【岡本綾子 ゴルフの、ほんとう】Vol.876「伸びる子どもの必勝パターンはありませんが親の背中を見て成長していくとは思います」
岡本綾子「ゴルフの、ほんとう。」
米国人以外で初めて米女子ツアーの賞金女王となった日本女子ゴルフのレジェンド・岡本綾子が、読者からの質問に対して自身の経験をもとに答えていく。
TEXT/M.Matsumoto
>>前回のお話はこちら
- 米国人以外で初めて米女子ツアーの賞金女王となった日本女子ゴルフのレジェンド・岡本綾子が、読者からの質問に対して自身の経験をもとに答えていく。 TEXT/M.Matsumoto >>前回のお話はこちら 昨日入っていたパットが翌日にはまったく入らなくなるという現象がありますが、その原因についてのしっかりとした解説をあまり聞いたこと……
運動神経など潜在的な要素はあったとしても、ゴルフ、そして他のスポーツや仕事を含めさまざまな分野で並外れて伸びる人というのは、特別な育てられ方をしてきたからそうなったのでしょうか?(匿名希望49歳・HC5)
今年も夏の甲子園はどこまでも熱く盛り上がり、やっぱり高校野球はいいですね。
今大会は熱中症対策のため、1回戦を午前と午後の部に分けて行うなど工夫が見られましたが、球児たちにどんな影響があったのかは分かりません。
ルールや開催方法は時代とともに変化しても、白球を追うひたむきさや純粋さは時代を超えてこれからも変わらないと思います。
高校野球にせよ何にせよ、人より秀でるには、その人がその目標達成を求めてやまぬ情熱と、スキルを獲得するための地道な努力をコツコツと積み上げる時間を必要とします。
では本人がどうやって目標を立てるに至ったか、夢を抱いたか。
偶然見た野球やサッカーのテレビ中継や観戦した試合など、キッカケは何かしらの体験にあったと思います。
何げない生活の中で出合った感動の一瞬が目指す小さな一歩になり、目標や夢になるのでしょう。
しかし、夢に向かって小さな一歩を踏み出し努力を重ねていくには、物理的にも精神的にもそれなりの環境が必要です。
その条件となるのが置かれた家庭のありようなのではないでしょうか。
伸びる人はどんな育てられ方をしたのかに対して、特別な育て方はないというのが、一般的な回答だとは思います。
逆境をはねのけて出世した例もあれば、恵まれた生い立ちから順風満帆の成功を収めた偉人も少なくはありません。
育ち方、育てられ方に必勝パターンはありません。強いて挙げるとするなら、親の背中は人の生き方を示してくれるということです。
親の行動や言動は、良くも悪くも子どもに大きな影響を与えます。
その子が大きく伸びるとしたら、その家庭教育が最初の一歩になると思います。
親は恩人であると同時に、反面教師であったりもする特別な存在で、わたし自身も幼かった頃の親がいつも忙しくしていたからこそ、台所仕事や掃除など家の中の手伝いや片付けは自分でやることを覚えたのだと思います。
その意味で、早くから自立する感覚が身に付けば、自分のしたいこと、しようと思うことを自分で計画立てる習性が付くのではないでしょうか。
家庭の事情が必要を生み、その環境が行動計画を立てさせる。
子どもですから一度では上手くはいかず試行錯誤を繰り返します。
その連続が人間を鍛えていくのだと思います。
アスリートも学者も実業家も同じ道をたどりながら成長するものではないでしょうか。
自分が望む目標に近づくためにはいま何をすべきか?
それを意識できるまで習慣化できているかどうかが伸びる条件だと思います。
若い選手を見ていた頃にも感じましたが、同じヒントを与えてもその受け取り方は選手によって違います。
理解の早さも違いがあり助言を生かすか否かも本人次第。
一言えば十わかる教わり上手もいれば、黙々と課題に取り組む人もいます。
それぞれ違うプロセスを進みながら、その途上で自分の進行方向を敏感に素早く修正できれば、結果的に伸びるのも早くなる。
この修正能力も伸びる力の源泉の一つです。
トッププロは、試合のプレー中にも大胆に修正をします。
ただ、こうした修正能力も常に観察と研究を重ねているからこそ身に付いたもので、調子が悪くなってもすぐ復調できる魔法はありません。
修正能力もスウィング作りと同様、日々の練習を重ねる持続力と根気の土台の上に確立できるものです。
ただ、インターネットが世界の隅々にまで浸透した今、すべてが時短即決の世界になってきました。
映画やドラマも早送りで観賞するそうですね。
すぐ検索して結果が出るなら、根気や持続という言葉を理解するのも難しいかもしれませんね。
でも人が伸びる条件は変わらないものと思っています。

「“背中で語る”とはよく言ったものですね!」(PHOTO by Ayako Okamoto)
週刊ゴルフダイジェスト2025年9月23日号より


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