「自分以外のことでこんなに緊張するのは初めて」キャディ初挑戦の大畑大介にベテランキャディがアドバイス
週刊ゴルフダイジェスト
元ラグビー日本代表の大畑大介が「スタンレーレディスホンダ」で女子プロのバッグを担ぐことに。初めてのキャディで分からないことだらけの大畑が助けを求めたのは、“優勝請負人”の異名を取るベテラン・清水重憲キャディ。

清水重憲 しみず・しげのり。1974年7月10日生まれ。大阪府出身。田中秀道、谷口徹、上田桃子、イ・ボミらのバッグを担ぎ、「優勝請負人」の異名を持つ。キャディとしてツアー40勝
>>前編はこちら
- 元ラグビー日本代表の大畑大介が「スタンレーレディスホンダ」で女子プロのバッグを担ぐことに。初めてのキャディで分からないことだらけの大畑が助けを求めたのは、“優勝請負人”の異名を取るベテラン・清水重憲キャディ。 大畑大介 おおはた・だいすけ。1975年11月11日生まれ。大阪府出身。元ラグビー日本代表。ポジションはウイング、センター。日本代表キャップ58。ゴルフのベストスコア81清水……
キャディは雰囲気づくりが大事
大畑 あと、「プレー入ります」と言って、お客さんを静かにさせるやつ、あれ、やらなあかんのですか?(笑)
清水 うーん、スタンレーは関東圏の試合ですから、そもそもギャラリーが静かだと思いますよ。
大畑 地域によってギャラリーの雰囲気も違うんですね。関西のギャラリーやったら、絶対に話しかけてくると思う。で、俺も話し出しちゃったりして……(笑)。
清水 東名CCは静岡ですから(笑)。「プレー入ります」と言う機会はないかもしれませんが、もし言わなければいけないときは、丁寧に優しめに言えるといいですね。
大畑 怒鳴って場の雰囲気を壊したりしないよう気を付けます。
清水 そう、雰囲気は大事です。ゴルフは個人競技ですけれど、同組のプレーヤー、プラスキャディの計6人「みんなで頑張ろう」という雰囲気はあって、うまく嚙み合うと「みんな調子がいい」となる。ちょっとチームプレーみたいなところもあるんですよ。プレーのペースも組全体で作っていくもの。「遅い」と指摘されて、みんなで富士の裾野を走るのは避けたいですよね。
大畑 「噛んだ、正輝」とか、ダジャレを言っても大丈夫ですかね?
清水 自分が付いているプロのプレーで、かつ、それが組全体をリラックスさせる、笑い合えるような雰囲気であれば大丈夫です。ほかの選手のプレーには言わないほうがいいです(笑)。
大畑 賞金がかかったシビアなトーナメントで、選手のプレーに何か悪い影響を与えることだけは避けたい、その意識は強く持っています。最悪、ささきプロをイライラさせてしまうのはしょうがないと思っていて……だって、俺の性格をわかってオファーしたのはささきプロだから(笑)。でも、ほかの選手には絶対あかん! 自分がプレーヤーやったら、普段関係のない人がフラッとやって来て、気になって自分のプレーができなかったとき、「あの人がいたから上手くいかなかった」みたいなネガティブな感情を持ってしまうかもしれない。それがわかるからこそ、やっちゃいけないと思うんです。プロもその周辺の人の生活、人生が懸かっているんだから。そんなことを言っていたら、また緊張してきた。
「大畑さんなら体力面は大丈夫」と太鼓判。「大事なのは試合中の励まし、声掛けです」

清水 まずは挨拶です。初日のペアリングがわかったらすぐ、同組の選手とキャディに挨拶に行って「キャディするの初めてなんです」と言ってください。僕からもキャディ仲間によろしくと言っておきます(笑)。あとは、スポーツの世界なので、当然、先輩には気を使ったほうがいいですね。
大畑 現場では俺が一番のペーペーなので気を付けます!
清水 そのほか、心配なところはありますか?
大畑 バンカーならしの作法とかってありますか?
清水 特別なことはありません。「丁寧に」を心掛ければ大丈夫。入る前と同程度か、もっときれいというぐらいにならしてください。焦って雑にならないようにだけ気を付けてくださいね。「早くグリーンに上がってプロのボールを拭かなきゃ」と焦る必要はありません。ボールを拭くのはほかのキャディがやってくれることもありますよ。
大畑 あとはライン読み。でも、ささきプロは俺にシビアなライン読みは求めていないと思うんです。もう読んだふりするしかないかと……。
清水 読んだふりでいいと思いますよ(笑)。一生懸命さが伝わればいい。
大畑 はい、できる限りのことは頑張ります。俺にできること、そしてささきプロから求められていることも同じだと思うんですが、それは、励ましとか声掛けとかを含む、メンター的な役割だと思うんです。
清水 そうだと思います。試合中、プロゴルファーは孤独で、唯一の味方がキャディです。マネジメントやグリーンの読みなども大事な仕事ではありますが、試合中の励ましは、特に女子選手のキャディには求められるところだと思います。
大畑 スタンレーは10月10日からですが、この時期、シード争いで選手たちもピリピリしだしている感じですかね?
清水 いえ、スタンレーはまだピリピリというほどの雰囲気ではないと思います。逆に日本女子オープンの翌週ということもあり、選手はリラックスして伸び伸びプレーしていると思いますよ。
大畑 実は日本女子オープンは観戦予定です。キャディさんの動きを観察しに行ってきます(笑)。
清水 いいと思いますよ。
大畑 あと、変なところで浮きたくないので、服装についても聞いておきたいです。
清水 10月上旬だとまだ寒くないと思うので、半袖ポロシャツ+ショートパンツでしょうね。色は、派手でないもの。一応キャディの服装には規定があって、色は白、紺、黒、ブルー、ベージュなどが推奨されています。ピンクや赤は避けたほうがいいかな。靴はランニングシューズがいいかと思います。僕は雨用、晴れ用、2種類用意しています。レインウェアはもちろん必要ですね。
大畑 派手にならないよう、悪目立ちしないよう気を付けます!
清水 ちょっとぐらい目立っても大丈夫ですよ(笑)。
大畑 ラグビーではいつも目立とうとしていたので、これほど「目立たないように」とか「存在感を消そう」なんて考えたことがなくて。いつも“応援される側”でしたし、自分以外のことでこんなふうに緊張するのも初めて。11月には50歳になりますが、「これまでの人生でやったことがないことをやってみたい」という気持ちが強くて、今回のキャディの話を引き受けたという経緯があるんです。なんとありがたいことか。ささきプロには感謝です。そして、これをもし現役時代に経験できたら、もっと面白かったんちゃうかな、とも思うんです。裏方の経験が自分のプレーの幅を広げることにつながったかもしれないと。自分を出し過ぎてはいけないけど、でもどこかで自分らしさを出さないといけない仕事……すごくバランスが難しそう。自分の人生ですごく濃厚な時間になりそうで、めっちゃ緊張しているけど、実は楽しみでもあります。

“目立ってなんぼ”だったラグビー時代。そんな大畑が、裏方に徹することで、ささきプロとどんな化学反応が?
清水 キャディってすごく楽しいんですよ。大変なことも多いんですけど、うまくいったときの満足感は、それは自己満足かもしれないけれど、すごくあるんです。大畑さんにもぜひ体験してもらいたいです。
大畑 よし、現場で何か粗相しても「これは清水キャディに習ったから」って言うことにします(笑)。
清水 ええーーーっ(笑)。
週刊ゴルフダイジェスト2025年10月14日号より


レッスン
ギア
プロ・トーナメント
コース・プレー
雑誌




















