【岡本綾子 ゴルフの、ほんとう】Vol.875「突然パットが入らなくなる理由は1つじゃないから修正が難しいんです」
岡本綾子「ゴルフの、ほんとう。」
米国人以外で初めて米女子ツアーの賞金女王となった日本女子ゴルフのレジェンド・岡本綾子が、読者からの質問に対して自身の経験をもとに答えていく。
TEXT/M.Matsumoto
>>前回のお話はこちら
- 米国人以外で初めて米女子ツアーの賞金女王となった日本女子ゴルフのレジェンド・岡本綾子が、読者からの質問に対して自身の経験をもとに答えていく。 TEXT/M.Matsumoto >>前回のお話はこちら プロや上級者が、時々口にする「置きにいく」というテクニックが分かるようで分かりません。飛距離を抑えて安全圏に打つという意味でしょ……
昨日入っていたパットが翌日にはまったく入らなくなるという現象がありますが、その原因についてのしっかりとした解説をあまり聞いたことがありません。ぜひ、岡本さんにお願いしたく思いお便りいたしました。(匿名希望・HC2)
距離のあるパットや難しいラインのパットから、入れごろ外しごろのパットまで100パーセント入っていたのに、一晩寝たらまるで別人のようになっちゃった。
ラウンド中に調整するも効果なし。
ジタバタしていたら18ホール終わってしまった……。
ゴルファーは、昔からこの突然入らなくなるパットを経験していると思います。
その明確な理由がわからないので対抗策や解決案を出すことができません。
ただ、アマチュアゴルファーはパッティング練習の時間がショットに比べて極端に短い、ということは以前にもお話ししたことがあります。
練習場で200球打ち込むとして、パットの練習はどれほどやっているでしょうか。
ショット練習に1時間かけてもパットには10分くらいかしら。
でもラウンド中はショットとパットの打数はそこまで極端には変わりません。
そう考えると、パッティングが上手くいかなくなることを嘆く前に、上手くいかせるための準備を怠っていると言われても仕方がないとも言えますよね。
カップにボールを沈めるには、強さと方向が合致しないといけません。
パッティングとは、狙ったところへ真っすぐに打つ安定したストロークの技術と、グリーンの状態に応じてラインを読む技術の2つの要素で成り立っているということができます。
ラインの読み方は経験を積みながら、距離や傾斜、芝の質や芝目、グリーンの速さ、硬さ、水分や風の影響などあらゆるシチュエーションのサンプルを収集します。
もっと言えば、その地域独特の条件も加味することもあります。
その発展プロセスはAIの仕事さながらですね(笑)。
ただ、やるのは人間です。
いくらラインの読みが正しくてもストロークする動きが狂えば外れるし、ラインを読み違えている場合だってあります。
どんなに練習や経験を重ねていても、パットが決まらない理由はいくらでも存在するのです。
物理的なことで言えば、打ち出しでパターのフェースが角度にしてわずか1度だけ右に向いた場合、1メートル先のボールは真正面に設定した目標からどれだけズレると思いますか?
答えはおよそ2.2センチです。
ちなみに3メートルでフェースが2度開いてしまったら、ボールはカップから13センチ以上も右へそれてしまう計算になります。
だから、日々コツコツと地道に目標に向かって真っすぐに打ち出すストローク練習をすることが大切なのです。
常に同じようなストロークができるような練習も大切ですが、ゴルフは状況によってメンタルな部分も加味されてくるので、それでも同じストロークができるか否かも重要な要素となってきます。
昨日は面白いように決まったパットが今日はまったく入らない、理由はどう考えても見当たらない……。
技術だけでもなく、読みだけでもなく、精神面だけでもない。
実は見えないところに理由はいっぱい転がっているのです。
だから、いつも通りストロークできているのに入らなかったと責めることはなく、「次は入る」と思うことも大切なことだと思います。
人間は寝ているときにとても多くの細胞を生み出し再生していくらしいです。
だとしたら一晩寝てパットが入らなくなったとしても無理はないですよね(笑)。
突然パット入らん病に見舞われたときには、すぐに生まれ変わって次のホールへと気持ちを切り替えれば、きっと次は入る! と思って、下を向かず前へ進んでください。

「とにもかくにも狙ったところに打てる技術を身に付けることが一番大事です」(PHOTO by Ayako Okamoto)
週刊ゴルフダイジェスト2025年9月16日号より


レッスン
ギア
プロ・トーナメント
コース・プレー
雑誌




















