度の経験お持ちの方は多いと思う。
人間だもの、男だもの、仕方ないじゃあないか。
人間は助平である。
だから子供も生れる。
ゴルフと女房殿への愛、両立は考えない方がいい。
どっちにも100%の傾倒向けるべきと思う。
女房の前では女房殿一途、ゴルフは隠れてやった方がいい。
堂々とやろうと思えば女房殿との間の軋み生じる。
コースラウンドは2週に1度とせよ。
空いた1週は女房殿に付き合ってやればいい。100%を割ってはいけない。2で割れば50%、3で割れば33%。
それでは軋む。
女房殿とは100%で、ゴルフも100%と考えた方がいい。
これこそが究極の嘘であり、妥協とも思うが、それをやらなきゃ切なくなるばかりだ。
夫婦の間に切なさは要らぬ。
週1のゴルフを2週に1度のゴルフにすればいい話である。
愛が必要。
時間も必要。
そして何よりも嘘が必要。
嘘、必要とせぬは亭主関白。
我儘、妥協知らず、怖さ知らずの男と思うが、今は令和3年。明治、大正、昭和、平成じゃない。
両立とは妥協と嘘の生みし産物と思う。嘘も方便、嘘も正義と申すじゃありませんか。
以上です。
坂田信弘
昭和22年熊本生まれ。京大中退。50年プロ合格
週刊ゴルフダイジェスト2021年5月25日号より