Myゴルフダイジェスト

  • ホーム
  • 週刊GD
  • 【岡本綾子 ゴルフの、ほんとう】Vol.869「目の錯覚によるミスは超一流プロでも起こり得るので次に生かせばオールOK!」

【岡本綾子 ゴルフの、ほんとう】Vol.869「目の錯覚によるミスは超一流プロでも起こり得るので次に生かせばオールOK!」

米国人以外で初めて米女子ツアーの賞金女王となった日本女子ゴルフのレジェンド・岡本綾子が、読者からの質問に対して自身の経験をもとに答えていく。

TEXT/M.Matsumoto

>>前回のお話はこちら


グリーン上のことですが、本当はスライスなのになぜかフックに見える目の錯覚に出合うことがあります。こんな錯覚はなぜ起こるのでしょうか、そして惑わされない対抗策はありますでしょうか。(匿名希望・45歳・HC3)


むか〜しCMで一時流行った「芸能人は歯が命」っていうキャッチコピーがあって、それをもじって「プロゴルファーは目が命」なんて言ったことを思い出しました(笑)。

40歳を過ぎてしばらくたったとき、老眼の度が進んできていた影響だと思いますが、真っすぐのラインが、なぜかフックラインに見えるようになっていました。

これでは自分のパッティングに自信が持てるはずもなく、当然スコアにもつながらない。

眼科に行って検査をしたり、眼鏡の調節に神経を使い、いろいろと大変な思いをしました。

ゴルフはグリーン上はもちろん、ドライバーもアイアンもアプローチも目で把握した距離感でボールを運び打つスポーツです。

その肝心の目に問題があればうまくいきません。


ですが、視力そのものには問題はないのに見間違いを起こしてしまうことがあります。

それが錯覚でしょうね。

この錯覚は突発的な疾病や故障ではなく、条件さえそろえばどんな健康な人にも起こり得る体験のひとつだそうです。

人間がモノを見る際、対象物の形状や大きさ、色などさまざまな視覚情報をとらえて脳に送って“見る”ということにつながるそうです。

同じ大きさの円のはずなのに周囲に大きな円が複数あると小さく見えたり、2本同じ長さの直線なのに両端の矢印の向きが違うだけで短く見えたり長く見えたりするテストやったことありませんか?

遠近法や並び方の常識といった人間の先入観によって、脳が勝手にものの大小長短を推測してしまい、判断を誤らせることで起こるみたいです。

対象物が置かれた環境によって見え方が変わるメカニズムが、錯覚を生み出しているそうです。

ゴルフコースのデザインの中にもその錯覚を利用して組み込まれていることがあります。

コース設計家が地形やハザードを巧みに配置することによって、距離を見誤ることを意図的にデザインすることがあります。

簡単な例を挙げると、ショットの場合、ピンフラッグを通常より短くすることでピンまでの距離が長く見える錯覚が生まれることがあります。

ほかにも、グリーン奥に木や林が生えていない河川敷のようなホールの場合も、ピンまで遠く感じることがあったりします。

グリーン上の場合ですと、フックラインなのにカップ奥のマウンドがスライスになっていたら、ラインを読み間違えることもあります。

でも、こうした勘違いや思い込みを誘う地形や配置は、経験を積むことである程度は見誤らないようになってくると思います。

とはいえ、目の錯覚という現象は人間なら誰にも起こり得る一般的な反応なのですから、その場にいれば誰だって錯覚して当たり前ともいえます。

錯覚にダマされたと気づいたときは、むしろ“やられた!”と苦笑いして次のホールへ向かうくらいの潔さがあれば、次は同じミスをしないようにつながってくると思います。

常に深く考え不測の事態に備えているからこそ脳がフル回転で働いている。だからこそ、脳が先走りして勘違いの錯覚をしてしまったのであって、錯覚してしまったゴルファーは、とてもよく考えてゴルフをしているというふうに、ポジティブに考えるといいかもしれませんね(笑)。

「たくさん経験を積んでたくさん考える人ほど強くなれると思います」(PHOTO by Ayako Okamoto)

週刊ゴルフダイジェスト2025年7月29日号より