「ファンはお前の優勝を見に来てるんじゃない」「壁の枚数が多い人間が人生の成功者」田中秀道がジャンボ尾崎から受けた愛ある“喝”の中身とは?
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90年代、166センチと小柄ながら目の覚めるようなドローボールを武器に活躍した田中秀道だが、当時いまだ現役として男子ツアーに君臨していたジャンボ尾崎から言われた言葉がいまだに心に残っているという。レジェンドの貴重なエピソードを動画「もう1球お願いします!」から抜粋してお届け!

思わず号泣! ジャンボから受けた
愛のあるメッセージとは? 動画はこちら
- 元月刊ゴルフダイジェスト編集長の菊地が、ゴルフのプロフェッショナルをゲストに迎え、ゲストが考えるゴルフの神髄を引き出すトーク番組「菊地智哉のもう1球お願いします!」。前回に続き、田中秀道プロをゲストに迎え、ゴルフの深淵に迫っていく。 >>前回のお話はこちら 94年に予選会を通過し、95年にレギュラーツアーで初優勝を果たした田……
「ファンはお前の優勝を見に来てるんじゃない
お前が頑張ってる姿を見に来ているんだ」
1991年にプロ入り後、レギュラーツアーに出場するための予選会になかなか通ることができず苦しんでいた田中秀道だが、94年の予選会で翌年の出場権をつかむと、95年の10月のフィリップモリスチャンピオンシップで初優勝を挙げる。
そこから一気に階段を駆け上がるかに見えたが、思うように勝てない日々に苦しんでいた。
「急に優勝して戸惑ってしまって。町で声を掛けられるようになって、まるでいきなり『M-1』勝っちゃったみたいな。当時はギャラリーもけっこう入っていたし、毎週見に来てくれる人もいて。自分では前に進みたいけれど、見られている、でもやらなきゃいけない、という状況で……2年目、3年目はかなり戸惑っている感じはありました。優勝争いを常にしないといけないんじゃないか、って」
そんなときに、あのジャンボ尾崎が声をかけてくれたという。
「戸惑っている僕を分かってるんでしょうね。僕もそんなに気が長いほうじゃないんで、イライラしている時間も多くて、下を向いてゴルフをやることもあれば、怒りながらやることもあって。そんなときにジャンボさんに呼ばれたんです」
180センチを超えるジャンボが、目の前でワインを回しながら「お前なんだ今日のスコアは? 手を抜いたのか?」と詰め寄ってくる。
『お前は今、自分がいいプレーをしたいと思ってやっている。それができない自分に腹が立ってイライラしている。お前、それだけでやってるだろ』
そうジャンボから言われ、最初は意図が分からなかった秀道だが、ジャンボはさらに続ける。
『お前は優勝したい、優勝争いしたいと思ってやっているけど、ファンはお前の優勝を見に来てるんじゃない。お前が頑張ってる姿を見に来てるんだ。だから、お前が決めちゃいけないんだよ、そんなことを』
『小さい者が大きい者を倒すっていうのは日本人が大好きなんだ。小兵のお相撲さんが、大きい相手を倒す、土俵際でギリギリ踏ん張っている、そういう姿をみんな見に来てるんだ。だからお前が“ダメだ、今日は勝てない、やーめた”みたいなことをやってはダメだ。なんとか足をすくってでも倒してやるっていう姿をみんな見に来てるんだから』
これを聞いた田中は思わず涙してしまったという。
「あの絶対的な王者のジャンボさんが、僕みたいな者を呼んで怒る。これはつまり『お前らに任さなきゃいけないんだぞ』『こんなんじゃ俺は倒せないぞ』そういう空気で僕を怒ってるわけですよ」
当時田中と、丸山茂樹がよく呼ばれてこうした叱咤を受けていたという。
「『お前らが追い抜かなきゃいけないんだろ』という思いに自分が追い付いていけないので泣いてしまうわけです。追い抜くことはなかなかできないけど、早く近づかなきゃ、という思いで90年代は闘っていました」
「壁の枚数が多い人間が人生の成功者」
こんなこともあった。
「あるときジャンボさんに呼ばれて、『お前今しんどいだろ』と。『はい』と答えると『俺はもっとしんどいよ。俺は2位でも叩かれるんだ。だから俺のほうがもっとしんどいんだ』と」
そしてジャンボはこう続けた。
『ただな、今この状況をクリアしても、また壁があるぞ。その壁をまた必死に破っても、また壁がある。普通のやつは、目の前の壁がしんどいから、回り道しようとするんだ。だけど、目の前の壁をなんとか苦しみながら破って、またすぐ壁が来るから、それをまた破って……その壁の枚数が多い人間が人生の成功者なんだ』
次から次へと現れる壁に苦しんでいた田中にとって非常に胸を打たれる言葉だった。
「――ってことは、上に上がりたい気持ちがある限り、ずーっと苦しいんですよ。トップ10に入ったら、今度は優勝しないの? って言われる。その壁を破っても、年間1回しか勝たないの? メジャーは? ってどんどん自分に課していくわけじゃないですか。それを苦しいと思うんですけど、ずっと苦しいと思えることはどれだけ幸せかということ。苦しくないということは、戦えていないわけですよね。それが、その後の自分になるんですけど……」
怖い印象のあるジャンボだが、次代を担う後進を常に気にかけ、愛の溢れる叱咤を行っていたことがうかがえるエピソードだ。
波乱万丈!
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