【目澤秀憲の目からウロコ】佐渡島庸平編③「コースの意図を感じる」「体を思い通りに動かす」…常に“センサー”を鍛えています
目からウロコ
目澤秀憲コーチが、異業種からゴルフのヒントを得る連載「目澤秀憲の目からウロコ」。前回に続き、「バガボンド」や「ドラゴン桜」といったヒット作の編集に携わった佐渡島庸平氏に話を聞いた。現在、ゴルフとの向き合い方を語るなかで浮かび上がったのは、「一流ほど想像力が別格」という視点だった。
TEXT/Daisei Sugawara PHOTO/Hiroaki Arihara

佐渡島庸平 大手出版社時代に「ドラゴン桜」、「バガボンド」、「宇宙兄弟」などの大ヒット漫画の編集を務める。現在は独立し、作家のエージェント会社、株式会社コルクを設立
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- 目澤秀憲コーチが、異業種からゴルフのヒントを得る連載「目澤秀憲の目からウロコ」。前回に続き、「バガボンド」や「ドラゴン桜」といったヒット作の編集に携わった佐渡島庸平氏に話を聞いた。一流の漫画家たちの仕事ぶりには、ゴルフにも通じるものがあった? TEXT/Daisei Sugawara PHOTO/Hiroaki Arihara 目澤秀憲 ゴルフ界の最先端を知り尽くすコーチ。現……
そこにある自然と
向き合うという上達法
――佐渡島さんの、現在のゴルフとの向き合い方について教えてください。
佐渡島 ちょっと理解してもらえるかどうか自信がないんですが、たとえば、ティーイングエリアに立ったときに、「あそこが安全だな」というのを直感的に感じ取れたらいいなと思っているんです。コースにはそれを造った人がいて、その人がどう考えてこのホールをレイアウトしたのかを想像してみるとか。
目澤 それはすごくいい視点だと思います。そういう視点があると、コースの造形がただの「地形」じゃなくて、ちゃんと意味のあるものに見えてきますよね。
佐渡島 そうなんです。それで、何となくターゲットが見つかったら、今度はそこに打つのに体が思い通りに動くのかという問題になる。自分の体を制御するには、それを感じ取るセンサーが優れていないといけないわけで、手はもちろんですが、肌とか関節とか足裏とか、そういうセンサーを鍛えるということは普段から心がけています。
目澤 それはプロにも絶対に必要な部分だと思います。
佐渡島 ショートアイアンは、右手がじかにフェースと感じるくらいまでは上手くなりたいと思っていますね。まあ、それはともかく、直感的に「あそこに打ちたいな」というのを感じることができて、体が自然に動いてそこにポンと打てて、そしたらパーとかバーディが取れるというゴルフがしたいなと。それで70台が出たら楽しそうじゃないですか。
目澤 何か「悟りのゴルフ」という感じがしますね。佐渡島さんはヨガや瞑想を普段からやっているそうですが、それと何か通じるものがあるのでしょうか。
佐渡島 それはあるかもしれませんね。実は従兄がヨガの先生で、最初はストレッチとマッサージに瞑想をプラスした感じのところからスタートしたんですが、少し長く瞑想できるようになってくると、単純に「瞑想って楽しいな」と思っちゃって。それで今も続けている感じです。
目澤 瞑想しているときって、具体的にどんな感覚になっているんですか?
佐渡島 体の中から光があふれてきて、自然とつながってる感覚ですかね。
目澤 最初からそういうふうに感じられたんですか?
佐渡島 最初はやっぱり、たとえば呼吸なら呼吸で、それにとらわれてしまうんですが、だんだん、それも意識から離せるようになっていくんですね。じっと目をつぶっていると、目の裏にぼんやり何かが見えるような感じがするんですが、それを「見ようとしていいのか?」って先生に聞いちゃったりとか。
目澤 世界中のビジネスパーソンの間で、いわゆる「マインドフルネス」が流行していますがPGAツアーでも、メンタルトレーニングの一部として瞑想を取り入れるプロが、少しずつ増えています。今年のマスターズで、ローリー・マキロイが最終日の18番でボギーを打ってプレーオフになりましたが、普段のマキロイならあのセカンドショットは10回中10回、グリーンに乗るはずなんです。それがあの場面で急にできなかったというのは、プラン通りに実行するというマインドの中に、別のマインドが混ざってしまったからだと思うんですね。トッププロに瞑想が必要な理由がそこにあるというわけです。
佐渡島 マキロイと比べていいものかどうかわからないですが、私の場合は、「今日のゴルフはどう出るか?」と、期待しないで期待するようにはしています。もうゴルフは「楽しむ」と決めているので、プレー中はもちろん行き帰りも楽しいほうがいいですから。
何をもって「失敗」とするか?
起業の際、「少ない資金をどう投資して増やすか」が課題だったという佐渡島氏。しかし、会社が軌道に乗ってからは、損失が出るとそれを「社員による投資」とはなかなか思えないという。「ボギーペースでいいと決めていても、パー、パーと続いて、次がボギーだと『ミス』と感じてしまうのが、ゴルフの難しいところです」(佐渡島氏)

「トップ選手はいい感覚に戻すルーティンがある」
若いプレーヤーほど、「100点のゴルフをしたい」、「100点の球が打ちたい」という気持ちが強く、1回でもミスするとそこから調子が崩れていくことが多いと、目澤コーチは感じている。「崩れたときに感覚をどう戻すかが大事で、トッププロほどその感覚をすり合わせる方法を知っている気がします。たとえば、松山(英樹)選手の片手打ちとか、申ジエ選手の『つま先立ちパター』とかは、佐渡島さんの瞑想に近い意味合いを持っているんじゃないかと思いました。やっぱり、自分なりの『戻るべき場所』を持っている人は強いので、そういうことも伝えていきたいですね」(目澤)
月刊ゴルフダイジェスト2025年10月号より


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