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「ゴルフで学べることは、人生においても重要なことばかり」アダム・スコットが日本のジュニアに語ったこと

10月に来日したアダム・スコットが、恒例となるジュニア向けのイベントを開催。そこで語られた、日本のジュニア、そして日本のゴルフ界へのメッセージとは?

PHOTO/Tadashi Anezaki、Hiroyuki Okazawa THANKS/ジャパンゴルフスクール

アダム・スコット 1980年生まれ。オーストラリア・アデレード出身。2013年のマスターズではオーストラリア人として初優勝を飾る。米ツアー通算14勝。2005年よりアダム・スコット基金を設立し、ジュニア教育への寄付活動を行っている

「技術よりもコースでプレーすることを
楽しんでほしい」

米男子ツアー通算14勝を誇るアダム・スコットが10月の日本オープンに出場後、「フューチャーゴルファーズセミナー2025」を開催した。アダムが契約するユニクロとともに2015年より始まったジュニア向けのイベントだ。

アダムは同セミナーについて、「プロになるための心構え、試合の朝の過ごし方、練習法、スポンサーやファンサービスの大切さなど、プロを目指すジュニアたちに自分の経験を伝えたい」という考えから発案したと語っている。

ジャパンゴルフスクール(千葉)のドライビングレンジで行われたセミナーのオープニングは、アダムのお手本ショットから。

「朝のウォームアップは非常に大切です。ボクはいつも基本を大事にしていて、練習では決まったルーティンを崩すことはありません。アライメントスティックを置き、1球1球、アドレスを取って狙いを定めてからボールを打ちます。ウォームアップで心がけてほしいのは、自分の体としっかり対話することです。今日の自分はどんな調子なのか? 体の動きはスムーズなのか? 体は温まってきたのか? そうやって自分自身に問いかけることです。そしてもうひとつ意識してほしいのは、とにかく体を動かし続けることです。『キープ・ムービング』。この言葉を忘れないようにしてください」


45歳となったアダムは、ジュニア時代との違いも語ってくれた。

「ボクが若かったときは、体がよく動いていました。だから今みたいに時間をかけてウォームアップはしていなかったですね。年齢を重ねるほど、ウォームアップは重要になります。ウォームアップでは体のフィーリングを大切にしましょう」

【アダムの金言①】
「ウォームアップで大切なのは自分の体と対話すること」

体が温まってきたアダムは、ジュニアたちのリクエストに答えていく。ドロー、フェード、スティンガーまで、さまざまなボールを打ち分ける。そしてショット練習で大切なことを教えてくれた。

「練習ではドローで打つか、フェードで打つか、コースでプレーするために必要な球筋を作っていくことが大事です。今日はフェード、明日はドローなど、テーマを持って練習するようにしてください。ただ、練習場のマットの上でフックやスライスを打つのは難しいです。実は芝の上から打つほうが簡単なんです。だから、芝の上で球筋を作っていくのがいいです。ボクがジュニアのときは、何をしてもフックボールばかりでした。ですが、成長していけば、フックも自然に解消されていきますし、ドローやスライス、フェードも打てるようになります。ゴルフを楽しむためにも球筋をしっかり作っていってほしいです」

【アダムの金言②】
「ドローで打つかフェードで打つか、自分の球を作ろう」

ジュニアたちの質問にも丁寧に答えていたアダムは、一番伝えたいことがあるとみんなに語りかけた。そのメッセージとは?

「私がいつも強調して伝えているのは、スウィングよりもコースでどうプレーするかが大事だということです。ジュニアを見てきて10年が経ちますが、最近感じるのは、スウィングにおける技術的な質問が多いことです。ドライビングレンジでスウィングを作ったり直したりすることも必要ですが、コースでプレーすることのほうがもっと大事ですから」

【アダムの金言③】
「考えるべきはスウィングじゃない。どうプレーするかだ」

同セミナーをずっと続けてきたアダムは、自分にとってもこのイベントは意味があることだし、必要なことだと語る。

「日本の選手育成、選手強化は間違いなく前進していると感じています。ジュニアと接することは、私にとっても刺激的であり、感動的なことなんです。ジュニアたちの情熱や想いに触れることは、自分自身にもいいことですし、本当に素晴らしいものです」

アダムは自分がジュニアだったときと今のジュニアたちとでは環境が変わってきていると指摘。

「ボクが子供のときは、コースに行ってラウンドして試合に出るという、とてもシンプルなものでした。ところが今はコーチやトレーナーがいて、レッスン、練習、トレーニングなど、より複雑化しています。ボク的にはとてもまじめな印象を受けるんです。それがいいとか悪いとかではなく、ゴルフの環境が変わってきたということだと思うんですが、もう少しゴルフ自体を楽しむことも必要ではないか、そう思うことはあります」

「また、コースという視点で日本を見ると、まだまだオープンな部分が少ない気がします。たとえば、オーストラリアやアメリカは非常にオープンです。ジュニアたちが気軽にコースを回れます。日本を批判するわけじゃないですけど、ドライビングレンジで練習する子供たちのほうが多い気がします。アメリカは国土が大きく、コースへのアクセスもいいです。日本もジュニアたちにとってコースが身近なものになればいいなって思いますね。そうすれば日本のゴルフ界ももっともっとよくなっていくはずです」

アダムはジュニアたちにどんなゴルファーを目指すべきか? そのアドバイスも送ってくれた。

「プロになりたい。そう思うなら気持ちもプレーも強くならなければなりません。他の選手も同じように練習やトレーニングを積んでいるわけですから、それに負けない強い気持ち、戦う準備は必要でしょう。プロになると試合に出て終わりみたいにビジネス的になりやすい面もあります。そこはジュニアのときに抱いた、楽しいや嬉しいを大切にしてほしいです。また、プロにならないゴルファーだとしてもゴルフと早く出合えたことは素晴らしいことです。ゴルフで学べることは、人生においても重要なことばかりです。ゴルフを通してさまざまなことが学べますから、その先の人生で生かしていってもらいたいです」

アダムの金言は、きっとジュニアたちの心に届いたはずだ。

【アダムの金言④】
「ゴルフで学べることは人生においても重要」

「自分で考えることが大事だとわかった」(仁科優花さん/高校1年)

「コーチや父から練習内容は指示されていますが、アダムさんは自分に合った練習法を見つけるべきだとアドバイスしてくれました。自分で考えることがもっとも大事だと教えてもらいました」

週刊ゴルフダイジェスト2025年12月30日号より