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【ゴルフと健康】<前編>ゴルファーの寿命は5年長い!? JGA「ゴルフと健康部会」の取り組みに学ぶ

「ゴルフは健康にもよい」ということをよく耳にする。ゴルファーなら何となく感じていること。しかし、根拠がなければ広がりはない。スポーツの秋、日本ゴルフ協会(JGA)の「ゴルフと健康部会」の取り組みを紹介しながら、「ゴルフと健康」について、改めて考えてみたい。

「歩く、緑の中で会話する
健康増進につながります」

「ゴルフと健康部会」は、JGA「ゴルフ振興推進本部」のなかの「女性とゴルフ部会」「情報シェアリング部会」と並ぶ活動の柱の一つ。関東ゴルフ連盟が始めた「ウィズ・エイジングゴルフ(WAG)」の活動を引き継ぎ、ゴルフを通じた健康増進と地域社会との連携を推進している。

部会長の中島和也氏は語る。

「部会が立ち上がったのが2022年。WAGでは、国立長寿医療研究センター、東京大学、杏林大学とともに、ゴルフをする群としない群に分けた様々な研究を行い、ゴルフによる認知機能低下の予防効果が示されました(※1)。また、R&Aでまとめたレポート『Golf and Health』には様々なエビデンスがダイジェストで載っています。我々は糖尿病をはじめとする生活習慣病に関するデータを参考にしています。やはりエビデンスというものは大変に重要です」

プロゴルファーとしての経験も豊富な中島和也氏。東松苑GC、五浦庭園CCの社長も務める。「兄(中嶋常幸プロ)も長年“ゴルフと健康”のプロジェクトに関わっています。この仕事は奥が深くて楽しいですよ」

R&Aのレポートは多岐にわたり「ゴルフと健康」に関する2016~20年までの世界の様々な研究をまとめている(※2)。世界で研究が増えていることは、ゴルフのメリットが認知されてきた証しだろう。

改めて、中島氏にゴルフが健康にいいと言われる理由を聞いた。

「個人スポーツですが1人でプレーすることが少なく、他者と長時間一緒に過ごすので会話が生まれます。そして当然歩く。乗用カートのゴルフ場でも1万2000歩は歩くと言われています。起伏がある場所を歩くことも適度に負荷がかかっていいようですし、緑の中で花や植栽を見ながら会話する。それが一番大きな魅力です。また、年齢を重ねると外出が億劫になりますから孤独や孤立を防ぐツールになる。会話することで脳が活性化すると体も元気になります。プレーの判断などに頭を使うので、デュアルタスク運動(運動しながら頭を使う)となり、これは認知症予防にも効果がある可能性があると言われているようです」

部会では、データを指針に「JGA WAGスクール」を作り、活動の中心にしている。健康増進のためゴルフを「始める」「復帰する」「継続する」、またゴルフを通じた「コミュニティづくり」のきっかけとするためのスクールで全8回のプログラムだ。これに取り組みやすくするため、8回の内容を1日で体験できる「1Dayプログラム」(3時間程度)を設け、5月のゴルフ月間や9月のゴルフ健康週間(とその前後)に全国各地で開催。卒業生は、WAGクラブ(入会金・年会費無料)に入会でき、イベントに参加できる。

1Dayプログラム(約3時間)

講師は、講習動画(約20分)を見て当日の安全管理や運営ができる人ならOK。「必ずしもプロでなくてもスタッフの方でも大丈夫です。また、現在参加対象は45歳以上にしていますが、様々な先生方のご意見では、スタートは若ければ若いほどよいと。基準を見直す日が来るかもしれません」

「週1回程度行う『8回』は長期間ということもあり少しハードルが高いのですが、よいものは全国に広げていかなければいけない。そのために『1Day』を新たに作り、まずは広げていこうと各地区連盟さんやゴルフ関連団体さんにお話しさせていただきました。関東ではかなり多くのゴルフ場や施設で取り組まれており、東北でも少しずつ増えてきて、今年9月には九州のゴルフ場で初めて実施しました(練習場では一度実施済み)」

現在実施されているのはゴルフ場が多いが、練習場などでも広げていきたいという。

「練習場に限らずゴルフ関連施設、複合施設や企業にも取り組んでいただける内容です。WAGの中身を理解していただき、8回につながっていくような形が理想です」

※1『高齢者のゴルフにおける認知機能の効果検証 日本語サマリー』(引用元・ウィズ・エイジングゴルフ協議会)より抜粋
※2『R&A Golf and Health 2016-2020』(日本語版)より抜粋

習慣的に運動をしていない男女65歳以上を対象に、①ゴルフを開始する群53名(ゴルフ教室群)、②しない群47名(コントロール群)に分け、①は6カ月、練習やラウンドなど週1、計24回のレッスンなどを行った。結果、文章を覚える検査において、覚えた後にすぐに思い出す検査、覚えた後15分経ってから思い出す検査、それらの総合スコアがゴルフによって向上したことが示された。

<研究(スコーピング研究)結果の要約>(※2)
●平均的に、ゴルファーの寿命はゴルフをしていない人よりも5年長い
●ゴルフが病気の予防や治療に有効

身体活動としてゴルフは糖尿病、心臓発作、脳卒中、乳がん、結腸がん、うつ病、認知症などの40の主な慢性疾患を予防し治療することができる
●ゴルフは適度に激しい身体活動
高齢者のバランスを保つ能力と筋肉の持久力はゴルフをすることで向上し、一方、ゴルフは心肺機能と代謝の向上を促す
●ゴルフは社会交流を高める
社会交流の欠如はゴルフをプレーする人たちによって呼びかけられることができる。5年以上の社会的孤立は、高齢者の間で最大のリスクとして挙げられている
●メリットがリスクを大きく上回る
ゴルフをプレーすることで怪我や病気などのリスクは伴うが、そのリスクの確率は低く、7分のウォーミングアップでリスクを減らすことができる

>>後編はこちら

週刊ゴルフダイジェスト2025年10月28日号より